革新的医薬品の開発環境整備に向けたレギュラトリーサイエンス研究

文献情報

文献番号
201105009A
報告書区分
総括
研究課題名
革新的医薬品の開発環境整備に向けたレギュラトリーサイエンス研究
課題番号
H23-特別・指定-017
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
川西 徹(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 くみ子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 斎藤 嘉朗(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 関野 祐子(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
22,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品・医療機器は国民の健康に直結する工業製品であり,また医薬品・医療機器産業は知識集約型産業であり,我が国の21世紀の産業基盤として期待されている.そこで,我が国における革新的医薬品・医療機器の開発環境整備のためのレギュラトリ-サイエンス研究として,平成24年度から先端的医薬品・医療機器の評価技術開発研究への重点的な取り組みを開始するが,本研究はその準備となる研究である.
研究方法
(1)革新的医薬品の医療への応用を促進する上で整備が必要とされる規制ガイドラインや評価法の内容の整理;(2)DDS製剤の評価法の研究;(3)医薬品の有効性・安全性評価のためのバイオマーカーの評価・確立のための研究;(4)iPS細胞を用いた医薬品によるヒト特異的有害反応の評価法の研究を実施した.
結果と考察
(1)我が国で世界に先駆けて革新的医薬品を開発するためには,米国FDAや欧州医薬品庁同様に医薬品の開発段階で「開発にあたって考慮すべきポイント」をまとめ,公表するとともに,「ヒト初回試験に先立って明確にしておくべきポイント」をまとめることが望まれること,さらには核酸医薬品,ペプチド性医薬品,高度改変タンパク質性医薬品,DDS製剤について,既存の規制ガイドラインの適用対象との関係から整備が必要とされる評価法等をまとめた;(2)①薬物キャリアの細胞内取り込みおよび細胞内移行評価法を検討し,蛍光標識リポソームを用いた細胞内動態試験法を確立するとともに,②高分子ミセル製剤の評価にあたって考慮すべきポイントをまとめた;(3)①医薬品の評価に用いられるバイオマーカーの評価のためのゲノムDNA試料に関する検討を行い,その保管,調製等の取扱条件を確立し,②さらに血液試料中の生体内内在性代謝物の網羅的解析を行い,血漿と血清間,男女間,およびヒトとラット間での内在性脂質代謝物レベルの違いを明らかにした; (4)①ヒトiPS細胞から分化誘導した心筋細胞の評価,②ヒトiPS細胞から分化誘導した神経細胞の評価 を実施した.
結論
平成24年度から我が国における革新的医薬品開発を推進する上で必要な規制ガイドラインの策定研究を成功させる上で,その基礎となる結果を得た.

公開日・更新日

公開日
2015-06-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201105009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1)今後整備が必要と考えられる規制ガイドラインや評価法についての総合的な考察は,今後レギュラトリーサイエンス研究において克服すべき専門的・学術的課題をも含んだものである;(2) ナノDDS製剤の細胞取り込みおよび細胞内移行評価法研究は,リポソーム製剤を構成する脂質成分の細胞内移行過程を明かにしており,学術的にも価値の高い成果である;(3)血液試料中の内在性脂質代謝成分のメタボローム解析研究では,学術的な視点からも今後の新たな研究を誘因するような男女差,種差等に関する結果を得た.
臨床的観点からの成果
本研究は,(1)ヒト初回臨床試験までに明かにすべき品質関連データ,および非臨床安全性データ,(2)医薬品承認申請時に明かにすべき品質関連データ,および非臨床安全性データ に関する要件およびこれらのデータを得るための試験法の確立・標準化を目指したものであり,研究成果はヒト臨床試験の安全性確保およびヒト臨床使用の際の安全性確保および有害作用予測に必須なものである.したがって,世界に先立ち我が国においてこれらの医薬品の臨床使用を実現するためには必須な内容である. 
ガイドライン等の開発
本研究では,既存の規制ガイドラインがカバーする適用範囲との対比から,整備が必要な規制ガイドラインを考察しており,今後のレギュラトリーサイエンス研究の目標設定のヒントとなる.高分子ミセル製剤の評価にあたって考慮すべきポイントの研究では,国内関係者はもとより,欧州医薬品庁EMAとも意見調整を行っており,研究成果は国際的な技術要件となりうるガイダンス作成に発展する可能性がある.その他のいずれもの研究においても,今後関連規制ガイドライン策定の基盤となる研究成果が得られた.
その他行政的観点からの成果
本研究は平成24年度から本格的に開始する先端的医薬品の評価技術開発研究の実施に先だち,その基礎となるデータを得るために行ったものであり,(1) 先端的医薬品の臨床試験の実施にあたっての条件の明確化とその手法の開発;(2)先端的医薬品候補の医療における有用性・安全性を確認,確保するための評価法開発・標準化;(3)先端的医薬品を承認申請するにあたって考慮すべき要件の明確化および基準の作成 に結びつく
その他のインパクト
本研究を通じて,先端的医薬品を開発するにあたって考慮すべき技術的要件の明確化,およびこれら医薬品の評価法の標準化が行われ,開発環境整備が進む.その結果,世界に先立ち我が国において安全性を確保しつつこれらの先端的医薬品の臨床応用が実現し,国民の健康維持に結びつく.同時に21世紀の産業基盤として我が国における医薬品開発の活発化に結びつく.

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
13件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
川西徹
医薬品の品質を巡る話題 -化学合成医薬品に関わる レギュラトリーサイエンス -
レギュラトリーサイエンス誌 , 2 , 67-73  (2012)
原著論文2
Sakai-Kato K, Nanjo K, Kawanishi T, et al.
Rapid and sensitive meth od for measuring the plasma concentration of doxorubicin and its metabolites
Chem Pharm Bull. , 60 , 391-396  (2012)
原著論文3
Sakai-Kato,K., Ishikura, K., Oshima, Y., et al.
Evaluation of intracellular trafficking and clearanc e from HeLa cells of dox orubicin-bound block copolymers,
Int J Pharm , 423 , 401-409  (2012)
原著論文4
Kurose K, Hiratsuka K, Ishiwata K, et al.
Genome-wide association study of SSRI/SNRI-induc ed sexual dysfunction in a Japanese cohort with m ajor depression.
Psychiatry Res. , 198 , 424-429  (2012)
原著論文5
Maekawa K, Nishikawa J, Kaniwa N, et al
Development of a rapid and inexpensive assay for detecting a surrogate genetic polymorphism of HLA-B*58:01: a partially predictive but useful biomarker for allopurinol-related Stevens-Johnson syndrome/toxic epidermal necrolysis in Japanese.
Drug Metab Pharmacokinet. , 27 , 447-450  (2012)
原著論文6
Sato, K., Kuriwaki, J., Takahashi, K., et al
Discovery of a tamoxifen-related compound that suppresses glial L-glutamate transport activity without Interaction with estrogen receptors.
ACS Chem Neurosci , 3 , 105-113  (2012)
原著論文7
Morizawa, Y., Sato, K., Takaki, J.,et al
Cell-autonomous enhance ment of glutamate-uptake by female astrocytes.
Cell Mol Neurobiol (in press) , 32 (6) , 953-956  (2012)
原著論文8
Takata, F., Dohgu, S., Yamauchi, A., et al
In vitro blood-brain barrier models using brain capillary endothelial cells isol ated from infant and adult rats retain age-related barrier properties.
Plos ONE (in press) , 8 (1) , e55166-  (2012)
原著論文9
Un K., Sakai-Kato K., Oshima Y. et al.
Intracellular trafficking mechanism, from intracellular uptake to extracellular efflux, for phospholipid/cholesterol liposomes
Biomaterials , 33 , 8131-8141  (2012)
原著論文10
Ehmann F., Sakai-Kato K., Duncan R. et al.
Next-generation nanomedicines and nanosimilars: EU regulators’ initiatives relating to the development and evaluation of nanomedicines
Nanomedicine , 8 (5) , 849-856  (2013)
原著論文11
加藤くみ子
ナノ医薬品開発に関する動向
薬学雑誌 , 133 (1) , 43-51  (2013)
原著論文12
Kurose K, Koizumi T, Nishikawa J, et al.
Quality requirements for genomic DNA preparations and storage conditions for a high-density oligonucleotide microarray.
Biol Pharm Bull. , 35 , 1846-1848  (2012)
原著論文13
Ishikawa M, Tajima Y, Murayama M, et al.
Plasma and serum from nonfasting men and women differ in their lipidomic profiles.
Biol Pharm Bull. , 36 , 682-685  (2013)
原著論文14
斎藤嘉朗、前川京子、鹿庭なほ子
日本人を対象にしたゲノム・メタボローム解析によるバイオマーカー探索
Pharmstage , 9 , 1-4  (2012)
原著論文15
黒瀬光一、斎藤嘉朗
ゲノム情報に基づいた副作用予測
日本臨床 , 1026 , 18-24  (2012)
原著論文16
Sakai-Kato K, Hidaka M, Un K, Kawanishi T, Okuda H..
Physicochemical properties and in vitro intestinal permeability properties and intestinal cell toxicity of silica particles, performed in simulated gastrointestinal fluids
Biochim Biophys Acta. , 1840 , 1171-1180  (2014)
原著論文17
Un, K., Sakai-Kato, K,. Kawanishi, T., Okuda, H., Goda, Y.
Effects of liposomal phospholipids and lipid transport-related protein on the intracellular fate of encapsulated doxorubicin
Mol Pharm. , 11 , 560-567  (2014)
原著論文18
Sakai-Kato, K., Un, K., Nanjo, K., et al.
Elucidating the molecular mechanism for the intracellular trafficking and fate of block copolymer micelles and their components
Biomaterials , 35 , 1347-1358  (2014)
原著論文19
Sakai-Kato, K., Nanjo, K., Yamaguchi, T., Okuda, H., Kawanishi, T.,
High performance liquid chromatography separation of monoclonal IgG2 isoforms on a column packed with nonporous particles.
Analytical Methods , 5 , 5899-5902  (2013)
原著論文20
川西 徹
革新的医薬品の開発環境整備を目指したレギュラトリーサイエンス研究
衛研報 , 131 , 2-6  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-06-17
更新日
2016-06-29

収支報告書

文献番号
201105009Z