術中大量出血時の凝固障害機序の解明と止血のための輸血療法の確立-手術中の大量出血をいかにして防ぐか-

文献情報

文献番号
201034026A
報告書区分
総括
研究課題名
術中大量出血時の凝固障害機序の解明と止血のための輸血療法の確立-手術中の大量出血をいかにして防ぐか-
課題番号
H21-医薬・一般-013
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
荻野 均(独立行政法人 国立循環器病研究センター 心臓血管外科)
研究分担者(所属機関)
  • 高松 純樹(愛知県赤十字血液センター)
  • 梛野 正人(名古屋大学医学部附属病院 消化器外科)
  • 稲田 英一(順天堂大学医学部附属病院 麻酔科)
  • 板倉 敦夫(埼玉医科大学 産婦人科)
  • 上田 裕一(名古屋大学医学部附属病院 心臓血管外科)
  • 大北 裕(神戸大学医学部附属病院 心臓血管外科)
  • 宮田 茂樹(独立行政法人 国立循環器病研究センター 輸血管理室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
手術中の大量出血による死亡が問題となっている。大量出血に伴う凝固止血障害に対して濃厚血小板製剤、新鮮凍結血漿の投与が標準的な治療とされるが、その効果は不十分であることが少なくない。
本研究では、大量出血による凝固障害、特に急性低フィブリノゲン血症に対するクリオプレシピテート、フィブリノゲン濃縮製剤の高い止血能改善効果に着目し、術中の血液凝固能をモニタ−しながらこれらの製剤を適切に投与することで、出血量、輸血量を減少させ、患者予後を改善させ得るかどうかを検証する。
研究方法
昨年度の検討で、大量出血症例は、胸部大動脈瘤に対する人工血管置換術、肝硬変合併肝臓癌および肝門部胆管癌の摘出術、肝臓移植術、産科領域の緊急手術(常位胎盤早期剥離や産科DIC)などの症例に多いことが判明したため、これらの患者群の大量出血症例に対してのクリオプレシピテート製剤、フィブリノゲン濃縮製剤の有効性、安全性について、止血凝固検査値の改善度の評価も含めて、後向き、前向き臨床研究によって検討した。
結果と考察
大動脈外科手術患者において、フィブリノゲンの補充(150mg/dLをトリガー値として)をクリオプレシピテートで行ない血小板輸血のトリガー値を10万/μLと高く設定した患者群では、人工心肺離脱後、血小板数は10万/μL以上で維持され、フィブリノゲン値の速やかな上昇、APTTの改善がみとめられる症例が多数存在した。また、術後24時間以内の出血量が減少する傾向が認められた。また、産科領域などにおいても、大量出血症例においてフィブリノゲン濃縮製剤投与による速やかな凝固能改善が期待できることが示唆された。今後さらに、フィブリノゲン濃縮製剤、クリオプレシピテートの有効性、安全性に関しての検討を継続して行く。また、大量出血時の急性低フィブリノゲン血症に対するフィブリノゲン濃縮製剤の保険適応を視野に入れ、血漿分画製剤製造企業に対し薬事承認を目指した活動を求めていきたい。当研究班としても、最大限の協力を行なう予定である。
結論
大動脈外科手術患者や産科領域等の大量出血に伴う凝固障害、とくに急性低フィブリノゲン血症の是正に、フィブリノゲン濃縮製剤、クリオプレシピテートが有効である可能性が示唆された。今後、これらの製剤の薬事承認を視野に入れた検討を進める予定である。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201034026Z