国民および医療関係者との副作用情報にかかるリスクコミュニケーション方策に関する調査研究:副作用の効果的な情報伝達手法の検討

文献情報

文献番号
201034033A
報告書区分
総括
研究課題名
国民および医療関係者との副作用情報にかかるリスクコミュニケーション方策に関する調査研究:副作用の効果的な情報伝達手法の検討
課題番号
H21-医薬・一般-020
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
杉森 裕樹(大東文化大学 スポーツ・健康科学部 健康科学科)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 英孝(東海大学 医学部)
  • 小橋 元(独立行政法人放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 折井 孝男(NTT東日本関東病院 薬剤部)
  • 漆原 尚巳(京都大学大学院 医学研究科)
  • 田倉 智之(大阪大学大学院 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、医薬品・医療機器(以下医薬品)の安全性への信頼に疑問が投げかけられつつある今日(薬害肝炎問題等)、その適切な情報提供は喫緊の課題である。患者・消費者に対しては、医薬品のベネフィットとリスクの科学的不確実性のバランスの十分な対話が必要であるが、副作用(安全性)情報のリスクコミュニケーション(以下リスコミ)は十分に実体化されていない。また、医療職に対しても、従来の緊急安全性情報や添付文書等の提供だけでは情報伝達や共有が不十分(自己血糖測定用穿刺器具の使い回し問題等)である。本研究では、わが国における医薬品の安全性情報について、患者・消費者および医療職に対するリスコミのあり方を検討した。
研究方法
本年度は、昨年度から継続されている各分担課題の分析を各論的に進めた。
1.諸外国の患者・消費者および医療職への医薬品安全性の情報提供の調査(MHRA、EMA視察)
2.患者・消費者を対象とした医薬品安全性の情報提供の意識調査(N=1,707)
3.医療職(薬剤師)を対象とした医薬品安全性の情報提供の意識調査(N=923)
4.患者向け医薬品安全性情報提供における「患者参加」のあり方の検討
また、日本薬学会第131年会にて「医薬品の安全性情報とリスコミ」のシンポジウムを企画し、要旨集(DVD、冊子)等を通して、医療職(薬剤師、医師等)に対する啓発を行った。

結果と考察
MHRA、EMAでは,患者を「リアルな闘病体験とネットワークをもつ,医療職とは違う視点の専門家」として評価し、患者参加による情報共有化を重視していた。EMAでは患者団体の質を担保するため、参加条件がルール化されていた。わが国の患者・消費者への調査により、1)自分の意思で治療選択したい、選択には治療効果と安全性を重視し、医療職からの情報も参考、2)効能・効果、使用上の注意、副作用を知りたい、情報源としてインターネットも利用、3)悪い面も隠蔽せずに情報公表が良い、しかし、必ずしも知りたい全情報が入手できる状況ではない等、が明らかとなった。また、薬剤師への調査では、PMDAの「医薬品医療機器情報提供ホームページ」の認知が82.3%で、「医薬品・医療機器等安全性情報」利用は48.0%にとどまった。
結論
患者・消費者および医療職に対して、十分な安全性情報を提供し共有する情報基盤(リスコミ)の構築がさらに進展することで、患者参加の対話型医療(Shared Decision Making)の実現を目指す端緒となることが望まれる。そして、未来に向けて、社会における医薬品への信頼性を向上させ、安全で満足度の高い医療システムの実現が期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201034033Z