H12(ADP)リポソームの人工血小板としての前臨床評価(効力と安全性)

文献情報

文献番号
201108004A
報告書区分
総括
研究課題名
H12(ADP)リポソームの人工血小板としての前臨床評価(効力と安全性)
課題番号
H21-政策創薬・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
半田 誠(慶應義塾大学 医学部、輸血・細胞療法センター)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 康夫(早稲田大学理工学術院 医工学)
  • 武岡 真司(早稲田大学理工学術院 医工学)
  • 木下 学(防衛医科大学校、侵襲免疫学)
  • 丸山 徹(熊本大学薬学部、医療薬剤学)
  • 鈴木 克彦(早大スポーツ科学術院、予防医学)
  • 後藤 信哉(東海大学医学部、循環器病学)
  • 村田 満(慶應義塾大学医学部、臨床検査医学 )
  • 鈴木 英紀(日本医科大学、形態解析共同研究施設)
  • 鎌田 徹治(慶應義塾大学医学部、解剖学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
29,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
H12(ADP)リポソーム(LP)の効力と安全性について、品質保証体制の構築に向けた基礎検討とともに、人工血小板としての適格性を評価した.
研究方法
外傷性臓器損傷ウサギモデルを用いて大量輸血に伴う急性血小板減少症への適応を実地臨床に則したプロトコルで評価し、炎症系への作用を好中球の活性化酸素産生能などを指標に検討した.また、肝臓における炎症性サイトカインの発現を測定した.RI標識物の体内動態を健常マウス、ラット、ウサギと薬剤起因性血小板減少ラットで解析し、データのヒトへの外挿を試みた.血栓症誘発作用をDICラットモデルやマウスの脳循環観察系で評価した.LPの品質保証について、製造工程の標準化に向けた物性評価項目を検討し、in vitro高性能を有する脂質組成改変LPの止血効果を薬剤性血小板減少ラットで評価し、LPの微細形態解析を急速凍結割断レプリカ法で、そして、αIIbβ3発現細胞への蛍光標識LPの結合測定系の性能検定法としての有用性を検討した.
結果と考察
LPの事後投与により、一過性の圧迫止血を施した肝臓損傷部位からの出血が効果的に阻害され、モデル動物の救命率が向上した.また、LPは全血及び肝臓での炎症反応を惹起しなかった.LPは薬剤として十分な血液滞留性と体外排泄性を示し、ヒトでの予測半減期からも予防投与への適応拡大の可能性も指摘できた.ラットおよびマウスでの血栓誘発・増強作用を認めなかった.物性評価項目としてH12含有量、脂質構成比と内包ADP量が追加できた.物理的変化を受けてLPはADPを放出することがわかった.脂質改変LPは機能せず、止血作用にはH12 とADPの必要性が明らかとなった.標的蛋白発現細胞へ結合能測定によりLPロット間の性能評価を行なうことができたが、不安定な培養細胞を用いる必要性から、標準検定法には適さない可能性が示唆された.
結論
効力と安全性の面から、当該LPの人工血小板としての適格性が評価できた.緊急性があり血小板輸血が不便な外傷性急性血小板減少症への適応を目指した次なるステップへの移行の妥当性が明確となった.

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201108004B
報告書区分
総合
研究課題名
H12(ADP)リポソームの人工血小板としての前臨床評価(効力と安全性)
課題番号
H21-政策創薬・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
半田 誠(慶應義塾大学 医学部、輸血・細胞療法センター)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 康夫(早稲田大学理工学術院、 医工学)
  • 武岡 真司(早稲田大学理工学術院、 医工学)
  • 木下 学(防衛医科大学校、侵襲免疫学)
  • 丸山 徹(熊本大学薬学部、 医療薬剤学)
  • 鈴木 克彦(早稲田大学スポーツ科学術院、予防医学)
  • 後藤 信哉(東海大学医学部、循環器病学)
  • 村田 満(慶應義塾大学医学部、臨床検査医学 )
  • 鈴木 英紀(日本医科大学、形態解析共同研究施設)
  • 鎌田 徹治(慶應義塾大学医学部、解剖学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
H12(ADP)リポソーム(フィブリノゲン由来合成ペプチド(HHLGGAKQAGDV: H12)を表面に担持させ、アデノシン5’-二リン酸(ADP)を内包させたPEG化リン脂質小胞体)の効力と安全性を検討し、人工血小板としての適格性を評価した.
研究方法
肝臓損傷による出血性ショックで致死性となる大量出血・輸血起因性の稀釈性血小板減少症ウサギモデルにおいて、当該リポソーム(以下LP)は血小板輸血に匹敵する止血効果と高い救命率を示した.RI標識LPの健常小動物(マウス、ラット、ウサギ)及び薬剤(ブスルファン)性血小板減少症動物(ウサギ)の体内動態の検索で、LPが十分な血中滞留性と低い臓器蓄積性を有し、アニマルスケーアップ予測によりヒトに十分適用できる可能性が示された.LP単回投与で、脂質検査値の一過性上昇を除いて、健常動物の血液・凝固系や生化学マーカに影響しなかった.健常ラット及び外傷ウサギモデルで好中球機能(ルミノール発光反応による活性酸素測定など)を指標とした炎症反応を惹起しなかった.動脈血栓症(マウス精巣動脈閉塞試験など)や静脈血栓症(DICラット)を誘導あるいは増強しなかった.LPの機能最適化には、内包物質(5-HT)や脂質膜物性(表面荷電)の選択が重要であった.品質保証体制の構築に向けLPの物性評価項目(濃度、サイズ、ζ電位、H12担持量、脂質構成比、ADP内包量)が設定された.LPは血小板凝集による物理的刺激で脂質流動膜攪乱が起こり、ADPを放出する可能性が電顕で示された.LPの標的となる高親和性の活性型αIIbβ3が作製され、LPの機能検定法として利用できる可能性が検討された.
結果と考察
効力と安全性の面から、LPの人工血小板としての適格性を示した.希釈性血小板減少による致死性肝臓損傷モデルにて、LPは血小板輸血に比較しうる出血量抑制効果と救命率向上を示した.一方、医薬品開発に求められる安全かつ有効な体内動態を示し、炎症や血栓症の誘発・促進作用は認めなかった.緊急で時宜を得た血小板輸血の利用が困難な外傷性急性血小板減少症を適応症とした次なる開発ステップへの移行を推奨するデータが提示できた.
結論
H12(ADP)リポソームの人工血小板としての適格性を、効力と安全性の面から確認することができた.緊急性があり血小板輸血のタイムリーな利用が困難なニーズの高い対象(外傷に伴う大量出血/輸血による急性血小板減少症)への適応を視野に入れた薬剤開発の次なるステップへの方向性が示された.

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201108004C

収支報告書

文献番号
201108004Z