大動脈瘤治療薬開発を目指した基礎的・臨床的基盤研究

文献情報

文献番号
201110008A
報告書区分
総括
研究課題名
大動脈瘤治療薬開発を目指した基礎的・臨床的基盤研究
課題番号
H22-創薬総合・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 公雄(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 下川 宏明(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 福本 義弘(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 高橋 潤(東北大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
動脈硬化や大動脈瘤の進展や破綻には、酸化ストレスが重要因子として働いていると考えられているが、そのメカニズムは不明な点が多い。我々はこれまで、酸化ストレス下で血管平滑筋細胞より分泌される18kDaの炎症促進蛋白 サイクロフィリンA (CyPA)を同定し、心血管疾患促進の重要因子であることを証明した。さらに近年、酸化ストレスによるCyPAの分泌はRho-kinase依存性であり、両者が密接に絡み合って相加・相乗効果を生む酸化ストレス増幅系を形成することを発見した。すなわち、新規炎症蛋白CyPAとRho-kinaseとの相互作用は、「酸化ストレス増幅機構」の基盤を担い、大動脈瘤を初めとするあらゆる心血管疾患の発症機構の根幹に関わる可能性がある。本研究では、大動脈瘤の進行におけるRho-kinase/ CyPA系に焦点し、その制御・破綻機構の解明およびバイオマーカーとしての可能性を探る。
研究方法
本研究は、サイクロフィリンAをターゲットとした活動性大動脈瘤の評価法開発および活動性制御を目指した実際の治療を視野にいれた詳細な研究を行う。研究方法としては、大動脈瘤手術サンプルを用いた解析に加え、血清濃度測定法(ELISA)の開発、in vivo イメージング(マウス)、PET(ヒト)による病変部位検出法の開発を行う。既に開発済みである当科独自の臓器特異的Rho-kinase遺伝子欠損マウス、臓器特異的Rho-kinase遺伝子過剰発現マウス、CyPA遺伝子欠損マウス、CyPA受容体遺伝子欠損マウス(ApoE欠損背景)を駆使した動物モデルの検討に加えて、当科が保有するヒト冠動脈硬化病変検体、心疾患ごとにライブラリー化を進めている患者血清を用いて、臨床的意義も平行して検討する。
結果と考察
サイクロフィリンAは、動脈硬化を進行させる重要蛋白であることが、動物実験で証明された。サイクロフィリンAは大動脈瘤発症・動脈硬化破綻の必須蛋白であり、血清サイクロフィリンA濃度はその早期発見や活動性評価に有効である可能性が高い。仮に、血漿サイクロフィリンA濃度が心筋梗塞や大動脈瘤破裂の発症前予測に少しでも情報を与えてくれるならば、急増するメタボ症例(脳梗塞・心筋梗塞・大動脈瘤予備軍)の中から、積極的治療介入すべき患者をより効率的に発見することができる。そして、医師不足の現実、膨らみ続ける医療費、そして経済的メリットの全ての目的を達成できる可能性がある。
結論
サイクロフィリンAの分泌抑制もしくは細胞外受容体阻害に着目した治療薬の開発も期待でき、日本発の新規動脈性疾患治療薬開発に繋がる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201110008Z