文献情報
文献番号
201036007A
報告書区分
総括
研究課題名
磁界の生体への影響とその機構の解明
課題番号
H20-健危・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
久保田 俊一郎(東京大学 大学院総合文化研究科)
研究分担者(所属機関)
- 奥野 誠(東京大学 大学院総合文化研究科 )
- 村越隆之(埼玉医大医学部)
- 深津晋(東京大学 大学院総合文化研究科 )
- 梅景正(東京大学 環境安全本部)
- 牛山明(国立保健医療科学院 生活環境部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
6,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
厚生労働行政の課題として、低周波磁界(送電線,家電など)曝露のヒトへの健康影響(発癌性、妊産婦とその児への影響、脳への影響)が挙げられる。本研究は、低周波、高周波磁界曝露による発癌性、脳神経系への影響、生殖系への影響を明らかにするため、文献調査および実験的研究を行なうことを目的とする。
研究方法
文献調査の方法: 超低周波ならびに、高周波の電磁界の生体影響について、研究論文を各種データベースより抽出した。対象とする論文は、インパクトファクターが1.0 以上の雑誌に掲載されたものとした。今年度は、細胞実験および動物実験における文献を検討した。生活環境レベル (50Hz, 40μT)および、その10倍の磁束密度400μTの磁界強度について、細胞レベルおよび動物レベルで実験を実施した。細胞レベル:低周波磁界の細胞増殖への影響および活性酸素発生への影響を種々の培養細胞を用いて解析した。動物レベル:磁界曝露ラットの脳スライスを用いて、電気生理実験で脳神経系への影響を解析した。生殖系への影響は、オスマウスを用いた低周波曝露実験で精子への影響(精子密度、精子運動率)を解析した。また、妊娠マウスを磁界曝露し、胎児の生死、奇形の有無および母獣への影響で評価した。
結果と考察
文献調査では、「影響なし」の論文が多く見られた一方で、超低周波磁界、高周波磁界ともに、「影響あり」の論文も散見されたが、多くはガイドラインを大きく越える曝露条件であり、現時点では生活空間の電磁界強度が健康リスクを発生するという明確な根拠はみられないと考えられた。細胞レベルの実験では、細胞増殖への影響を解析したが、顕著な影響はなかった。発癌の1つの要因と考えられている活性酸素発生の観点からも解析したが、影響はなかった。電気生理学的実験では、磁界曝露ラット脳で、対照群との有意差は見られなかった。妊娠マウスの曝露実験では、胎児の生死、奇形の有無および母獣への影響で評価したが、影響は見られなかった。低周波磁界がオスマウスの生殖機能に及ぼす影響について検討したが、精巣上体に出現した精子密度、精子運動率ともに有意な差は見られなかった。
結論
文献調査では、現時点では居住(生活)空間の電磁界強度が健康リスクを発生するという明確な根拠はみられないと考えられた。
実験的研究では、生活環境レベル (50Hz, 40μT)および、その10倍の磁束密度400μTの磁界強度の曝露は、細胞増殖、活性酸素発生、生殖能(妊娠マウスと胎児)、精子形成、脳神経系機能に関して影響はないと考えられる。
実験的研究では、生活環境レベル (50Hz, 40μT)および、その10倍の磁束密度400μTの磁界強度の曝露は、細胞増殖、活性酸素発生、生殖能(妊娠マウスと胎児)、精子形成、脳神経系機能に関して影響はないと考えられる。
公開日・更新日
公開日
2011-07-22
更新日
-