妊娠期から行う児童虐待予防のための介入法構築に関する研究

文献情報

文献番号
201101049A
報告書区分
総括
研究課題名
妊娠期から行う児童虐待予防のための介入法構築に関する研究
課題番号
H23-政策・若手-014
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
水主川 純(独立行政法人 国立国際医療研究センター 産婦人科)
研究分担者(所属機関)
  • 松下 竹次(独立行政法人 国立国際医療研究センター 小児科)
  • 新保 卓郎(独立行政法人 国立国際医療研究センター 医療情報解析研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
1,980,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
社会保障審議会の児童虐待による死亡事例に関する報告では、実母の主な問題点として望まない妊娠、妊婦健診未受診が挙げられている。児童虐待予防には、妊娠中から医療機関と関係機関が連携した対応が重要である。本研究は妊娠期から行う児童虐待予防の介入法の構築を目的とした。
研究方法
胎盤病理組織学的所見による妊婦健診未受診に関する問題点、妊婦健診受診回数が1回から5回であった分娩症例の問題点、妊娠中の社会保障制度利用が周産期予後に与える影響、児童相談所への通告と乳児院入所の関連要因、効果的な子育て支援策について検討した。
結果と考察
妊婦健診未受診妊婦の胎盤病理検査所見では絨毛膜羊膜炎の頻度や重症度が高いことが示され、妊婦健診未受診に伴う高度な炎症は胎児虐待の一つとして捉えることができると考えられた。妊婦健診受診回数が1回から5回であった背景には、妊婦健診の初診時期の遅延と不定期受診が影響しており、妊娠中の適切なスクリーニングと治療により予防可能である母子感染の症例を認めた。妊婦健診受診回数が1回から5回であった症例は、日本人妊婦より外国籍妊婦で有意に多かった。妊娠中の社会保障制度の利用開始は妊婦健診の定期受診や周産期管理、保健指導の実施、日常生活の改善に繋がり、周産期予後の向上に寄与することが示唆された。児童相談所への通告の関連要因として、若年、未入籍、児の父親と音信不通、人工妊娠中絶経験、精神疾患などが示された。また、乳児院入所の関連要因として、妊婦健診未受診、NICU入院などが示された。国立国際医療研究センター小児科で取り組んでいる児童虐待の関連要因を認める児に対する新生児期からの継続的な外来フォローアップは、児の発育状況や養育環境の継続的な評価を行うことが可能であり、虐待予防に有用である可能性が示された。介入拒否症例やNICU入院による母子分離のため養育能力の評価が不十分である症例への対応が問題点として挙げられた。効果的な子育て支援策を構築するための前方視的追跡調査を開始した。次年度以降、検証を行う。
結論
定期的な妊婦健診受診を通じ児童虐待を予防するためには、妊娠前からの健康や性に関する教育、行政機関による外国籍妊婦への明解な情報提供、早期かつ確実に社会保障制度へアクセスできる体制の構築が必要であろう。妊娠期から行う児童虐待予防のための介入法の構築に必要な児童相談所への通告や乳児院入所の関連要因が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2012-11-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201101049Z