水の摂取・利用が健康障害の予防及び健康増進効果に及ぼす影響について

文献情報

文献番号
201036006A
報告書区分
総括
研究課題名
水の摂取・利用が健康障害の予防及び健康増進効果に及ぼす影響について
課題番号
H20-健危・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 芳照(東京大学 大学院教育学研究科(研究院))
研究分担者(所属機関)
  • 長岡 裕(東京都市大学 工学部)
  • 福島 美穂(水と健康スポーツ医学研究所)
  • 高杉 紳一郎(九州大学病院 リハビリテーション部)
  • 上岡 洋晴(東京農業大学 地域環境科学部)
  • 岡田 真平(身体教育医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、水の摂取・利用という観点から、国民の健康づくりに資する実践的な科学的知見と教育・啓発資材を提示することを目的とした。
研究方法
過去2年間に4つの手法を用いて取り組んだ3つの具体的な研究課題、「水道設備に関する調査研究」、「水分の摂取不足に伴う健康障害・事故に関する文献調査」、「水中運動の効果に関する文献調査」、「水中運動の効果に関する実験研究」の研究成果から得られた科学的知見を基に、一般社会向けの教育・啓発冊子『水と健康・安全の手引き』の編集・構成を行った。また、編集・構成作業の途中で、学校保健関係者及び水道行政関係者を対象に、内容に関する意識調査を行った。
結果と考察
「子ども編」に関わる意識調査では、熱中症の危険性と水分摂取の重要性の指導・認識が十分でなかった学校保健関係者が多く、児童・生徒へのそれらの教育・啓発の必要性が高いことが示された。また、学校保健関係者、水道行政関係者ともに、水道水の意義を改めて認識し、その飲水を啓発すること及び水質の改善を必要とする者が多いことが示された。
「中高年編」に関わる意識調査では、水分摂取が重要だと考えるものの、重大事故のリスクとの関連について正しい知識が十分ではないことがわかった。また、水中運動・水中歩行に関心はあるがその利点について必ずしも十分な知識がないことが示された
これらをふまえて、強調、増強すべき点などを考慮して、編集・構成・表現上の工夫を行い、水道設備に関する調査研究成果の教育・啓発、水分の摂取不足に伴う健康障害・事故に関する文献調査成果の教育・啓発、水中運動の効果に関する文献調査成果の教育・啓発、水中運動の効果に関する実験研究成果の教育・啓発のための要点を整理した。これらの編集・構成作業をふまえ、72ページにわたる一般社会向けの教育・啓発冊子『水と健康・安全の手引き』(パワーポイントCD-ROM付き)として完成した。
結論
過去2年間に4つの手法を用いて取り組んだ3つの具体的な研究課題をふまえて、一般社会向けの教育・啓発冊子『水と健康・安全の手引き』(パワーポイントCD-ROM付き)を作製した。これは国民の水と健康・安全に関わる正しい健康情報の普及、ひいては水と健康・安全に関わる厚生労働行政に資するものである。

公開日・更新日

公開日
2011-07-22
更新日
-

文献情報

文献番号
201036006B
報告書区分
総合
研究課題名
水の摂取・利用が健康障害の予防及び健康増進効果に及ぼす影響について
課題番号
H20-健危・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 芳照(東京大学 大学院教育学研究科(研究院))
研究分担者(所属機関)
  • 長岡 裕(東京都市大学 工学部)
  • 福島 美穂(水と健康スポーツ医学研究所)
  • 高杉 紳一郎(九州大学病院 リハビリテーション部)
  • 上岡 洋晴(東京農業大学 地域環境科学部)
  • 岡田 真平(身体教育医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、水の摂取・利用という観点から、国民の健康づくりに資する実践的な科学的知見と教育・啓発資材を提示することを目的とした。
研究方法
【研究1:水道設備に関する調査研究】小学校における直結給水工事に伴う変化、全国の小学校の給水方式の現状、児童の水分摂取の手段とその影響因子に関する調査を行った。
【研究2:水分の摂取不足に伴う健康障害・事故に関する文献調査】新聞記事と判例が検索できるデータベースで、子どもと中高年の水分不足に伴う事故の記事を収集・整理した。
【研究3A:水中運動の効果に関する文献調査】水中運動の効果に関する文献調査によりレビューを行い、エビデンスの整理と、それぞれの研究の質を評価した。
【研究3B:水中運動の効果に関する実験研究】若年者と中高年者を対象に、水中での前方歩行、側方歩行時の生理学的、運動学的特性を比較する実験を行った。
【教育・啓発資材の作製】前述の調査研究の結果により得られた科学的知見を基に、教育・啓発冊子の編集・構成を行った。作業途中で、関係者を対象に意識調査を実施した。
結果と考察
研究1から、学校における直結給水工事の必要性と、水道水に対する学校の意識を変える必要性が示唆された。
研究2から、水分不足によるとみなされる運動・スポーツや温泉・入浴、飲酒に伴う重大事故は、無理と無知が背景にあると考えられた。
研究3Aから、ランダム化比較試験のシステマティック・レビューのメタ分析の結果から、運動器疾患において水中運動は、小さいながらも疼痛の軽減効果が示された。
研究3Bから、若年者より中高年者で負荷が高く、中高年の水中歩行実施時には、主観的な感覚だけに頼り過ぎると、運動強度が過度になることに注意すべきことが示唆された。
「子ども編」「中高年編」に関わる意識調査から、関係者に正しい知識が十分でないこと、水の摂取や利用に関する教育・啓発の必要性が高いこと等が示され、それらが増強・強調されるような編集・構成・表現上の工夫を行った。
結論
4つの手法を用いて取り組んだ3つの具体的な研究課題をふまえて、一般社会向けの教育・啓発冊子『水と健康・安全の手引き』(パワーポイントCD-ROM付き)を作製した。これは国民の水と健康・安全に関わる正しい健康情報の普及、ひいては水と健康・安全に関わる厚生労働行政に資するものである。

公開日・更新日

公開日
2011-07-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201036006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
主観的評価の入りやすいヒトを対象とした研究のレビューを、客観的論文評価法であるシステマティック・レビューの手法を用いて、総合的網羅的に世界の研究を収集評価したことで、世界の研究成果や動向を的確にとらえることができた。また、動向評価のみでなく実験研究を同時に実行して、これまで学術的知見の少なかった水中運動の分野に指導実践に資する新たな知見を導入できたことは学術的に意義深い。
臨床的観点からの成果
水中運動は運動器に負担が少ない一方運動効果が高いとして、特に中高年の運動処方の一つとして注目されている。しかし、具体的な実験データが少なく、運動指導の現場で水中運動を実施する際に参考にできる研究が少ないという問題もある。本研究では、これまで知見がない水中での側方歩行の特性を前方歩行との比較により明らかにした。乳酸濃度や心拍数・血圧などの生理指標と主観的な苦しさの指標を比較検討することで、指導現場に直接応用できる研究成果となった。
ガイドライン等の開発
水の摂取・利用が健康障害の予防及び健康増進効果に及ぼす影響についての、教育・啓発冊子の編集・構成を行った。子ども編と中高年編に分けて編集することで、細かくニーズに合わせた内容を盛り込むことが出来た。また、作成過程で、学校保健関係者や水道行政関係者への調査データも収集し実態をつかむとともに、強調すべき点や表現方法の工夫などに反映させた。調査により明らかとなった現場の声を反映させたことで、より緊急かつ現場で求められる情報を盛り込むことができた。
その他行政的観点からの成果
水道整備に関する調査研究により得られたデータから、小学校における給水設備・給水管の老朽化の実態が明らかとなった。また、児童の健康を配慮した学校側の指導、父母、保健所、教育委員会の指導の影響で児童の水摂取の状況が変わる事が示された。さらに、水筒持参の学校では、学校の水道水の質向上に対して消極的であることがわかり、水道水に対す学校の意識を変える必要がある事が示された。
その他のインパクト
食品栄養ほどは注目されることのない水の摂取と、陸上運動ほどピックアップされることのない水中運動の生理学に関して、これほど網羅的・多面的・総合的にアプローチした研究はなく、このプロジェクトが3年間連携を取りながら達成されたことだけでも評価に値する。と同時に、水という我々の生活に近すぎて見過ごしがちな健康因子に対して、家庭・行政・学校・研究(大学など)が一体となって調査研究・実践していかなければならないことが示された。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
山村尊房,藤野雄太,長岡裕
小学校における児童の水分補給指導と直結給水システムの導入状況
環境システム研究論文集 , 38 , 179-184  (2010)
原著論文2
Kamioka H, Tsutani K, Okuizumi H, et al.
Effectiveness of aquatic exercise and balneotherapy: a summary of systematic reviews based on randomized controlled trials of water immersion therapies
J Epidemiol , 20 , 2-12  (2010)
原著論文3
上岡洋晴,栗田和弥,鈴木英悟,他
温泉の効果に関するエビデンスの整理と健康づくりを中心としたレジャーへの応用
身体教育医学研究 , 11 , 1-11  (2010)
原著論文4
Kamioka H, Tsutani K, Mutoh Y, et al.
A Systematic review of non-randomized controlled trials on curative effects of aquatic exercise
Int J General Med , 4 , 239-260  (2011)

公開日・更新日

公開日
2017-08-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201036006Z