文献情報
文献番号
201108017A
報告書区分
総括
研究課題名
抗体プロテオミクス技術を駆使した悪性中皮腫関連バイオマーカーの探索と創薬への展開
課題番号
H22-政策創薬・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
長野 一也(独立行政法人 医薬基盤研究所 創薬基盤研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
2,963,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
悪性中皮腫は、1970年頃に頻用されたアスベストの曝露を主要因とする疾患で、5年生存率は4%と予後不良である。また本疾患は、曝露から約40年遅れて発症するため、患者数は急増している。本観点から、悪性中皮腫に対する有用な診断・治療法の開発は緊急課題であるが、有用なマーカーはみつかっていない。そこで本研究では、創薬マーカーを迅速に探索可能な抗体プロテオミクス技術により、悪性中皮腫マーカーを探索し、分子病態の解明や診断・治療法の確立に資する知見を収集する。
研究方法
●Dot Blot ELISA:各種蛋白質を固相したニトロセルロース膜上に抗体提示ファージを添加した。HRP標識抗M13抗体を反応させ、各抗体クローンの結合性を評価した。
●組織アレイ(TMA)の免疫染色:TMA中の内在性ペルオキシダーゼを処理し、抗体提示ファージを添加した。HRP標識抗M13抗体を反応させ、ENVISION+システムで抗原の発現を検出した。
●2D-DIGE解析:H28とH2052から調製した蛋白質を蛍光試薬Cy2,3,5で標識した。これらを等電点と分子量を指標に展開し、蛍光強度から各蛋白質量を比較した。変動蛋白質はゲル内消化し、質量分析にて配列決定した。
●Western Blot:各悪性中皮腫細胞と正常中皮細胞の溶解液を電気泳動し、AnnexinA4(ANXA4)とβ-actinの抗体で検出した。各蛋白質の発現量は、バンド強度を定量することで解析した。
●組織アレイ(TMA)の免疫染色:TMA中の内在性ペルオキシダーゼを処理し、抗体提示ファージを添加した。HRP標識抗M13抗体を反応させ、ENVISION+システムで抗原の発現を検出した。
●2D-DIGE解析:H28とH2052から調製した蛋白質を蛍光試薬Cy2,3,5で標識した。これらを等電点と分子量を指標に展開し、蛍光強度から各蛋白質量を比較した。変動蛋白質はゲル内消化し、質量分析にて配列決定した。
●Western Blot:各悪性中皮腫細胞と正常中皮細胞の溶解液を電気泳動し、AnnexinA4(ANXA4)とβ-actinの抗体で検出した。各蛋白質の発現量は、バンド強度を定量することで解析した。
結果と考察
前年度に、悪性中皮腫マーカー候補として同定したANXA4に対して作製した抗体の特異性を評価した結果、ANXA4にのみ結合する抗体を得た。そこで、その特異抗体でTMA染色した結果、正常組織に比べて悪性中皮腫組織で高率に発現していることが示唆された。一方、シスプラチン(CDDP)感受性マーカーを同定するため、感受性の異なる細胞間で発現変動している蛋白質を探索した結果、2倍以上変動していた8種の蛋白質を同定した。この中には、ANXA4も含まれていたため、CDDP感受性との関連を検証すべく、各種悪性中皮腫細胞株における発現量とCDDP感受性の相関を解析した。その結果、ANXA4の発現が高いほど、CDDPに対する感受性は低いことが示された。
結論
悪性中皮腫マーカー候補のANXA4は、がん組織で高率に発現し、CDDPの感受性と関連する可能性を明らかにした。
公開日・更新日
公開日
2012-07-02
更新日
-