チタン酸化物を含有するバイオハイブリッドナノ粒子の放射線治療増感による難治性がんの新規治療法開発

文献情報

文献番号
201111018A
報告書区分
総括
研究課題名
チタン酸化物を含有するバイオハイブリッドナノ粒子の放射線治療増感による難治性がんの新規治療法開発
課題番号
H22-低侵襲・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 昭彦(神戸大学 大学院工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木 良平(神戸大学大学院 医学系研究科)
  • 荻野 千秋(神戸大学大学院 工学研究科)
  • 田中 勉(神戸大学大学院 工学研究科)
  • 梅津 光央(東北大学大学院 工学研究科)
  • 大原 智(大阪大学 接合科学研究所)
  • 佐藤 和好(群馬大学大学院 工学研究科)
  • 高見 誠一(東北大学 多元物質科学研究所)
  • 曽我 公平(東京理科大学 基礎工学部)
  • 沼子 千弥(千葉大学大学院 理学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
39,426,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では「高精度放射線治療」にナノ粒子を併用し、有効な治療法の確立されていない膵臓がんなどの難治性がんの飛躍的な治癒率向上を目指す。本研究では、[1]線量集中性の良い高精度放射線治療の効果を [2]細胞レベルの腫瘍も認識し標的にすることが可能なスーパーハイブリ・ナノ粒子の構築することによって、ミクロ環境での極めて高い相乗効果を発揮するナノ粒子・放射線併用治療を確立する。
研究方法
本研究では、[1]QOLが高い放射線治療を膵臓がんに対して効果的に作用する機構を保持し、[2]更に初期ステージのがんでの発見をも可能にする、スーパーハイブリ・ナノ粒子の構築を目指し、放射線治療への併用を目指す。具体的には上記の目標を到達するために、以下の研究項目に関して明らかにする。
① 放射線励起によって大量のラジカル発生を可能にする、中性付近で単分散可能な半導体ナノ粒子の開発
② 膵臓がんに特異的に送達可能な生体分子修飾ナノ粒子(スーパーハイブリ・ナノ粒子)の開発
③ スーパーハイブリ・ナノ粒子の体内挙動評価

④ 放射線治療とスーパーハイブリ・ナノ粒子の併用による膵臓がん治療検討
結果と考察
 ①に関しては、大原・高見らが開発しているハイブリ・ナノ粒子自身が、その表面にタンパク質を修飾する能力を有しており、この官能基を利用して、より積極的な分子レベルでの接着(認識)を高めるタンパク質修飾を施す技術の開発が完了している。そして、過酸化チタンをはじめとする様々な無機ナノ粒子の表面構造変化及び結晶構造変化を、分光学的に解析し、放射線励起によるラジカル発生機構の解明を進めた。
 ②に関しては、初年度①にて探索したハイブリ・ナノ粒子を、抗体表層提示バイオナノカプセル内に包括する技術を完成させた。
 ③に関しては、初年度①にて探索したハイブリ・ナノ粒子をモデルマウスに血管投与して、その局在化及び毒性解析を行い、毒性が無い事を示せた。
 ④に関しては、初年度①にて探索したハイブリ・ナノ粒子をモデルマウスに血管投与して、放射線治療について検証し、担がんマウスの腫瘍体積が、過酸化チタン・ナノ粒子と放射線照射を併用した場合(PAATiOx+IR)にのみ、増殖抑制する現象を確認できた。
結論
 現時点では、ナノ粒子の開発、放射線照射方法の開発を含めて研究を進行出来ており、最終年度はマウスを用いたモデル実験を本格的に推進できると考えている。本手法を確立できれば、深部がんのみならず、リンパ節など転移性のがん細胞に対してもナノスケールでの標的化と治療効果が期待できると期待できる。

公開日・更新日

公開日
2012-06-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201111018Z