糖尿病関連血管病(動脈硬化・足病変)の早期診断・治療のための高感度分子イメージングプローブの開発

文献情報

文献番号
201111005A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病関連血管病(動脈硬化・足病変)の早期診断・治療のための高感度分子イメージングプローブの開発
課題番号
H21-ナノ・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
佐治 英郎(京都大学 大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 天滿 敬(京都大学 大学院薬学研究科)
  • 上田 真史(京都大学 大学院医学研究科)
  • 木村 寛之(京都大学 放射性同位元素総合センター)
  • 塩見 雅志(神戸大学 医学研究科附属動物実験施設)
  • 関 育也(日本メジフィジックス株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
47,976,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病性血管病に由来する動脈硬化は心筋梗塞を高頻度に引き起こし、さらに、下肢切断に至る糖尿病足病変は患者の生命予後・QOLを著しく低下させる。従って、これらに対する適切な治療法選択のために、高精度な診断法の開発が急務である。本研究の目的は、動脈硬化及び炎症の発生・進展の分子機構を標的として、病態生理学的観点と製剤学的観点からプローブ設計を行い、炎症の存在・進展範囲・活動性のみならず、微細な動脈硬化巣の不安定性を高感度で検出・評価しうる核医学分子イメージングプローブの開発を行い、糖尿病性炎症による合併症の高精度診断・治療に資することにある。
研究方法
病態生理学的観点から動脈硬化の発生・進展・不安定化に密接に関わる分子として酸化LDLを、さらに感染症の炎症反応における白血球の浸潤に密接に関わる分子として、ホルミルペプチド受容体(FPR)を選択し、これらを標的とする分子イメージングプローブを設計することを計画した。また、製剤学的な観点から、生体内代謝耐性化技術および分子電荷制御によるインビボ標的指向性技術を構築すると共に、高効率の標識法を設計することで高感度画像化を目指すこととした。
結果と考察
本年度は、酸化LDL、FPRに対する複数の分子プローブ候補化合物の設計・合成・評価をすすめ、有望な分子プローブを見出すことに成功した。具体的には酸化LDLを対象としては[125I]AHP12、[125I]AHP22、[111In]AHP22を新たに設計・合成・評価し[111In]AHP22のインビボでの安定性、病変集積性を示した。FPRを対象としては計算科学的手法により[18F]fMLFXYk(FB)kを見出し、これまでに高効率的合成法を開発したペプチド標識試薬[18F]SFBを用いた標識合成に成功した。さらに、PETによる炎症病変のインビボ画像化が可能であることを示すとともに、マウスによる拡張型単回投与毒性試験を行うことで本プローブは臨床試験に必要な安全性を有することを見出した。
結論
開発した分子プローブは、糖尿病性血管病に由来する炎症および動脈硬化巣の不安定性を高感度で検出する核医学分子イメージングプローブとなりうる可能性を示した。

公開日・更新日

公開日
2012-06-25
更新日
-

文献情報

文献番号
201111005B
報告書区分
総合
研究課題名
糖尿病関連血管病(動脈硬化・足病変)の早期診断・治療のための高感度分子イメージングプローブの開発
課題番号
H21-ナノ・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
佐治 英郎(京都大学 大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 天満 敬(京都大学 大学院薬学研究科)
  • 上田 真史(京都大学 大学院医学研究科)
  • 木村 寛之(京都大学 放射性同位元素総合センター)
  • 塩見 雅志(神戸大学 医学研究科附属動物実験施設)
  • 関 育也(日本メジフィジックス株式会社)
  • 小野 正博(京都大学 大学院薬学研究科)
  • 河嶋 秀和(国立循環器病研究センター 画像診断医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病性血管病に由来する動脈硬化は心筋梗塞を高頻度に引き起こし、さらに、下肢切断に至る糖尿病足病変は患者の生命予後・QOLを著しく低下させる。従って、これらに対する適切な治療法選択のために、高精度な診断法の開発が急務である。本研究の目的は、動脈硬化及び炎症の発生・進展の分子機構を標的として、病態生理学的観点と製剤学的観点からプローブ設計を行い、炎症の存在・進展範囲・活動性のみならず、微細な動脈硬化巣の不安定性を高感度で検出・評価しうる核医学分子イメージングプローブの開発を行い、糖尿病性炎症による合併症の高精度診断・治療に資することにある。
研究方法
病態生理学的観点から動脈硬化の発生・進展・不安定化に密接に関わる分子として酸化LDL、リゾリン脂質受容体(G2A)を、さらに感染症の炎症反応における白血球の浸潤に密接に関わる分子として、ホルミルペプチド受容体(FPR)を選択し、これらを標的とする分子イメージングプローブを設計することを計画した。また、製剤学的な観点から、生体内代謝耐性化技術および分子電荷制御によるインビボ標的指向性技術を構築すると共に、高効率の標識法を設計することで高感度画像化を目指すこととした。
結果と考察
研究期間において、各標的分子に対する複数の分子プローブ候補化合物の設計・合成・評価を行うとともに、各分子プローブの最適化・有効性評価を行った。その結果、特に酸化LDL、FPRに対する有望な分子プローブを見出すことに成功した。具体的には、酸化LDLを対象としては酸化LDL結合性タンパク質Asp-Hemolysinの構造情報を元に設計した[125I]AHP7、[111In]AHP22のインビボでの病変集積性を示した。FPRを対象としては計算科学的手法により[18F]fMLFXYk(FB)kを見出し、別途高効率的合成法を開発したペプチド標識試薬[18F]SFBを用いた標識合成に成功した。さらに、PETによる炎症病変のインビボ画像化が可能であることを示すとともに、マウスによる拡張型単回投与毒性試験を行うことで本プローブは臨床試験に必要な安全性を有することを見出した。
結論
開発した分子プローブは、糖尿病性血管病に由来する炎症および動脈硬化巣の不安定性を高感度で検出する核医学分子イメージングプローブとなりうる可能性を示した。

公開日・更新日

公開日
2012-06-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-02-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201111005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
酸化LDL、ホルミルペプチド受容体(FPR)を標的とした有効な新規PET/SPECTプローブの開発、および、ペプチドの18F標識試薬の高効率自動合成法の開発に成功し、さらにそれらを用いて動脈硬化、糖尿病足病変モデル炎症部位のPET画像化に成功した。これらは、動脈硬化あるいは細菌感染性炎症を対象とした最初の低分子結合性ペプチドプローブであり、この開発は糖尿病関連血管病あるいは広く動脈硬化・炎症の研究に有効なツールを提供するものであり、その学術的意義は大きい。
臨床的観点からの成果
糖尿病性血管病に由来する動脈硬化・足病変は心筋梗塞・下肢切断の危険性を孕み、患者の生命予後・QOLを著しく低下させる。従って、これらに対する高精度な早期質的診断法の開発が適切な治療推進のために切望されてきた。開発したPET/SPECTプローブは動脈硬化・足病変の早期質的診断を可能とすると評価できるものであり、臨床的意義は極めて大きい。また、FPRプローブについては拡張型単回投与毒性試験により安全性が示されたことから、臨床研究への速やかな移行および実施が可能である。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
本研究成果は、第51回日本核医学会学術総会(2011年10月28日、つくば)において2演題、Society of Nuclear Medicine 59th Annual Meeting(2012年6月11日、米国マイアミビーチ)において1演題がハイライト演題として取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
68件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
46件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計16件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ueda M, Kudo T, Mutou Y, et al.
Evaluation of [125I]IPOS as a molecular imaging probe for hypoxia-inducible factor-1-active regions in a tumor: comparison among single-photon emission computed tomography/X-ray computed tomography imaging, autoradiography, and immunohistochemistry
Cancer Sci , 102 (11) , 2090-2096  (2011)
原著論文2
Kudo T, Ueda M, Konishi H, et al.
PET imaging of hypoxia-inducible factor-1-active tumor cells with pretargeted oxygen-dependent degradable streptavidin and a novel 18F-labeled biotin derivative
Mol Imaging Biol , 13 (5) , 1003-1010  (2011)
原著論文3
Ueda M, Kudo T, Kuge Y, et al.
Rapid detection of hypoxia-inducible factor-1-active tumours: pretargeted imaging with a protein degrading in a mechanism similar to hypoxia-inducible factor-1alpha
Eur J Nucl Med Mol Imaging , 37 (8) , 1566-1574  (2010)
原著論文4
Kudo T, Ueda M, Kuge Y, et al.
Imaging of HIF-1-active tumor hypoxia using a protein effectively delivered to and specifically stabilized in HIF-1-active tumor cells
J Nucl Med , 50 (6) , 942-949  (2009)
原著論文5
Nishigori K, Temma T, Yoda K, et al.
Radioiodinated peptide probe for selective detection of oxidized low density lipoprotein in atherosclerotic plaques
Nucl Med Biol , 40 , 97-103  (2013)
原著論文6
Nishigori K, Temma T, Onoe S, et al.
Development of a Radioiodinated Triazolopyrimidine Probe for Nuclear Medical Imaging of Fatty Acid Binding Protein 4
PLoS One , 9 (4) , e94668-  (2014)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2017-06-20

収支報告書

文献番号
201111005Z