歯髄幹細胞の神経分化能の検証とその治療応用

文献情報

文献番号
201106009A
報告書区分
総括
研究課題名
歯髄幹細胞の神経分化能の検証とその治療応用
課題番号
H22-再生・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
上田 実(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 朗仁(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒト脱落乳歯や永久歯由来の歯髄幹細胞は、神経堤由来の細胞集団であり、神経疾患治療に有用である可能性が高い。自己由来の成体幹細胞であるため、移植安全性が高く、倫理的問題も極めて少ない。本研究は、難治性神経疾患における歯髄幹細胞の治療有用性を検証し、低侵襲・安全性の高い神経再生療法の開発を目指す。
研究方法
1、ヒト歯髄幹細胞をドーパミン産生神経細胞に分化誘導し、ラットパーキンソン病モデルに移植する。治療有用性・安全性を検証する。2、未分化型ヒト歯髄幹細胞や細胞培養上清抽出物(CM)を神経損傷疾患モデル(ラット脳梗塞や脊髄損傷、新生児脳梗塞モデルであるマウス脳室周囲白質軟化症)に移植あるいは投与し治療有用性・安全性・治療メカニズムを検証する。
結果と考察
(1)低酸素培養で歯髄幹細胞をドーパミン産生神経細胞に分化誘導し、難治性神経変性疾患であるパーキンソン病ラットモデルに移植して機能改善を確認した。(2)未分化歯髄幹細胞の移植や培養上清投与が神経損傷疾患(脊髄損傷や脳梗塞)の治療に極めて有用であることを見いだした。ラット完全脊髄切断モデルや脳梗塞モデルの急性期に歯髄幹細胞を移植すると下肢運動機能が回復する(J Clin Invest. 2012;Tissue Eng. 2011)。(3)歯髄幹細胞-培養上清(CM)の局所投与で圧挫型脊髄損傷ラットの下肢運動機能が劇的に回復する。骨髄間葉系幹細胞や皮膚線維芽細胞-CMの投与では歩行機能が回復しない。(4)新生児低酸素脳症のモデルであるマウス脳室周囲白質軟化症に対する歯髄幹細胞移植やCM投与の治療有用性を見いだした。本研究開始時は、歯髄幹細胞の移植による難治性神経疾患治療の開発が目標であった。その意味合いにおいて、神経損傷疾患・脊髄損傷や脳梗塞、神経編成疾患・パーキンソン病モデルにおいて歯髄幹細胞の移植治療の有用性を示すことができたのは大きな前進であったと考える。さらに本研究の特筆すべき重要な研究成果は、歯髄幹細胞-CMに強力な神経再生効果を見いだしたことである。もともと幹細胞移植による神経再生治療は、失われた細胞を補給する効果と幹細胞から分泌されるパラクライン因子による治療効果の総和によるものと考えられてきた。今回、特に神経損傷の急性期治療においては「歯髄幹細胞の培養上清に含まれるパラクライン因子が極めて高い治療効果を発揮する」ことを見いだした。
結論
歯髄幹細胞の優れた神経再生効果が実証されつつある。最終年度は霊長類モデルを使った前臨床研究と臨床研究プロトコールの制作を目指す。

公開日・更新日

公開日
2012-08-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201106009Z