文献情報
文献番号
201036018A
報告書区分
総括
研究課題名
健康危機管理事態において用いる医学的対処の研究開発環境に関する研究
課題番号
H21-健危・一般-013
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
竹内 勤(慶應義塾大学 医学部熱帯医学寄生虫学)
研究分担者(所属機関)
- 明石 真言(独立行政法人放射線医学総合研究所緊急被ばく医療研究センター)
- 近藤 久禎(独立行政法人国立病院機構災害医療センタ ー(臨床研究部))
- 見理 剛(国立感染症研究所細菌第二部)
- 西條 政幸(国立感染症研究所ウイルスI部)
- 川上 浩司(京都大学大学院医学研究科医学部薬剤疫学分野)
- 黒木 由美子((財)日本中毒情報センターつくば中毒110番)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
4,745,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
健康危機管理事態に対する医学的対処の事前準備は、被害軽減のために不可欠である。テロ対抗医薬品は,研究・開発・生産・供給・使用の各過程において,一般医薬品とは異なる課題があり、研究開発・供給スキームの構築は国際的に協調して取り組むべき課題である。本研究は、準備を検討すべきテロ対抗医薬品をリスト化し、これらの質・量・供給を確保するシステムの検討を行い,健康危機管理行政の向上に資する提言を行う。
研究方法
主に文献的調査により日英米のテロ対抗医薬品の承認、備蓄、未承認医薬品アクセス、医薬品開発制度に関してギャップ分析研究を実施した。化学剤拮抗剤を中心に、病院の準備状況のアンケート調査および未承認薬の早期承認要望申請後評価を実施した。放射性核種の体内汚染治療薬、ボツリヌス毒素およびウイルス性出血熱・天然痘に対する医薬品の現状調査を実施した。
結果と考察
ハザードリストと日英米の対抗医薬品の準備状況の比較対照表を作成した。緊急時の未承認品を含む医薬品アクセスは、日本ではコスト面、副作用等発生時の責任面、供給配布体制が不十分である。英国の薬事法上の例外規定、Patient Group Directionsや輸入制度、米国のEUA制度等の事例を参考として制度設計を最終年度に検討する。病院の医薬品準備状況は、剤によっては災害拠点病院ですら集団災害での対応は現実的でない備蓄だった。保有率が低い理由、流通在庫の状況はさらなる調査が必要である。承認要望品については、承認や国内開発企業の決定など進展があった。しかし市場の見通しが立たず、用途が限られる医薬品の市場形成方策が承認後の安定供給の課題として提示された。ボツリヌス症は国有抗毒素の備蓄の増産、7価型トキソイドの開発が現実的な対応方策である。備蓄形成費用は、調達量を、1000~10000本程度として、抗毒素で1000~7000万円程度、トキソイドは未承認薬として調達した場合で6億~60億円程度、新規トキソイド開発は、2~3年程度で数百万円から数千万円程度と見積もられた。また、天然痘・ウイルス性出血熱の抗ウイルス剤およびワクチン開発の進展状況が一覧化された。
結論
東北関東大震災後の原発事故により、安定ヨード剤およびセシウム除染剤の準備、使用が検討される事態に至った。危機管理関連の医薬品の国家備蓄体制やその供給体制の構築は平時から行うべきものである。テロ対抗医薬品の市場形成、薬事に関連する制度設計の検討が喫緊の課題と改めて認識された。
公開日・更新日
公開日
2011-09-05
更新日
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