災害対策における要援護者のニーズ把握とそれに対する合理的配慮の基準設定に関する研究

文献情報

文献番号
201036002A
報告書区分
総括
研究課題名
災害対策における要援護者のニーズ把握とそれに対する合理的配慮の基準設定に関する研究
課題番号
H20-健危・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
河村 宏(特定非営利活動法人 支援技術開発機構 事務局 研究開発課)
研究分担者(所属機関)
  • 宇田川 真之(財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構 事務局 研究開発課)
  • 八巻 知香子(国立がんセンターがん対策情報センター  がん情報・統計部 )
  • 間宮 郁子(特定非営利活動法人 支援技術開発機構 事務局 研究開発課)
  • 清水 里香(社会福祉法人 浦河べてるの家)
  • 関口 由彦(特定非営利活動法人 支援技術開発機構 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,005,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大規模災害の発災から長期避難生活移行までの期間に災害時要援護者が必要とする配慮事項とその対応方法を事前に見出し、過度の負担なく対応可能な配慮(合理的配慮)の積み重ねによる地域生活の安心安全の向上のために、災害時要援護者も含むすべての住民が参加する防災活動の手順と要点をマニュアルとしてまとめ、人命被害を防止することを研究目的とする。
研究方法
北海道浦河町において実施してきた災害時要援護者自身の自主的な津波避難訓練活動を町内の防災活動と連携させるために「合同防災会議」を設けた。要援護者も参加する日常的な防災訓練と被災地の経験から学ぶ企画の蓄積と共に、精神障害、妊娠中、小さな子供を含む家族連れ等の課題を持つ住民も参加して、一泊の避難生活シミュレーションを実施した。2010年チリ津波においては訓練を活かした避難が実行された。日本精神障害者リハビリテーション学会浦河大会シンポジウム「障害者と防災―地域のつながりを再生する機会としてー」には合同防災会議で調整して報告を行った。3年次には、中越、高知市等との比較研究、アイヌ民族との地域におけるつながりも視野に入れて、研究から得た知見を国内外で検証する準備を進めた。
結果と考察
日本精神障害者リハビリテーション学会が精神障害者の防災を「地域とのつながり」を作る機会として考え始めたことは浦河での取り組みが各地で検証される可能性を開いた。研究期間終了直前の東日本大震災による津波に対する訓練に参加してきた浦河町住民の的確な避難行動は、これまでの浦河町における避難訓練の有効性を示すものと考える。特に精神障害者を中心とする浦河べてるの家のメンバーによる的確な避難行動は、災害時要援護者が地域と連携した自らの訓練活動によって避難行動の模範となり、地域の防災活動の主体となりうることを示唆している。
結論
研究から得た知見をまとめた住民向けの防災活動マニュアル(案)は、防災活動への参加に必要な情報アクセスにおいて様々な困難を抱える住民のニーズと東日本大震災被災地域の限定された情報チャンネルとを考慮して、絵と短く平易な文章で構成した絵入リーフレットと、すべてを文章だけで表現したテキスト版の二つの形式で作成した。災害時要援護者も含むすべての住民が参加する防災活動の要点とそれを実現する手順を示すこのマニュアルの有効性が各地で検証され、改良されて、地域の防災の取り組みに貢献することを期待する。

公開日・更新日

公開日
2011-09-05
更新日
-

文献情報

文献番号
201036002B
報告書区分
総合
研究課題名
災害対策における要援護者のニーズ把握とそれに対する合理的配慮の基準設定に関する研究
課題番号
H20-健危・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
河村 宏(特定非営利活動法人 支援技術開発機構 事務局 研究開発課)
研究分担者(所属機関)
  • 八巻 知香子(国立がんセンターがん対策情報センター  がん情報 統計部 )
  • 間宮 郁子(特定非営利活動法人 支援技術開発機構 事務局 研究開発課 )
  • 清水 里香(社会福祉法人 浦河べてるの家)
  • 関口 由彦(特定非営利活動法人 支援技術開発機構 事務局 研究開発課)
  • 宇田川 真之(財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大規模災害の発災から長期避難生活移行までの期間に災害時要援護者が必要とする配慮事項とその対応方法を事前に見出し、過度の負担なく対応可能な配慮(合理的配慮)の積み重ねによる地域生活の安心安全の向上のために、災害時要援護者も含むすべての住民が参加する防災活動の手順と要点をマニュアルとしてまとめ、人命被害を防止することを研究目的とする。
研究方法
北海道浦河町において実施してきた災害時要援護者自身の自主的な津波避難訓練活動を町内の防災活動と連携させるために「合同防災会議」を設けた。要援護者も参加する日常的な防災訓練と被災地の経験から学ぶ企画の蓄積と共に、精神障害、妊娠中、小さな子供を含む家族連れ等の課題を持つ住民も参加して、一泊の避難生活シミュレーションを実施した。2010年チリ津波においては訓練を活かした避難が実行された。日本精神障害者リハビリテーション学会浦河大会シンポジウム「障害者と防災―地域のつながりを再生する機会としてー」には合同防災会議で調整して報告を行った。国際的には、ESCAP、ITU、ICTA、DAISYコンソーシアム等の国際団体と連携して交流を進めながら研究を進めた。
結果と考察
日本精神障害者リハビリテーション学会が精神障害者の防災を「地域とのつながり」を作る機会として考え始めたことは浦河での取り組みが各地で検証される可能性を開いた。研究期間終了直前の東日本大震災による津波に対する訓練に参加してきた浦河町住民の的確な避難行動は、これまでの浦河町における避難訓練の有効性を示すものと考える。特に精神障害者を中心とする浦河べてるの家のメンバーによる的確な避難行動は、災害時要援護者が地域と連携した自らの訓練活動によって避難行動の模範となり、地域の防災活動の主体となりうることを示唆している。
結論
精神障害者の自助の可能性を含む地域の防災活動研究から得た知見をまとめた住民向けの防災活動マニュアル(案)は、災害時要援護者も含む住民が読むことを想定して、絵と短く平易な文章で構成した絵入リーフレットと、すべてを文章だけで表現したテキスト版の二つの形式で作成した。すべての住民が参加するための要点とそれを実現する手順を示すこのマニュアルは、これから国内外でその有効性が検証され必要な改良が行われる。その際に、知識とコミュニケーションの共有を支える情報と交通のアクセシビリティーの向上が地域防災活動の成功の要件であることに留意が必要である。

公開日・更新日

公開日
2011-07-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201036002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
災害時要援護者の概念を精査し、合理的配慮による防災活動の参加が保障されれば、要援護者は必ずしも発災時に救援される対象ではなく、準備が十分であれば他の要援護者を支援する活動も期待できるというパラダイムシフトを論じている点が学術的にユニークな視点である。また、情報コミュニケーションにおけるユニバーサルデザインと支援技術の進展が合理的配慮の基盤を進化させるという視点も重要。
臨床的観点からの成果
災害時に災害時要援護者かどうかだけでなく、外部からの救援無しに避難できる条件があるかどうかを災害時要援護者登録データで判断できることが、大規模災害時の人命救助活動を本当に救援が必要な人に集中するために重要。地域での防災活動に要援護者が参加し、自らの命を守ると共に、地域の安心安全に貢献することが人命被害を効果的に防止する。
ガイドライン等の開発
「話し合う場の設定」「『助かる』方法の習得」「災害発生初期のシミュレーション」「取り組みを進めるための工夫」の4要素に関する知見をまとめた住民向けの防災活動マニュアル(案)を、防災活動への参加に必要な情報アクセスにおいて様々な困難を抱える住民と東日本大震災被災者の限定された情報チャンネルとを考慮して、絵と短く平易な文章で構成したリーフレットと、すべてを簡潔な文章の文字だけで表現したテキスト版の二つの形式で作成した。
その他行政的観点からの成果
国連アジ太平洋経済社会委員会(ESCAP)が開催した第二次アジア太平洋障害者の十年の総括会議(2010年7月、10月)において、浦河での研究成果に基づいて、次期アジア太平洋障害者の十年の重点課題に災害時要援護者が参加するコミュニティによる防災力強化を含めることを提案し、総括文書に記録された。
その他のインパクト
2010年10月に開催された日本精神障害者リハビリテーション学会浦河大会における大会シンポジウム「障害者と防災―地域のつながりを再生する機会としてー」で発表した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
「災害時要援護者対策におけるユニバーサルデザインと合理的配慮」「首都圏のアイヌ民族の文化・社会運動における日常的エスニシティ」
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
「精神障害者も主体的参加者となりうる地域防災事業について-北海道浦河町における事例より-」
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
地域における障害者のインクルーシブな情報支援、日本災害情報学会第11回学会大会、浦河町地域防災フォーラム、シンポジウム障害者と防災、日本精神障害者リハビリテーション学会第18回
学会発表(国際学会等)
6件
ITU Workshop,International Conference on Disaster Preparedness,Modern Languages and Cultures
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
6件
DAISY避難マニュアル,テキスト版・イラスト版リーフレット,防災学習会・一泊避難所体験,冬季・夜間避難訓練,AJU福祉情報「北海道べてるの家に学ぶ地域防災」

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
八巻知香子, 望月美栄子
災害時要援護者対策におけるユニバーサルデザインと合理的配慮  ―ハワイ州のInteragency Action Planの概要と実践から―
社会福祉学 , 51 (4) , 174-186  (2011)

公開日・更新日

公開日
2017-08-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201036002Z