ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を用いた悪性胸膜中皮腫に対する効果的治療法の開発研究

文献情報

文献番号
201114016A
報告書区分
総括
研究課題名
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を用いた悪性胸膜中皮腫に対する効果的治療法の開発研究
課題番号
H21-臨床研究・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小野 公二(京都大学 原子炉実験所)
研究分担者(所属機関)
  • 中川 和彦(近畿大学 医学部)
  • 中野 孝司(兵庫医科大学 医学部)
  • 平塚 純一(川崎医科大学 医学部)
  • 奥村 明之進(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 切畑 光統(大阪府立大学 大学院生命環境科学研究科)
  • 櫻井 良憲(京都大学 原子炉実験所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
進行期の悪性胸膜中皮腫は複雑な三次元形状を呈し、高精度X線照射技術の応用が困難でX線治療の役割は限定的である。BNCTではホウ素(B-I0)原子核の中性子捕獲反応に伴い細胞径を超えない飛程のα粒子が放出される。従って、B-I0が癌細胞に選択的に集積すれば線量を癌細胞に集中できる。本研究では悪性胸膜中皮腫に対する原子炉BNCTの臨床研究を行い、スーパー特区の課題である加速器中性子BNCTの治験の基礎を固める。
研究方法
臨床研究情報センター(TRI) の支援を得て作成した多施設共同BNCT臨床試験研究計画に従って、悪性胸膜中皮腫の患者さんを対象に原子炉BNCTを実施し、有害事象と効果発現を評価する。また、BPAの腫瘍集積の程度を確認するため、18F-BPA PETを実施し、血中濃度に対する比を推定し、事前の18F-BPA PETの有用性を評価する。ホウ素化合物(BPA)の簡便な測定法の評価を実施する。この技術は特に新規の化合物開発での鍵となる技術である。そこで単クローン抗体による分布解析の方法の開発を試みる。中性子照射の位置精度の向上や中性子の深部分布の改善等は照射技術の中でも重要であるので、加速器ビームを用いてその研究を行う。
結果と考察
7例が臨床試験に登録されF-BPA PETを施行。初回のPETでは適応基準のT/B≧2.25に達しなかった。2-3ヶ月後の再検査を実施出来た4例でT/B値が基準値に到達した。症例毎の平均腫瘍線量は14.5?26.8Gy-eq、症例間の平均は20.0Gy-eq、右肺が患側例では、肝臓が第2の決定臓器となった。肝臓の線量は最大18.1と18.5Gy-eq、平均5.5Gy-eqと4.9Gy-eqであった。胸壁の激痛がBNCTによって減じた症例がありBNCT効果が認められた。一例で析出BPAによる一過性の尿閉が認められた。ホウ素薬剤に特異的な抗BPA抗体と抗BSH抗体を用いた免疫化学的分析法を開発し、BPAの細胞質と核への分布、疎水性のBSH誘導体の核への分布を認めた。通常のBSHでは細胞内に分布を認めず、細胞レベルでの挙動の議論に終止符を打った。
結論
平成23年度の特に臨床研究はPETでの実施基準が予想以上に厳しく、実施件数が制限されたが、少し待機期間を置くと再検査で基準に到達することが分かったので、24年度にはその点を考慮して症例の登録を進めることとする。また、早めに症例数を計画数に到達させて線量増による新たな試験研究も計画したい。

公開日・更新日

公開日
2012-06-29
更新日
-

文献情報

文献番号
201114016B
報告書区分
総合
研究課題名
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を用いた悪性胸膜中皮腫に対する効果的治療法の開発研究
課題番号
H21-臨床研究・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小野 公二(京都大学 原子炉実験所)
研究分担者(所属機関)
  • 中川 和彦(近畿大学 医学部)
  • 中野 孝司(兵庫医科大学 医学部)
  • 平塚 純一(川崎医科大学 医学部)
  • 奥村 明之進(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 切畑 光統(大阪府立大学 大学院生命環境科学研究科)
  • 櫻井 良憲(京都大学 原子炉実験所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
悪性胸膜中皮腫(MPM)に対する放射線治療の役割は複雑な三次元形状の病巣の故に高精度放射線治療技術を用いても限定的である。ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)ではホウ素原子核の中性子捕獲に伴い飛程が細胞径を超えないα粒子が放出され、ホウ素原子が癌細胞に選択的に集積すれば選択的に癌細胞に線量を集中できる。MPMを対象にした加速器中性子BNCTの治療の基礎を固めることを目的にMPMに対する臨床研究等を実施する。
研究方法
MPMのBNCT臨床試験を研究計画に基づき実施。
BPA集積の有無・程度を18F-BPAPETで探索、データを集積。
アスベストMPM患者で正常肺組織の耐容線量の変化を検討。
予後支配因子(血清マーカーなど)を探索。
BPAの簡易測定法を開発、捕捉療法患者の試料で有用性の確認。
加速器(サイクロトロン)の中性子ビームの物理・生物学特性の評価。
多重即発γ線テレスコープシステムとQA用ファントムの中皮腫例への適用の検討。
結果と考察
7例が登録、初回PETのT/B値が先行の抗癌化学療法の影響の継続の故に適応基準に到達せず、4例で第2回検査を実施、全例で値の上昇を認めBNCTを行う。平均腫瘍線量は20 Gy-Eq。疼痛緩和等の効果を認め、正常肺の有害事象は無し。
V20≦20%で肺障害が減少。アスベスト暴露MPMで肺障害の発生頻度の上昇が実験で示唆。
VEGF≧400pg/mlあるいは血清TRX≧60ng/mlの症例は生存期間が有意に短い。
BPAとBSHに対する単クローン抗体を作製。固定化プレートELISAシステムの簡便な分別濃度分析能を確認。BSH、BPAの細胞内分布の違いを証明。結果は多くの研究者の予想と同じだが、分布の相違を画像で示し得て不要な論争に終止符を打つことが出来た。
加速器中性子のフルエンス率は京大炉の約1.8倍、熱中性子生成は5cm深部で2倍、これはエネルギースペクトルの高速側へのシフトの故と考える。RBEは2.4-2.5でKUR中性子よりもやや小さく、これは中性子エネルギーとRBEの既知の関係から推定した両中性子RBE値の関係に正確に符合。
多重即発γ線テレスコープシステムによるホウ素原子核と中性子との反応分布の評価可能性を確認。QAファントム中の混合Li-6の濃度変更で、中高エネルギーの中性子の分布状況が評価可能。
結論
MPMに対する捕捉療法臨床研究の進展と今後の基盤技術開発の進展に資する成果が得られたと考える。

公開日・更新日

公開日
2012-06-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201114016C

収支報告書

文献番号
201114016Z