ヒトiPS細胞由来分化誘導肝細胞を利用した新規毒性評価系の開発

文献情報

文献番号
201110031A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトiPS細胞由来分化誘導肝細胞を利用した新規毒性評価系の開発
課題番号
H23-創薬総合・指定-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
水口 裕之(独立行政法人医薬基盤研究所 創薬基盤研究部 幹細胞制御プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 梅澤 明弘(独立行政法人国立成育医療研究センター 生殖・細胞医療研究部)
  • 川端 健二(独立行政法人医薬基盤研究所 創薬基盤研究部 幹細胞制御プロジェクト)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトiPS細胞は再生医療だけではなく、創薬への応用も強く期待されている。なかでも、iPS細胞から分化誘導した肝細胞は、薬物の毒性評価や動態評価への応用が期待でき、産業界からの需要が最も高いものの一つである。医薬品の開発プロセスの早期に肝毒性を精度高く予測することは、創薬コスト削減・期間短縮・創薬シーズのヒット率の向上をもたらし、我が国の基幹産業のひとつである製薬産業の国際競争力向上に繋がると期待される。しかしながら、肝細胞は効率の良い分化誘導が困難であり、創薬応用の障害となっている。そこで本研究では、ヒトiPS細胞から肝細胞への高効率分化誘導法を開発し、肝細胞へ分化しやすいiPS細胞株を見出す方法論を確立する。また、得られた肝細胞の機能を薬物代謝や排泄等種々の機能から解析し、新規毒性試験・代謝試験開発に向けた基盤技術を開発する。
研究方法
本研究は、主任研究者水口、分担研究者2名(川端、梅澤)の計3名が遂行した。当該年度においては、主に、肝分化に重要な遺伝子を導入することによるヒト iPS 細胞から肝細胞への分化誘導法の開発、分化誘導された肝細胞における薬物応答能の解析、および 500 種類のヒト iPS 細胞を用いた肝細胞への分化誘導に適した iPS 細胞株の選別、に分けて遂行された。
結果と考察
肝分化に重要な転写因子である FOXA2とHNF1α 遺伝子を導入することにより分化誘導した肝細胞は、ヒト初代培養肝細胞と同程度の肝関連遺伝子の発現が確認された。分化誘導肝細胞について、シトクロムP450酵素などで代謝される薬物の代謝プロファイルを調べたところ、その薬物代謝能はヒト初代培養肝細胞より低いものの、いずれの薬物に対しても代謝能を有していることが確認された。さらに、分化誘導肝細胞は肝毒性を示す薬剤に対してヒト初代培養肝細胞と同様に細胞毒性を呈した。また、肝分化指向性を有したヒト iPS 細胞の選別に関し、バイオインフォマティクス的手法を用いた包括的な解析を行い、再現性のあるスクリーニング手法の確立に着手した。
結論
ヒトiPS細胞から肝細胞への高効率分野誘導法を開発し、各種薬物に対して代謝能を有した肝細胞であることが明らかとなった。また、バイオインフォマティクス的手法を用いて肝細胞への分化誘導に適した細胞株の選別に関する包括的な解析を行い、再現性のあるスクリーニング手法の確立に着手した。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201110031Z