歯周病治療薬と歯槽骨再生方法の開発

文献情報

文献番号
201108016A
報告書区分
総括
研究課題名
歯周病治療薬と歯槽骨再生方法の開発
課題番号
H22-政策創薬・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 研(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
2,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯周感染、外傷性咬合あるいは老化によって、高齢になるほど歯槽骨吸収が進みやすい。本研究では、これまで応用されてきた成長因子などと異なり、機能性マイクロRNAを用いた新規歯槽骨再生法の開発を行う。
研究方法
骨芽細胞株KUSA/A1細胞ならびにMC-3T3-E1細胞を用い、L-アスコルビン酸、デキサメタゾン、ならびにβグリセロリン酸添加による分化誘導を行い、RNAをmiRNeasy mini kitを用いて抽出した。miRNA qPCRアレイについては、miFinder miRNA PCR arrayを用い、miScript array data analysisを用いて解析を行った。miRNAのターゲット予測にはTargetScanを援用した。
結果と考察
本研究では、まずKUSA細胞を活用して、骨芽細胞が骨細胞に成熟する実験系を確立した。OsteocytogenesisにおけるmiRNAの半網羅的な発現解析によって、Osteocytogenesisに伴い特徴的に発現変動する一群のmiRNAが明らかとなりそれらをOstemiRと命名した。その一部を、個別の定量PCRで解析し、miRNA PCR Arrayと個別のPCRとの間で類似した結果を得た。OstemiRのターゲット予測の結果、骨形成に必須の転写因子であるRunx2やパターン形成に必須の成長因子Wntファミリー遺伝子などが予想された。またエピジェネティクスに関わる遺伝子もOstemiRのターゲットとして予想された。骨形成に関わるDmp1、Ctgf、Runx2およびOsterixの3’非翻訳領域探索の結果、miRNA Arrayで抽出したOstemiRがDmp1、Ctgf、Runx2およびOsterixを標的とすることが予測された。
結論
本研究で明らかにされたOstemiRは、今後の機能解析によって、単数のmiRNAあるいはanti-miRNA、もしくは複数の組み合わせによって、骨芽細胞分化を正負に調節すると考えられる。miRNAはタンパク質や抗体と比べると小分子であるため、比較的簡単かつ安価に合成および定量できる。またmiRNAが細胞外に分泌されるとの報告も増えていることからも、OstemiRあるいはanti- ostemiRは、歯周病と骨粗鬆症の診断に応用したり、これらの疾患の治療のために有用と考られる。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201108016B
報告書区分
総合
研究課題名
歯周病治療薬と歯槽骨再生方法の開発
課題番号
H22-政策創薬・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 研(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯周感染、外傷性咬合を含め、高齢になるほど歯槽骨吸収が進みやすい。歯槽骨吸収の予防、進行遅延、再生などの対策が行われているものの、困難なケースが少なくない。そこで、本研究課題では、歯槽骨吸収の原因となる歯周病の慢性炎症の改善と歯槽骨再生医療の新規治療法の基礎として、骨形成の調節に関わる機能性マイクロRNAとMMPの慢性炎症抑制機能について明らかにし、応用への基盤を提供することを目的とする。
研究方法
機能性マイクロRNAの同定のために、骨芽細胞の分化に伴い変動するRNA種のプロファイリングを行った。プロファイリングは、分化誘導/非誘導の骨芽細胞からmiRNA画分を精製し、PCRアレイ法により発現解析を行った。発現データについてmiScript array data analysisをプロファイリング解析を行った。miRNAのターゲット予測にはTargetScanを援用した。また、細胞内MMP3によるHSP誘導については、細胞内型MMPを細胞で発現させ、その影響として内在性遺伝子発現変化をマイクロアレイ法により解析を行った。発現データはさらにパスウェイ解析を行い、細胞内MMP3の転写調節機能について検討を行った。
結果と考察
骨形成を調節する機能性マイクロRNAを発現パターンより分類し、骨形成との関わりが深い分子種(miRNA)をオステミア(OstemiR)として同定した。これらのオステミアには、これまで骨形成との関与が知られているWntシグナル分子群や転写因子群の合成制御に関わっていることが予測された。また、細胞内MMP3の解析では、領域特異的な遺伝子発現の変化が検出され、慢性炎症抑制との関与が知られているHSP群のうち、HSPA6の発現に関与していることが示唆された。
結論
本研究で明らかにされたオステミア分子群は、今後の機能解析によって、単数のmiRNA あるいはanti-miRNA、もしくは複数の組み合わせによって、骨芽細胞分化を正負に調節すると考えられる。また、生理的な骨代謝の理解に有用であると同時に、歯周病と骨粗鬆症の診断および治療のために有用な新しい指標およびツールとなる可能性がある。一方、慢性炎症抑制に関与するHSP群の発現に細胞内MMP3の関与が示唆されたことから、これまでの組織修復や血管新生などの効果に加え、歯周病の慢性炎症の改善に関わる可能性が考えられた。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201108016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
骨芽細胞分化を制御するmiRNA種の同定と、細胞外マトリックス酵素のMMP3の細胞内での役割について解析を行い、新たな機能(HSP群誘導)について明らかにした。
臨床的観点からの成果
効率よく組織再生を行うには、組織修復に伴うレシピエント側の炎症をうまくコントロールすることが重要となってきている。MMP3が口腔内組織再生にも効果が知られているが、従来の組織のリモデリング機能だけなく、炎症制御に関与する可能性が示唆された。
ガイドライン等の開発
新規治療法の開発に寄与する基盤研究であり、ガイドライン等の開発に直接関与していない。
その他行政的観点からの成果
新規治療法の開発に寄与する基盤研究であり、効果的な再生治療への寄与が考えられる。
その他のインパクト
インパクトに関する具体的な成果は未だ得られていない。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Eguchi T, Watanabe K, Hara ES, et al.
OstemiR: a novel panel of microRNA biomarkers in osteoblastic and osteocytic differentiation from mesenchymal stem cell.
PLoS One , 8 , e58796-  (2013)
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0058796

公開日・更新日

公開日
2017-06-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201108016Z