シックハウス症候群の診断基準の検証に関する研究

文献情報

文献番号
201036015A
報告書区分
総括
研究課題名
シックハウス症候群の診断基準の検証に関する研究
課題番号
H21-健危・一般-010
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
相澤 好治(北里大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 小倉 英郎(国立病院機構 高知病院)
  • 木村 五郎(南岡山医療センター)
  • 熊野 宏昭(早稲田大学 人間科学)
  • 坂部 貢(東海大学 医学部)
  • 中村 陽一(横浜市立みなと赤十字病院)
  • 長谷川眞紀(国立病院機構 相模原病院)
  • 森  千里(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 吉野 博(東北大学 大学院工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
8,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
シックハウス症候群(SHS)患者について、全国レベルでSHS診療専門医療機関受診者を対象に、診断基準や臨床分類の妥当性について把握するため疫学調査を行い検証し対策を提言した。
研究方法
SHSの診断基準と臨床分類の妥当性を検証するため調査票を作成し、全国のSHS専門医療機関のうち11機関の受診者を対象に疫学調査を行った。調査票は主治医用の臨床診断と検査所見、患者用の自覚症状、症状発生要因、建物内空気質汚染評価などからなり自記式質問票を用いて調査した。協力医療機関に調査票を配布し、回収された調査票のデータは、個人情報等を連結可能匿名化した上集計し、解析・考察を行った。
結果と考察
患者の主訴は、脳・神経系の頭痛、循環器・呼吸器系の咳、呼吸困難・息苦しさ、皮膚・粘膜の眼症状であった。対象者287人のうち、主治医が広義のSHSと診断したのは218人(76.0%)であり、このうち191人(87.6%)が2型(副分類あり含む)と診断された。広義SHSのうち狭義のSHS診断基準該当者と判定されたのは96人(50.3%)であった。2型以外で、本診断基準に該当しない者は19人(70.4%)であり、感度は低いが特異度は高いと考えられた。したがって診断基準に加えて、狭義SHSの定義に記載されているように、臨床検査結果などにより他の疾患を鑑別して狭義のSHSを判定する必要性が示唆された。
調査票から得られた室内環境測定の結果、環境測定をした広義のSHSの2型対象者は51人であったが、このうち環境測定結果が指針値を超えたのは20人(39.2%)であった。感度と特異度はそれぞれ41.3%と80.0%であり、SHS診断の補助として利用できる可能性が示唆された。       
診断基準の一つである室内環境測定の結果は、2型診断の根拠となりうるが、環境汚染がなくても2型と診断されている例も多く、他の診断基準項目を主体的に用いた上で、補助的に考慮すべきであることが示唆された。
結論
狭義のSHS診断基準は、特異度は高かったが感度は低い結果であった。臨床分類2型の中に、狭義SHS以外の病態が混在している可能性もあるが、診断基準のみではなく、定義の項目も配慮して医師が判定することが必要であると考えられた。室内環境測定の異常も同様に、感度は低かったが、特異度は高く、補助診断項目として、診断基準に入れる妥当性はあると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-07-22
更新日
-

文献情報

文献番号
201036015B
報告書区分
総合
研究課題名
シックハウス症候群の診断基準の検証に関する研究
課題番号
H21-健危・一般-010
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
相澤 好治(北里大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 小倉 英郎(国立病院機構高知病院)
  • 木村 五郎(南岡山医療センター)
  • 熊野 宏昭(早稲田大学 人間科学学術院)
  • 坂部 貢(東海大学 医学部)
  • 中村 陽一(横浜市立みなと赤十字病院)
  • 長谷川眞紀(国立病院機構 相模原病院)
  • 森  千里(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 吉野 博(東北大学 大学院工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
シックハウス症候群(SHS)には、アレルギーなど既知の疾患と機序未解明である狭義のSHSが含まれるため適切な診療が困難である。前回の研究で4つの臨床分類と狭義SHSの定義および診断基準が示されたことから、本研究では全国レベルで疫学調査を行ない、発症の要因に化学物質曝露の可能性がある臨床分類2型を狭義SHSの診断基準を用いて診断できるか検証することを目的とした。また、室内環境測定がSHS診断の補助となり得るかを検討した。
研究方法
班会議において議論を重ね有効な調査票を作成し調査を開始した。調査票は主治医用の臨床診断と検査所見、患者用の自覚症状、症状発生要因、室内空気質汚染評価などからなり、自記式質問票を用いて調査した。協力医療機関には調査票を配布し、回収された調査票のデータは、個人情報等を連結可能匿名化した上集計し、解析・考察を行った。また、2年目調査では診断における室内環境測定の重要性を検討するため、室内環境測定が追加された。同意の得られた対象者については、症状と関連すると考えられる建物の室内環境測定を実施した。
結果と考察
H21年度の調査において、患者の問診票から狭義のSHS診断基準に当てはまった対象者の93%が、主治医にも狭義のSHS(2型)と診断されており、診断基準の有効性が示唆されたが、診断基準に当てはまらない対象者の54%も2型と診断され、診断基準以外の診断根拠の可能性も考えられた。H22年度では、主治医が広義のSHSと診断したのは76.0%であり、このうち87.6%が2型と診断された。広義SHSのうち2型で狭義のSHS診断基準該当者と判定されたのは50.3%であった。2型以外で、本診断基準に非該当者は70.4%であり、感度は低いが特異度は高いと考えられた。従って、他の疾患を鑑別して狭義のSHSを判定する必要性が示唆された。調査票から得られた室内環境測定の結果、広義のSHSの2型対象者のうち、指針値を超えたのは39.2%であった。感度と特異度はそれぞれ41.3%と80.0%であり、SHS診断の補助として利用できる可能性が示唆された。
結論
狭義のSHS診断基準は、特異度は高かったが感度は低い結果であった。臨床分類2型の中に、狭義SHS以外の病態が混在している可能性もあるが、診断基準のみではなく、定義の項目も配慮して医師が判定することが必要であると考えられた。室内環境測定の異常も同様に、感度は低かったが、特異度は高く、補助診断項目として、診断基準に入れる妥当性はあると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-07-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201036015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
対象症例の均質化により、本症候群の客観的な診断方法を開発し、検証する上で役立つと考えられる。同様に生活指導、治療上の効果判定や予後判定においても臨床疫学調査の基盤を提供しうる。さらに、室内空気環境測定を実施することによりSHS診断の補助として有効で有ることが示唆された。
臨床的観点からの成果
臨床面においては、提案されているSHSに関する診断基準と臨床分類が適切で汎用性のあるものとして確立されば、全国の研究・医療機関に、統一した診断基準を提供することができ、専門医ならず一般医にも周知される。また、本調査票の検証から問診票が確立されれば、SHSの客観的診断方法として全国の医療機関に提供することができる。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
本研究で提案した診断基準と臨床分類が確立されれば、全国の研究・医療機関に統一した診断基準と問診表を提供することができ、実態を正確に把握することが可能となり、SHSの予防および診療に関わる厚生労働行政施策の策定に寄与することが期待できる。個別的には、診療が適切に行われ、公営住宅への優先入居の判断において、適切にSHSを診断する根拠となり、厚生労働行政に寄与すると考えられる。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Miyajima, E., Kudo, Y., Ishibashi, M. et al.
Classification with detailed criteria for sick house syndrome which help to determine chemically affected patients.
Kitasato Med.J. , 39 (1) , 31-43  (2009)
原著論文2
Hojo S.,Sakabe K., Ishikawa S. et al.
Evaluation of subjective symptoms of Japanese patients with multiple chemical sensitivity using QEESI.
Environ Health Prev. Med. , 14 (5) , 267-275  (2009)
原著論文3
吉野博、中村安季、池田耕一
シックハウスにおける室内環境と居住者の健康に関する調査研究 -その1 宮城県内の62軒の住宅における調査結果-
日本建築学会環境系論文集 , 641 , 803-810  (2009)
原著論文4
吉野博、中村安季、安藤直也
シックハウスにおける室内環境と居住者の健康に関する調査研究(その2)宮城県内の30軒を中心とした住宅における長期継続観察
日本建築学会環境系論文集 , 654 , 705-712  (2010)

公開日・更新日

公開日
2017-08-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201036015Z