文献情報
文献番号
201101011A
報告書区分
総括
研究課題名
ダイナミック・マイクロシミュレーションモデルによる所得保障施策の評価・分析に関する研究
課題番号
H22-政策・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
稲垣 誠一(一橋大学 経済研究所)
研究分担者(所属機関)
- 高山 憲之(一橋大学 経済研究所)
- 小塩 隆士(一橋大学 経済研究所)
- 堀 雅博(一橋大学 経済研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
4,760,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ダイナミック・マイクロシミュレーションモデルを用い、日本社会の将来における世帯構造、所得、税・社会保険料負担などについて、世帯・個人単位での政策シミュレーションを実施する。その結果を基に、想定される社会保障制度や税制改革案について、現時点、中長期、超長期における所得分布などに及ぼす効果を定量的に評価し、長期的な視点から、望ましい社会保障政策や税制の改革について検討を行う。
研究方法
既存のモデル(INAHSIM)に機能追加を行い、政策シミュレーションを実施し、公的年金制度を中心に、分配面からの評価を行う。基本的な政策評価は、制度改革によって、貧困率の改善度合い、追加費用の規模、負担と給付の関係から公平性が確保できるかについて検証する。当該モデルでは、初期値人口として個々人の属性を含んだ個票データとともに、個々人の行動を表す遷移確率の想定において質の高いデータが必要である。初期値人口データは、国民生活基礎調査の個票を基礎として、不足している個人属性を統計的に補完したり、他の調査から付加したりして作成する。遷移確率は、様々な統計データやその統計解析結果、理論モデルなどを基礎とし、ディープなパラメータにて、シミュレーションを実施する。
結果と考察
成果は主に、初期値人口データに関する研究、遷移確率に関する研究、モデルの構築、政策シミュレーション、の4つに大別される。これらの結果を踏まえ、マクロ経済スライドや既裁定者物価スライドを基礎年金に適用しない方式等の改革案の提案とその政策評価を行った。これらの新しい改革案は、高齢期の貧困リスクの低減効果は顕著であること、公私の役割分担の見直しが今後の超高齢社会に対応するための有効な方策になりうること等を示した。
結論
ダイナミック・マイクロシミュレーションモデルは、所得保障施策の評価・分析に極めて有効なツールであることが明らかになった。ただし、政策シミュレーションに当たっては、モデルの開発のみならず、初期値人口データの作成と検証、様々な個々人の行動を表す遷移確率の想定が必要不可欠であり、多くの分野の研究者の共同研究が重要である。また、社会保障・税一体改革に関する政府の検討は、検証が必ずしも十分ではないことから、今後は、政府自身がダイナミック・マイクロシミュレーションモデルの構築に取り組み、分配面からの評価を踏まえた政策の企画立案能力を高めていくことが必要である。
公開日・更新日
公開日
2012-11-02
更新日
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