非拘束開放型脳機能計測を用いた音響療法評価技術の開発

文献情報

文献番号
201114033A
報告書区分
総括
研究課題名
非拘束開放型脳機能計測を用いた音響療法評価技術の開発
課題番号
H22-臨研推・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
本田 学(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第七部)
研究分担者(所属機関)
  • 八木 玲子(公益財団法人 国際科学振興財団)
  • 吉田 寿美子(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
7,347,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、気分障害に対する新しい統合医療の開発に資するため、ストレスをできる限り軽減した状態で計測可能な客観的脳機能指標を開発し、信頼性の高い統合医療の治療効果評価手法の構築を目指す。
研究方法
人間の可聴周波数上限の20kHzをこえ、非定常なゆらぎ構造をもつ超高周波成分を豊富に含む音―ハイパーソニック・サウンドが脳幹を含む脳深部を活性化して精神症状の改善を図る〈音響療法〉について、昨年度開発した刺激提示プロトコルおよび評価プロトコルに基づき、うつ病と診断された外来患者6名を対象として効果を検討した。20分間の音響情報を呈示する音響療法セッションを2週間に1回の頻度で実施した。各セッションの音響情報の呈示前、中、後に脳幹活性の代替指標として開発した脳波の〈簡易深部脳活性指標〉を計測した。あわせて、うつ病患者の状態不安を評価する心理検査STAI(Y-1)を呈示前後に実施し、音響療法の効果を調べるとともに両者の対応を検討した。
結果と考察
音響療法用情報を呈示すると〈簡易深部脳活性指標〉が徐々に上昇し、呈示前後で統計的有意に上昇した。また、STAIにより計測した状態不安尺度が呈示前後で有意に低下した。さらに、〈簡易深部脳活性指標〉とSTAIにより計測した状態不安尺度との間には有意な負の相関があることが示された。以上の結果から、音響療法が、脳幹を含む深部脳の活性を高め、患者の状態不安を緩和する効果をもつことが示された。また、脳幹活性が高いほど状態不安の程度が低くなるという知見は、〈簡易深部脳活性指標〉がうつ病患者の状態不安の客観的なバイオマーカーとなりうる可能性を示唆している。さらに、音響療法の実施開始から3ケ月以上経過した患者について検討したところ、回数を重ねるにつれて〈簡易深部脳活性指標〉が上昇する傾向があることが示され、長期的な治療効果が期待できることが示唆された。今後は、ひきつづき症例数を増やして〈簡易深部脳活性指標〉の信頼性を高めるとともに、外来患者での長期フォロー例を増やし音響療法の有効性を確立する予定である。
結論
本研究で開発した〈簡易深部脳活性指標〉がうつ病患者の状態不安変化の客観的なバイオマーカーとなりうることを示した。また、ハイパーソニック・サウンドを応用した音響療法が、脳幹活性を高め、うつ病患者の状態不安を緩和する効果をもつことを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2012-06-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201114033Z