化学物質の臨界期曝露が神経内分泌・生殖機能へ及ぼす遅発型影響の機序解明と指標の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201035024A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の臨界期曝露が神経内分泌・生殖機能へ及ぼす遅発型影響の機序解明と指標の確立に関する研究
課題番号
H22-化学・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 緑(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 美和(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部)
  • 代田 眞理子(麻布大学)
  • 渡辺 元(東京農工大学)
  • 横須賀 誠(日本獣医生命科学大学)
  • 川口 真以子(武蔵野大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
41,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、化学物質の臨界期曝露による遅発型影響の機序の解明と、評価に有用な指標確立を目的として、内分泌学、生殖生理学、病理学分野およひ神経行動学から多角的に遅発性影響の解析を進めた。本研究では、17α-ethynylestradiol (EE)を共通のエストロゲン様物質として検索し、遅発影響の機序や初期変化と、検出の指標を相互が協力して検索した。
研究方法
本年度は、生体に活性を示す前後から高濃度のEEを生後0-1日の新生児ラットあるいはマウスに単回皮下投与し、遅発影響の機序解明と早期指標確立のために短期間観察実験と、指標検出のために長期的影響を多角的に検討した。
結果と考察
EE曝露新生児ラットの体内濃度測定の結果、脳を含む全身が暴露され24時間以内に代謝された。
EE新生児期曝露ラットでは性成熟前よりホルモンと卵巣に影響が見られた。
0.2 μg/kg以上のEEで異常性周期を示す動物が用量依存性に増加し、遅発性影響が発現した。
0.02 μg/kg以上のEEは子宮を肥大させた。
子宮肥大の最小陽性反応量前後の用量で、性周期異常、乳腺等の異常が認められた。
新生仔マウスへ高濃度EE投与は、脳の性分化を軽度に撹乱したが、海馬の生後神経新生への影響は認められなかった。
子宮肥大陽性EE濃度の新生児期曝露はラット学習能力を低下させたが、不安行動への影響はなかった。
 上記の結果より、EE新生児期曝露により脳を含む全身が曝露されていること、子宮肥大陽性EE濃度で遅発影響の誘発が確認された。機序解明に関連し、遅発性影響として性成熟前から内分泌学的異常を生ずる可能性が示された。高濃度新生児EE曝露は海馬の生後神経新生には影響しなかったが、成熟後の神経行動毒性で学習能力低下の可能性が示唆されたことからさらなる検討が必要である。
遅発影響の指標として、性周期異常は感度のよい遅発性影響指標であった。また乳腺等その他の臓器においても遅発性の影響指標となる可能性が示唆された。
結論
遅発性影響は、脳を含む全身に分布したEEが生体にエストロゲン活性化を示すレベルにおいて脳やその他臓器に作用した結果、最も確実性の高い指標である性周期異常を低濃度から発現させると推察した。次年度以降、さらに遅発影響の発現機序と長期影響指標の関連性について解析を進める予定である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201035024Z