MDG4・5を達成するための保健システム強化に関する研究

文献情報

文献番号
201103001A
報告書区分
総括
研究課題名
MDG4・5を達成するための保健システム強化に関する研究
課題番号
H21-地球規模・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 健司(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 矢野 晴美(自治医科大学 臨床感染症センター)
  • 池田 奈由(東京大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
7,140,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
MDGs達成と保健システム強化という潮流は、皆保険制度の達成へと焦点がより具体化されてきた。1961年に皆保険制度を達成し、低い医療費ながら公平性を担保しつつ高い保健指標を示してきた我が国の保健医療は、感染症から慢性疾患、そして高齢化を迎えるグローバルヘルスの文脈の中では、大きな示唆を与えるものである。
最終年度の本研究班は、これまでの研究成果をもとに、わが国の健康指標の改善に寄与した因子の分析とグローバルヘルス戦略に関する研究を行い、我が国の過去50年間と今後の保健医療課題を総括し国内外に発信するとともに、我が国のグローバルヘルス関してエビデンスに基づいた提言を行うことを目的とする。
研究方法
グローバル・ヘルスに対する日本のコミットメントの性質と範囲を明らかにするため,個別ではあるが相互に関連する3つの調査方法を用いた。第一に,グローバル・ヘルスの主要な側面,グローバル・ヘルスに対する日本の政策及び国民の支持レベルを特定するため,文献を体系的に調査した。第二に,日本の開発援助について次の機関のデータより記述的分析を行った。最後に,日本のグローバル・ヘルス政策に対する国民の意識について,政府開発援助全般に関する新たな国内世論調査の結果も本調査を補足している。
結果と考察
日本はグローバル・ヘルス(地球規模の保健医療)に関わる取組みを推進,支援する指導的役割を果たしうる立場にある。そのためには、政策策定における政府の縦割り構造は再構成される必要がある。また,同時にグローバル・ヘルスに対するさらなる資金的コミットメントの増加,民間セクターにおける革新的イニシアティブ,研究能力の向上,そしてG8洞爺湖サミットで示されたような強いリーダーシップの育成もなされる必要がある。
さらに、他の多くの国々においても,国民の健康を目指し保健医療革新を続けてきた中で,長年培われてきた知見や知識が存在するが,未だそれを世界的に集約し,体系的に評価し,グローバル・ヘルスの取組みに活用するところにまでは至っていない。行動を起こすのは,今である。
結論
多くの国々が国民皆保険に向かい動き始め ,日本も国内の保健医療制度を維持するにあたり課題に直面する今日,このような戦略策定とコミットメントにより,日本には世界の保健医療の改善に大きく貢献できる可能性がある。
過渡期にあるわが国の保健医療制度を実証的に分析し、国内外に発信することで将来戦略のビジョンを示し、同時に、ランセットという媒体を最大限活用して、わが国のグローバルヘルスにおけるプレゼンスと知的貢献の強化を行うことができた。

公開日・更新日

公開日
2012-06-19
更新日
-

文献情報

文献番号
201103001B
報告書区分
総合
研究課題名
MDG4・5を達成するための保健システム強化に関する研究
課題番号
H21-地球規模・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 健司(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 矢野 晴美(自治医科大学 臨床感染症センター)
  • 池田 奈由(東京大学 大学院医学系研究科)
  • スチュアート ギルモア(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 森 臨太郎(国立成育医療研究センター研究所)
  • モアザム・アリ(世界保健機関)
  • 白山 芳久(東京大学大学院医学系研究科 国際保健政策学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は2008年度のG8洞爺湖サミットでの提言を具現化するために、MDG4・5を達成するための保健システム強化に関する実証的研究を3年間にわたり実施する。具体的には、MDG4・5に不可欠とされる介入のメタ分析、保健システム評価のベンチマーキング、わが国の小児・母体死亡率の改善に対する保健システム、皆保険制度(universal coverage)の分析をもとに、我が国の新たなグローバルヘルス戦略構築を行う。
研究方法
分担研究者は6名である。保健システムアウトプットとしての保健介入のメタ分析は森、白山、アリ(東京大学)が担当する。保健介入の推計には東京大学国際保健政策学助教の池田およびギルモーが担当する。池田は計量経済学専門で各国の官庁調査個票データを用いた保健医療政策評価手法開発に携わってきた。保健システムインパクトとしてのMDG4・5指標の分析と保健システム分析は矢野(自治医大)と渋谷(東大)が行う。
結果と考察
平成21年度は主な実証分析を行い、平成22年度は本研究班からの成果を国内外での学会や会議にて積極的に発表し、複数の英文論文を公表できた。最終年度の本研究班は、これまでの研究成果をもとに、わが国のグローバルヘルス戦略を総括し、将来ビジョンを出すことをその目標に掲げ、皆保険制度50周年の節目に当たる平成23年度に出版されたランセット日本特集号で、わが国の健康指標の改善に寄与した因子の分析とグローバルヘルス戦略に関する論文を掲載し(Ikeda et al. 2011; Liano et al, 2011)、我が国の過去50年間と今後の保健医療課題を総括し国内外に発信するとともに、我が国のグローバルヘルス関してエビデンスに基づいた提言を行うことができた。
グローバルヘルス領域においては、保健システム強化とポストMDGの方向性から、皆保険制度へ焦点が集まっている。1961年に皆保険制度を達成し、低い医療費ながら公平性を担保しつつ高い保健指標を示してきた我が国の保健医療は、グローバルヘルスの文脈の中では、大きな示唆を与えるものである。
結論
本研究は計画通り順調に進捗して、学術的にも国内外に大きなインパクトを与えた。
本研究の成果を活用することで、G8洞爺湖サミットからのわが国のグローバルヘルスにおけるプレゼンスと知的貢献をさらに強化することができると期待される。また、今後は、本研究班の提言を具体化するグローバルヘルス戦略の策定が求められる。

公開日・更新日

公開日
2012-06-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201103001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究班は、3年間の研究成果をもとに、わが国のグローバルヘルス戦略を総括し、平成23年度に出版されたランセット日本特集号においてグローバルヘルス戦略に関する論文を掲載し、我が国の過去50年間と今後の保健医療課題を総括し国内外に発信するとともに、我が国のグローバルヘルスに関してエビデンスに基づいた提言を行うことができた。本研究の成果を活用することで、G8洞爺湖サミットからのわが国のグローバルヘルスにおけるプレゼンスと知的貢献をさらに強化することができると期待される。
臨床的観点からの成果
臨床的観点からの成果は特にないが、国内の臨床も含めた国内に存在する我が国のリソースのグローバルヘルスへの活用を提言した。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
ランセットの本特集号の準備や本研究班の活動を通して、本国内外の専門家集団との連携を通じ知識の共有とネットワークを形成し、我が国における知的・人的貢献のプールを作ることできた点も大きな成果であると考える。また、本研究の成果は、日本と世界銀行との共同研究につながった。
その他のインパクト
ランセット編集部と共催で2度の国際公開シンポジウムを開催し、インターネット中継されるとともに、主要新聞などのメディアに大きく取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
24件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
ランセット日本特集号発刊に伴う国際公開シンポジウムを開催。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Mori R, Khanna R, Pledge D, et al.
A meta-analysis of physiological effects by skin-to-skin contact for newborns and mothers
Pediatrics International , 52 (2) , 161-170  (2010)
原著論文2
Nagai S, Andrianarimanana D, Rabesandratana N, et al.
Earlier versus Later Continuous Kangaroo Mother Care for stable Low-birth-weight Infants: A Randomized Controlled Trial
Acta Paediatrica , 99 (6) , 826-835  (2010)
原著論文3
Mori R, Yonemoto N, Fitzgerald A, et al.
Diagnostic performance of urine dipstick testing in children with suspected UTI: A systematic review of relationship with age and comparison with microscopy
Acta Paediatrica , 99 (4) , 581-584  (2010)
原著論文4
Lumbiganon P, Laopaiboon M, Gülmezoglu AM, et al.
Method of delivery and pregnancy outcomes in Asia: The WHO Global Survey on Maternal and Perinatal Health 2007-08
Lancet , 375 (9713) , 490-499  (2010)
原著論文5
Koyanagi A, Ruff AJ, Moulton LH, et al.
Postpartum plasma CD4 change in HIV-positive women: implications for timing of HAART initiation
AIDS Research and Human Retroviruses , 26 (5) , 547-552  (2010)
原著論文6
Ullman R, Smith LA, Burns E, et al.
Parenteral opioids for maternal pain relief in labour
Cochrane Database of Systematic Reviews , 9  (2010)
原著論文7
Tobe RG, Mori R, Shinozuka N, et al.
Birthweight discordance, risk factors and its impact on perinatal mortality among Japanese twins: data from a national project during 2001-2005
Twin Research and Human Genetics , 13 (5) , 490-494  (2010)
原著論文8
Matsuzaki M, Haruna M, Ota E,et al.
Translation and cross-cultural adaptation of the Pregnancy Physical Activity Questionnaire (PPAQ) to Japanese
BioScience Trends , 4 (4) , 170-177  (2010)
原著論文9
Shiraishi M, Haruna M, Matsuzaki M, et al.
Association between the serum folate levels and tea consumption during pregnancy
BioScience Trends , 4 (5) , 225-230  (2010)
原著論文10
Togoobaatar G, Ikeda N, Ali M, et al.
Survey of non-prescribed use of antibiotics for children in an urban community in Mongolia
Bulletin of the World Health Organization , 88 (12) , 930-936  (2010)
原著論文11
Zhang X, Shirayama Y, Zhang Y, et al.
Duration of maternally derived antibody against measles: A seroepidemiological study of infants aged under 8 months in Qinghai, China.
Vaccine , 30 (4) , 752-757  (2011)
原著論文12
Reich MR, Ikegami N, Shibuya K, et al.
50 years of pursuing a healthy society in Japan
Lancet , 378 (9796) , 1051-1053  (2011)
原著論文13
Kario K, Nishizawa M, Hoshide S, et al.
Development of a disaster cardiovascular prevention network
Lancet , 378 (9797) , 1125-1127  (2011)
原著論文14
Ikeda N, Saito E, Kondo N, et al.
What has made the population of Japan healthy?
Lancet , 378 (9796) , 1094-1105  (2011)
原著論文15
Ikegami N, Yoo BK, Hashimoto H, et al.
Japanese universal health coverage: evolution, achievements, and challenges
Lancet , 378 (9796) , 1106-1115  (2011)
原著論文16
Mori R, Takemi K, Fineberg HV
Science and consensus for health policy making in Japan
Lancet , 379 (9810) , 12-  (2012)
原著論文17
Inoue M, Sawada N, Matsuda T, et al.
Attributable causes of cancer in Japan in 2005--systematic assessment to estimate current burden of cancer attributable to known preventable risk factors in Japan.
Annals of Oncology , 23 (5) , 1362-1369  (2012)
原著論文18
Hosoda M, Inoue H, Miyazawa Y,
Vaccine-associated paralytic poliomyelitis in Japan. (Correspondence)
Lancet , 379 (9815) , 520-  (2012)
原著論文19
Hirayama F, Koyanagi A, Mori R, et al.
Prevalence and risk factors for 3rd and 4th degree perineal laceration during vaginal delivery: A multi-country study.
BJOG , 119 (3) , 340-347  (2012)
原著論文20
Takemoto N, Koyanagi A, Yamamoto H.
Comparison between endoscope-assisted partial mastectomy with filling of dead space using absorbable mesh and conventional conservative method on cosmetic outcome in patients with stage I or II breast cancer.
Surg Laparosc Endosc Percutan Tech , 22 (1) , 68-72  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-05-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201103001Z