自家骨髄間葉系幹細胞により活性化された椎間板髄核細胞を用いた椎間板再生研究における細胞、組織の安全性、品質確保に関する技術開発

文献情報

文献番号
201106003A
報告書区分
総括
研究課題名
自家骨髄間葉系幹細胞により活性化された椎間板髄核細胞を用いた椎間板再生研究における細胞、組織の安全性、品質確保に関する技術開発
課題番号
H21-再生・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
持田 讓治(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 酒井 大輔(東海大学 医学部 )
  • 山本 至宏(東海大学 医学部 )
  • 岩品 徹(東海大学 医学部 )
  • 渡邊 拓也(東海大学 医学部 )
  • 加藤 俊一(東海大学 医学部 )
  • 小林 広幸(東海大学 医学部 )
  • 浅原 孝之(東海大学 医学部 )
  • 安藤 潔(東海大学 医学部 )
  • 中村 雅登(東海大学 医学部 )
  • 波呂浩孝(山梨大学 大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
29,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、腰椎椎間板の変性抑制、再生に対する細胞移植療法の安全性と有効性を検証することである。腰椎椎間板変性疾患で、椎体間固定術施行の隣接椎間板に画像上中等度変性あり例を対象とし、自家骨髄間葉系幹細胞により体外で活性化された自家椎間板髄核細胞を移植し、1)活性化髄核細胞の活性化も含めた品質管理、2)腫瘍化否定のための新技術開発、3)臨床上、画像上の安全性と有効性を検討する。
研究方法
20歳以上30歳未満の腰椎椎間板ヘルニア、分離症、椎間板症の椎体間固定施行の隣接椎間板の画像上変性変化がMRI、単純X線上の基準を満たす例を対象とし、2010年度までの9例に続き2011年度は1例で活性化椎間板髄核細胞移植術が実施された。4日間単培養後、骨髄間葉系幹細胞との細胞間接着を伴う3日間の共培養により髄核細胞の活性化を行い、当該変性椎間板内に1,000,000個を移植した。この工程での上記3項目について研究した。
結果と考察
共培養後の髄核細胞数は2,800,000個、細胞生存率は96,4%、細胞数増加率は2.80倍であり、良好な細胞数増加であった。全工程における無菌試験、マイコプラズマ、エンドトキシン、ウイルス否定試験ともに異常所見は一切なかった。細胞移植後の全身、腰部局所、血液検査上の異常所見はなく、有害事象の発生は一切ないと考えられた。単純X線画像、MRI所見上、術前所見からの改悪所見は認められなかった。最終的細胞数が2,800,000個と多数ではなかったので、腫瘍化否定試験は行わなかった。
結論
本研究シリーズの最終例である症例に対して、骨髄間葉系幹細胞により体外で活性化された椎間板髄核細胞の変性椎間板への移植術が実施され、細胞の活性化工程、手術経過の検討から、他の9例と同様に安全な方法であることが確認された。

公開日・更新日

公開日
2012-06-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201106003B
報告書区分
総合
研究課題名
自家骨髄間葉系幹細胞により活性化された椎間板髄核細胞を用いた椎間板再生研究における細胞、組織の安全性、品質確保に関する技術開発
課題番号
H21-再生・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
持田 讓治(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 酒井 大輔(東海大学 医学部)
  • 山本 至宏(東海大学 医学部)
  • 岩品 徹(東海大学 医学部)
  • 渡邊 拓也(東海大学 医学部)
  • 加藤 俊一(東海大学 医学部)
  • 小林 広幸(東海大学 医学部)
  • 浅原 孝之(東海大学 医学部)
  • 安藤 潔(東海大学 医学部)
  • 中村 雅登(東海大学 医学部)
  • 波呂 浩孝(山梨大学 大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、腰椎椎間板の変性抑制、あるいは再生に対する細胞移植療法の安全性と有効性検証である。腰椎椎間板変性疾患で、椎体間固定術施行の隣接椎間板に画像上中等度変性あり例を対象とし、自家骨髄間葉系幹細胞により体外で活性化された自家椎間板髄核細胞を移植し、1)活性化髄核細胞の活性化も含めた品質管理、2)腫瘍化否定のための新技術開発、3)臨床上、画像上の安全性と有効性を検討する。
研究方法
20歳以上30歳未満の腰椎椎間板ヘルニア、腰椎分離症、腰椎椎間板症例を対象とした。その椎体間固定施行の隣接椎間板の画像上変性変化がMRI、単純X線上の基準を満たす例を対象とし、2009年2月から2011年9月の間に10症例で細胞移植療法が実施された。4日間の単培養後、骨髄間葉系幹細胞との細胞間接着を伴う3日間の共培養により椎間板髄核細胞の活性化を行い、当該変性椎間板内に1,000,000個を移植した。この工程での上記3項目について研究した。
結果と考察
共培養後の髄核細胞数は2.48-11.8X1,000,000個、細胞生存率は90.6-99.0%、細胞数増加率は2.80-6.29倍であり、極めて良好な細胞数増加であった。全工程における無菌試験、マイコプラズマ、エンドトキシン、ウイルス否定試験ともに異常所見は一切認められなかった。超免疫不全NOGマウスを用いたin vivo安全性試験系を作成し、検索された7例全例で1,000,000個/頭の細胞の皮下移植による腫瘍形成は一切見られなかった。細胞移植後の全身、腰部局所、血液検査上の異常所見はなく、有害事象の発生は一切なかった。単純X線画像やMRI所見上、術前所見からの改悪はなく、2例ではMRI上の改善傾向がみられた。以上より本臨床研究計画全体の妥当性が示された。骨髄間葉系幹細胞をfeeding cellとして椎間板髄核細胞を活性化した研究は世界で初めてであり、その意義は大きい。
結論
骨髄間葉系幹細胞により体外で活性化された椎間板髄核細胞の変性椎間板への移植術は、細胞の活性化工程、手術経過の検討から、安全な方法であることが確認され、最長3年までの経過観察では画像上、臨床上ともに有効であった。本研究は国の定めるヒト幹細胞の臨床研究に該当することから、『ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針(平成18年7月制定)』に則り実施された。

公開日・更新日

公開日
2012-06-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201106003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
自家椎間板髄核細胞を体外で自家骨髄間葉系幹細胞との細胞間接着を伴う共培養で活性化する過程が、cell processing center内で事前に策定された方法によって、安全かつ確実に実施することができた。このことは、再生医学を臨床医療に応用する上で、大学や研究所の施設において他の細胞を用いた臨床応用を行う際にも基準とすべきマニュアルを提示したことであり、学術的観点、医療安全の観点から、極めて優れた成果と考えられる。
臨床的観点からの成果
体重の支持とともに脊柱の重要な機能である可動性(関節機能)の温存を意図した活性化椎間板髄核細胞移植術は、脊椎外科の治療法、特に手術療法に対する従来の常識と歴史をくつがえすインパクトを持った新しい治療法の開発といえる。活性化髄核細胞移植術後3年の経過観察で、有害事象は一切生じず、細胞移植を受けた当該椎間板の画像上の変性進行の抑制、改善が見られ、良好な効果と判断される。
ガイドライン等の開発
ガイドラインや審議会で参考とされたという報告はみられない。
その他行政的観点からの成果
脊椎脊髄の手術療法は高額な医療費が計上される場合が多く、医療経済上、大きな問題になりつつある。活性化椎間板髄核細胞移植術は、椎間板変性の進行抑制や再生方向へのシフトが期待され、脊椎疾患の原因の5,6割を占める椎間板変性疾患に対する予防医学的な側面も大きい。細胞にかかわる基礎、橋渡し研究、臨床研究を取り上げているpeer reviewed journalに本研究成果が掲載されたために、今後国際的な観点からも、わが国初の細胞移植療法が注目されると考えられる。
その他のインパクト
2008年2月、毎日新聞全国版夕刊1面など多数のマスコミ媒体で紹介された。
2012年5月、BS朝日放送の「鳥越俊太郎医療の現場・腰痛」(日本医師会提供番組)で活性化椎間板髄核細胞移植術に関して特集の放送が行われた。
2013年5月、NHKスペシャル「病の起源プロローグ-人類進化700万年の宿命」にて、活性化椎間板髄核細胞移植術の放送が行われた。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
31件
学会発表(国際学会等)
12件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sakai D, Nakamura Y, Mochida J, et al
Exhaustion of nucleus pulposus progenitor cells with ageing and degeneration of the intervertebral disc
Nature Communications  (2012)
10.1038/ncomms2226
原著論文2
Mochida J, Sakai D, Nakamura Y, Watanabe T, Yamamoto Y, Kato S.
Intervertebral disc repair with activated nucleus pulposus cell transplantation: A three-year, prospective clinical study of its safety.
European Cells and Materials , Vol. 29 , 202-212  (2015)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2016-01-28

収支報告書

文献番号
201106003Z