文献情報
文献番号
201101001A
報告書区分
総括
研究課題名
東アジアの家族人口学的変動と家族政策に関する国際比較研究
課題番号
H21-政策・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 透(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究分担者(所属機関)
- 伊藤 正一(関西学院大学 国際学部)
- 小島 宏(早稲田大学 社会科学総合学術院)
- 菅 桂太(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
東アジアの出生力低下は突出して進行し、晩婚化・未婚化と離婚率の上昇が観察される一方、同棲と婚外出生の増加は非常に緩慢である。世帯規模の縮小と世帯構造の多様化も進行しているが、北西欧や北米とはまだかなりの差がある。また離家を含む成人移行の遅れは南欧に類似するが、国際結婚や外国人労働者の増加は南欧と比べてもまだ低い水準にとどまっている。こうした東アジアの家族変動、特に出生率とそれ以外の側面の不均衡は、今後の家族人口学的変動と家族政策の展開を考える上で非常に重要な意味を持つ。
研究方法
研究は文献・理論研究、データ分析、将来予測の三段階で進行される。文献・理論研究では、東アジアの家族人口学的変動とその社会経済的要因、および家族政策に関する情報を収集・分析する。データ分析では、東アジアを中心にマクロデータとマイクロデータを収集し、各国における家族人口学的変動の要因と政策的対応、その有効性に対する分析を行う。将来予測では東アジアの人口・世帯・家族に関する将来推計を収集し、必要であれば独自に推計を実施する。それを通じて、今後の家族人口学的変動と家族政策の展開における東アジア的特徴について考察する。
結果と考察
韓国・台湾の出生率が日本より低い水準まで低下した理由は、儒教的家族パターンがポスト近代的社会・経済システムとの間で大きな齟齬を来したためと考えられる。経済の成熟に伴う低成長と若年労働市場の悪化、人的資本投資の重要性の増大、女性の労働力参加と伝統的性役割の衰退といったポスト近代的変化に対し、儒教的家族パターンはヨーロッパや日本の家族パターンより耐性が弱い。特に台湾の出生力低下は、公的部門と家族部門におけるジェンダー関係の乖離が原因となっている可能性がある。
結論
儒教圏の極端な低出生力がこうした文化的基層に根差すものである場合、日本との格差は長期間維持されることが予想される。出生促進策の即効性は乏しいが、重要なのは子どもが生まれれば十分な社会的支援が得られるというメッセージを出し続けることである。この点で東アジアの出生促進策は不十分な水準で、特に経済的支援と保育サービスの供給は国民が安心できる水準からほど遠い。
公開日・更新日
公開日
2012-11-02
更新日
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