タンパク質、核酸等の高分子医薬製剤の高感度安定性評価技術の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201034063A
報告書区分
総括
研究課題名
タンパク質、核酸等の高分子医薬製剤の高感度安定性評価技術の確立に関する研究
課題番号
H22-医薬・指定-020
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
阿曽 幸男(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 米谷 芳枝(星薬科大学 医薬品化学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒト型抗体医薬に代表されるタンパク質や核酸などの高分子医薬は本来不安定であるため、高分子医薬を医療の現場で活用するためには一定の品質が保たれるように高度な製剤学的工夫による安定化が必要である。そのためには、製剤学的工夫による安定化効果を確認し、その最適化を行えるように、短期間で高分子医薬製剤の安定性を評価できる方法の開発が不可欠である。本研究においてはローカルな運動性の指標であるβ緩和時間の測定法を開発することを特徴とし、β緩和時間に基づいた高分子医薬製剤の安定性評価法を開発することを目的とする。また、タンパク質や核酸のローカルな分子運動性を制御することにより、高い安定性を有するタンパク質製剤および核酸医薬のリポソーム製剤の開発を目指す。
研究方法
スクロース等の5種類の糖を添加剤として用いたインスリン凍結乾燥製剤を調製し、40-60℃における保存安定性を検討した。また、リポソームの表面水和の研究に最もよく用いられるPEG脂質で修飾したリポソームおよびそのリポプレックスの表面の水和状態を蛍光標識によるGP (generalized polarization) 測定と水の誘電緩和時間測定から検討した。
結果と考察
pH4の水溶液から凍結乾燥したインスリン製剤の50℃および60℃における安定性はスタキオース添加製剤が最も安定であり、スクロースは安定化効果を示さなかった。40℃保存ではスクロースとスタキオースは同程度の安定化効果を示した。一方、pH7の水溶液から凍結乾燥した場合、スクロースが最もインスリンを安定化した。また、遺伝子導入用リポソーム製剤の遺伝子導入効率を改善するために、PEG修飾によるリポソームの表面改質を検討したところ、蛍光物質を用いた蛍光測定と誘電緩和時間測定から、PEG修飾リポソームの表面状態は水和し、PEG脂質を用いて表面修飾したリポソームとプラスミドDNAとの複合体になると脱水和する傾向がみられた。誘電緩和時間は、リポソームおよびそのリポプレックスの水和状態の新たなパラメーターとなることが示唆された。
結論
インスリンに対する糖の安定化効果は凍結乾燥に用いる溶液のpHや保存温度に依存することを明らかにした。また、誘電緩和時間はPEG修飾リポソームとリポソーム/プラスミドDNA複合体のカチオン性の極性基とPEG鎖長の全体の水和状態を反映し、誘電緩和測定がPEG修飾リポソームの水和状態の評価法として有用であることが分かった。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201034063Z