シュガーチップと糖鎖固定化金ナノ粒子を用いたウイルス性疾患の超早期検査・診断法の開発

文献情報

文献番号
201111004A
報告書区分
総括
研究課題名
シュガーチップと糖鎖固定化金ナノ粒子を用いたウイルス性疾患の超早期検査・診断法の開発
課題番号
H21-ナノ・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
隅田 泰生(国立大学法人鹿児島大学 大学院理工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 奥野 寿臣(学校法人兵庫医科大学 病原微生物)
  • 石田 秀治(国立大学法人岐阜大学 応用生物科学部)
  • 有馬 直道(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 馬場 昌範(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 岡本 実佳(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 梶川 浩太郎(国立大学法人東京工業大学 大学院総合理工学研究科)
  • 井戸 章雄(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 中嶋 一彦(学校法人兵庫医科大学 感染制御部)
  • 西 順一郎(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 能勢 裕久(鹿児島市立病院 内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖鎖は生体内で多彩な機能を示し、生命現象に不可欠な役割を有する。一方で、細胞表層の糖鎖はウイルスにはレセプターとして使用され、その感染を仲介する。我々は糖鎖を固定化したバイオデバイス「シュガーチップ」および「糖鎖固定化金ナノ粒子(SGNPと略)」を開発しており、本研究では、これらデバイスをさらに改良・統合して、PCRで検出できない極低濃度のウイルスを超早期に検出・診断可能な先端医療技術の開発を行うことを目的とした。
研究方法
平成23年度は分担研究者の一部の入替を行い10名の分担研究者の協力のもと、 (1)糖鎖(硫酸化糖鎖やシアル酸含有糖鎖など)の合成とシュガーチップ(SC)及び糖鎖固定化金ナノ粒子(SGNP)の調製;(2)多チャンネルファイバー型局在表面プラズモン共鳴測定装置(LSPR)の感度向上;(3)ウイルスの超高感度検出と選択的除去法ならびに治療薬開発のためのスクリーニング技術の開発、の3つのテーマを行った。
結果と考察
テーマ(1)については、ウイルスが特異的に結合する糖鎖の探索のためのSC、ならびにそれを用いたSGNPを調製するために、ヘパラン硫酸やデルマタン硫酸の部分二糖構造をそれぞれ多種合成し、シュガーチップ化した。また糖鎖に対する自己免疫疾患の患者血清と反応するガングリオシドGalNAc-GD1aの全合成を達成した。テーマ(2)については、特に昨年度開発した金の異常反射を用いた高密度蛋白質チップのマルチチャンネルバイオセンシングに成功した。テーマ(3)に関しては、昨年度から臨床研究を行っているインフルエンザウイルスに加え、今年度からは、ノロウイルス、HIVとヘルペスウイルスに関しても臨床研究を開始した。JEVやHBV抗原蛋白質のシュガーチップによる解析を行った。HCVは、微量血清中の低濃度ウイルスを簡便に濃縮し検出することができた。HTLV-1は、HTLV-1感染細胞表層の糖鎖に対する一本鎖抗体(scFv)の単離を行い、今後の新たな展開に進めた。さらにSGNP を用いて、ウイルス抗原蛋白質の高効率抗体産生法を開発した。
結論
最終年度に臨床研究を4つ開始でき、唾液や極微量の検体で検査が可能であることが明確になり、患者の心理的負担の軽減、早期診断に迅速治療、基礎疾患のある患者の予防診断や院内感染対策、さらに疫学的な研究にも応用が可能である事が明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2012-10-31
更新日
-

文献情報

文献番号
201111004B
報告書区分
総合
研究課題名
シュガーチップと糖鎖固定化金ナノ粒子を用いたウイルス性疾患の超早期検査・診断法の開発
課題番号
H21-ナノ・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
隅田 泰生(国立大学法人鹿児島大学 大学院理工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 奥野 壽臣(学校法人兵庫医科大学 病原微生物)
  • 石田 秀治(国立大学法人応用生物科学部)
  • 有馬 直道(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 馬場 昌範(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 岡本 実佳(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 梶川 浩太郎(国立大学法人東京工業大学 大学院総合理工学研究科)
  • 坪内 博仁(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 児玉 崇(株式会社トラスト)
  • 牟田 健一(株式会社モリテックス)
  • 中嶋 一彦(学校法人兵庫医科大学 感染制御部)
  • 西 順一郎(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 井戸 章雄(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 能勢 裕久(鹿児島市立病院 内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖鎖は生体内で多彩な機能を示し、生命現象に不可欠な役割を有する。一方で、細胞表層の糖鎖はウイルスにはレセプターとして使用され、その感染を仲介する。我々は糖鎖を固定化したバイオデバイス「シュガーチップ」および「糖鎖固定化金ナノ粒子(SGNPと略)」を開発しており、本研究では、これらデバイスをさらに改良・統合して、PCRで検出できない極低濃度のウイルスを超早期に検出・診断可能な先端医療技術の開発を行うことを目的とした。
研究方法
平成21、22年度は9名、23年度は10名の分担研究者の協力のもと、分担研究者の一部の入替を行いながら、(1)糖鎖(硫酸化糖鎖やシアル酸含有糖鎖など)の合成とシュガーチップ(SC)及び糖鎖固定化金ナノ粒子(SGNP)の調製;(2)多チャンネルファイバー型局在表面プラズモン共鳴測定装置(LSPR)の感度向上;(3)ウイルスの超高感度検出と選択的除去法ならびに治療薬開発のためのスクリーニング技術の開発、の3つのテーマを行った。
結果と考察
テーマ(1)については、多くのウイルスが結合するヘパラン硫酸やコンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸の部分二糖構造をそれぞれ多種合成し、またシアル酸関連では、最も高度にシアロ化されたガングリオシドGQ1bやGalNAc-GD1aを合成した。これらはSCに固定化され、ウイルスの糖鎖結合性のスクリーニング解析をより広範囲かつ詳細に行うことができるようになった。テーマ(2)については、光ファイバー型LSPRと2量体化した金ナノ粒子を用いて、検出感度を従来の100倍まで向上させた。また金の異常反射を用いた高密度蛋白質チップのマルチチャンネルバイオセンシングに成功した。この技術は次世代SC製造に使用できる。テーマ(3)に関しては、多くのウイルスに対して本技術が適用できることが明らかとなり、緊急性・事業性の高いインフルエンザ、HIV、ヘルペス、ノロウイルスに関しては、鹿児島大学病院、鹿児島市立病院、兵庫医科大学に於いて臨床研究や治験の承認を得て、患者検体に適用している。唾液や極微量の検体で検査が可能であることが明確になり、患者の心理的負担の軽減、早期診断に迅速治療、基礎疾患のある患者の予防診断や院内感染対策、さらに疫学的な研究にも応用が可能である事が明らかとなった。
結論
本研究事業は、順調に遂行することができ、本技術を一般国民の利益に資するための体外診断法として許認可を得るための道筋を確定させることができた。

公開日・更新日

公開日
2012-08-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201111004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
多くのウイルスが結合する硫酸化オリゴ糖や最も高度にシアロ化されたガングリオシドの合成を達成した。光ファイバー型LSPRと2量体化した金ナノ粒子を用いて、検出感度を従来の100倍まで向上させ、金の異常反射を用いた高密度蛋白質チップのマルチチャンネルバイオセンシングに成功した。多様なウイルスの糖鎖結合特性を明らかとし、それを固定化したナノ粒子で患者検体中の微量ウイルスの捕捉・濃縮ができることが明らかとなった。
臨床的観点からの成果
緊急性・事業性の高いインフルエンザ、HIV、ヘルペス、ノロウイルスに関しては、鹿児島大学病院、鹿児島市立病院、兵庫医科大学に於いて臨床研究や治験の承認を得て、患者検体に適用している。すでに、唾液や極微量の検体で検査が可能であることが明確になり、患者の心理的負担の軽減、早期診断に迅速治療、基礎疾患のある患者の予防診断や院内感染対策、さらに疫学的な研究にも応用が可能である事が明確になったなどの多くの成果を得られた。
ガイドライン等の開発
該当無し
その他行政的観点からの成果
平成23年3月、鹿児島県議会において、本技術を鹿児島県で鳥インフルエンザや口蹄疫ウイルスへ適用するべきであると、某政党議員が質問に取り入れた。
その他のインパクト
以下に抜粋するが、マスコミには多く取り上げられた。また、JST宮崎サテライトが主催した高校生や一般を対象とするセミナーの講師として、3回講演を行った(隅田)。
平成21年6月30日(南日本新聞);21年7月1日(日本経済新聞); 21年12月2日(NHK おはよう九州沖縄);21年12月13日(朝日新聞); 21年12月16日(朝日小学生新聞);22年1月25日(日本経済新聞); 22年1月25日(産経新聞); 22年1月25日(北日本新聞);23年9月14日(日本経済新聞)

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
85件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
149件
学会発表(国際学会等)
48件
その他成果(特許の出願)
10件
「出願」「取得」計20件
その他成果(特許の取得)
10件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Xu Zhang, Sachiko Nakamura-Tsuruta, Yasuo Suda, et al.
SUPER HIGH SENSITIVE DETECTION OF VIRUSES USING SUGAR-CHAIN IMMOBILIZED GOLD NANO-PARTICLES (SGNPs)
Polymer Preprints , 53 (1) , 671-672  (2012)
原著論文2
Tomohiro Kozako, Shinya Hirata, Naomichi Arima, et. al.
Oligomannose-coated liposomes efficiently induce human T-cell leukemia vrus-1-specific cytotoxic T lympocytes without ajuvant
FEBS J. , 278 , 1358-1366  (2011)
原著論文3
T. Kozato, M. Yoshimura, N. Arima, et al.
PD-1/Pd-L1 expression in human T-cell leukemia virus type1 carriers and adult T-cell leukemia/lymphoma patients
Leukemia , 23 , 375-382  (2009)
原著論文4
Tomohiro Kozako, Katsuhiko Fukuda, Naomichi Arima, et. al.
Efficient induction of human T-cell leukemia virus-1-specific CTL by chimeric particle without adjuvant as a prophylactic for adult T-cell leukemia
Molecular Immunology , 47 , 606-613  (2009)
原著論文5
Akihio Saito, Masahiro Wakao, Yasuo Suda, et al.
Toward the assembly of heparin and heparan sulfate oligosaccharide libraries: efficient synthesis of uronic acid and disaccharide building blocks
Tetrahedron , 66 , 3951-3962  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2017-06-20

収支報告書

文献番号
201111004Z