サル免疫不全ウイルス中和抗体の感染個体レベルにおける防御機序の解析

文献情報

文献番号
201108023A
報告書区分
総括
研究課題名
サル免疫不全ウイルス中和抗体の感染個体レベルにおける防御機序の解析
課題番号
H22-政策創薬・一般-016
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
山本 浩之(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
3,301,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、エイズウイルス(ヒト免疫不全ウイルス、HIV)の感染個体レベルにおける防御に極めて重要なウイルス中和抗体につき、作用機序の全容をサルエイズモデルを用い網羅的に明らかとし、予防エイズワクチン開発への論理基盤を見出すことを目的とする。初年度は、中和抗体を介したSIV抗原提示亢進を司る樹状細胞受容体の検索および中和抗体-SIV複合体パルス樹状細胞により誘導される細胞性免疫の解析を行い、これに基づき今年度は以下の検討を行った。
1:SIV感染初期の中和抗体受動免疫時におけるCD64阻害抗体の共接種
2:NAbによるSIV制御時の中和能の必要性評価
研究方法
1:サルSIV感染7日目にNAbを受動免疫した際CD64結合抗体を共接種した。
2: SIV感染時の抗SIV結合・非中和抗体受動免疫実験:抗原提示アッセイでNAbが感染標的とならない特異的CTLのCCL4産生亢進を誘導したことを重視し、この反応のみの惹起を目的に「粒子結合(抗原提示)能を有し」、「中和能を有さない」SIV結合・非中和抗体(nNAb)の受動免疫実験を行うこととした。SIV持続感染サル群をスクリーニングし、中和活性を示さなかった個体血漿よりポリクローナルIgGを精製し、SIV粒子を抗原としたELISA系を樹立し、背景研究のNAbと同様の粒子結合能を有する個体由来のnNAbを選抜した。これを感染急性期に受動免疫し、CD8陽性T細胞誘導に偏りうる抗原提示で制御が得られるかを評価した。
結果と考察
1:CD64抗体共接種では、各種病態マーカー悪化の可能性が示唆された。後述する抗体の中和能の必要性評価を最重要と認め解析を保留した。
2:受動免疫実験の結果、感染後8週時点までで制御に至らない可能性が示唆された。中和抗体による急性期防御機構で①抗原提示能と②ウイルス中和能の寄与が両方考えられるが、この内②の必要性が本段階で見出された。樹状細胞への粒子取込みに続く誘導対象となりうる特異的CD4陽性T細胞の感染からの保護が不十分で、有効な抗SIV細胞性免疫の誘導に至らない可能性が考えられる。
結論
前年度結果より重要な解析目標と認められたSIV持続感染阻止における急性期受動免疫抗体の中和能の必要性評価を目的に「粒子結合(抗原提示)能を有し」、「中和能を有さない」SIV結合・非中和抗体(nNAb)の受動免疫を行った結果、初期感染後の制御に至らない可能性が示唆された。本研究の成果は、感染初期の抗体によるSIV持続感染阻止に必要十分な条件の解明に結び付くものであり、中和抗体誘導型予防エイズワクチン開発への論理的基盤に寄与することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201108023Z