HIV-1エンベロープ蛋白(Env)の立体構造変化誘導剤(NBD誘導体)の臨床応用に向けた基礎研究

文献情報

文献番号
201108015A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV-1エンベロープ蛋白(Env)の立体構造変化誘導剤(NBD誘導体)の臨床応用に向けた基礎研究
課題番号
H22-政策創薬・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
松下 修三(国立大学法人 熊本大学 エイズ学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 玉村 啓和(国立大学法人 東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 )
  • 五十嵐 樹彦(国立大学法人 京都大学 ウイルス研究所)
  • 吉村 和久(国立大学法人 熊本大学 エイズ学研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
24,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は、HIV-1、gp120のCD4結合部位に作用してエンベロープ蛋白(Env)の三量体構造を変化させ、中和抗体活性を増強する低分子化合物NBD-556を同定した。本研究の目的はNBD誘導体で中和抗体の臨床効果を増強させるという、これまでとは異なる戦略が、in vivoでも有効かどうか、動物モデルで検証することであり、さらに多くの誘導体を探索し、臨床応用可能なNBD誘導体を作出することである。
研究方法
NBD-556及びその誘導体は、種々のアニリンを出発原料として合成した。抗ウイルス効果をWST-8 assayで解析し、構造活性相関を検討した。中和単クローン抗体を用いて、NBD誘導体による中和増強効果を検討した。YYA-021の安全性試験には、アカゲザルを用いた。抗体の機能的Env三量体に対する結合活性は、FACS解析により行った。
結果と考察
NBD-556の低毒性誘導体であるYYA-021は、リード化合物として適正と判断され、これを大量に合成し、ラットでの急性毒性試験や血中濃度測定を行い、POC試験のための基礎データを集積した。subtype B及びC標準パネルウイルスなどを用いて、YYA-021の効果を調べたところ、中和増強効果はsubtype Bの50~30%、non- subtype Bでは28%と考えられた。NBD誘導体の構造活性相関研究の結果、ピペリジン部位の窒素原子近傍の修飾や芳香環の置換基変換が、活性や毒性に影響を与えることを見出した。POC試験に向け、非ヒト霊長類を用いたYYA-021の安全性試験を行った。2.5 mg/kgから12.5 mg/kgのdose escalationにより検討したところ、最高投与量である12.5 mg/kgで除脈を観察した。これらの知見から、より立体構造変化誘導能に優れた、臨床応用に最適な小分子の探索を継続するとともに、安全性が確認されたプロトコールによるPOC試験を開始する予定である。
結論
これまで得られた研究成果から YYA-021 が、霊長類モデルで用いる化合物として適正と判断され、これを大量に合成し、安全性試験、血中濃度測定などを行い、研究の第二段階としてPOC試験計画を立てる段階に到達した。現在、溶解方法を工夫するなどして、より毒性を軽減する方策を試験中であり、霊長類モデルでのPOC試験に向けて調整中である。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201108015Z