医薬品等の個人輸入における保健衛生上の危害に関する研究

文献情報

文献番号
201034014A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品等の個人輸入における保健衛生上の危害に関する研究
課題番号
H20-医薬・一般-023
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
木村 和子(金沢大学 医薬保健研究城薬学系)
研究分担者(所属機関)
  • 谷本 剛(同志社女子大学 薬学部)
  • 赤沢 学(明治薬科大学 公衆衛生・疫学)
  • 吉田 直子(金沢大学 医薬保健研究城薬学系)
  • 坪井 宏仁(金沢大学 医薬保健研究城薬学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
6,790,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インターネットを介した医薬品個人輸入が有する保健衛生上の問題を明らかにし、健康被害の発生を防止するための施策検討に資する。
研究方法
1) 医薬品個人輸入経験者の消費者意識追跡調査 医薬品個人輸入経験者24名にオンライングループインタビューし、経験談、今後の態度、個人輸入に対する方策について意見収集。2)インターネットを介した個人輸入医薬品の保健衛生 i)タミフルと後発品アンチフルをインターネット上の輸入代行業者から試買。ii) H21試買抗肥満薬の品質調査。3)偽造医薬品とネット販売規制の国際動向
 WHO, EU, CoE, USFDAの公開情報、国際会議、担当官との交信で情報収集
結果と考察
1) 医薬品個人輸入経験者の消費者意識追跡調査 医薬品個人輸入の理由は、「病院を受診するのが面倒」や「低価格」が多かった。また、病院では中々処方されない医薬品の入手に利用。副作用リスクを認識しない者も存在。多くが今後も個人輸入を続ける可能性示唆、重大な副作用の経験者は今後個人輸入を行わないと回答。消費者の知識や意識向上、医薬品アクセスの改善、輸入代行者の規制を要望。2)インターネットを介した個人輸入医薬品の保健衛生:i)タミフルとアンチフルのほとんどが薬価よりも高価、使用期限切れ、外国語添付文書、出所不明誤記載の日本語説明書、無情報裸ブリスター、大量発送、卸業者の国際小売。ii) 抗肥満薬では、承認取下げ品の継続販売、承認取下げ品の後発品の継続販売。製造国、輸入国ともに未承認の薬がネット販売。 iii) 生薬配合ダイエット薬14製品中13製品はダイエットサプリメントだったが、いづれもシブトラミンが薬効投与単位量配合。住所不特定や偽造品販売サイトの半数で偽造品を検出。 3)偽造医薬品とネット販売規制の国際動向:欧州医薬品指令は、有効成分、添加物、安全機能、ブローカー、インターネット販売を規制した。欧州評議会医薬品犯罪条約も成立し、偽造医療品の製造、供給、文書偽造等は刑事罰の対象。インターネット販売は情状に影響。米国も流通への偽造品侵入防止に二つの識別子導入ガイドラインを公表。
結論
ネット代行を介した個人輸入薬は重大な保健衛生問題を抱えている。消費者が安易に手出しをしない教育啓発が必要。治療上必要であり国内で入手できない治療薬の入手情報の提供や、輸入代行者や発送者の質の向上、規範の検討を要す。

公開日・更新日

公開日
2011-06-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201034014B
報告書区分
総合
研究課題名
医薬品等の個人輸入における保健衛生上の危害に関する研究
課題番号
H20-医薬・一般-023
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
木村 和子(金沢大学 医薬保健研究城薬学系)
研究分担者(所属機関)
  • 谷本 剛(同志社女子大学 薬学部)
  • 奥村 順子(長崎大学 熱帯医学研究所)
  • 本間 隆之(山梨県立大学 看護学部)
  • 清水 栄(金沢大学 医薬保健研究城薬学系)
  • 赤沢 学(明治薬科大学 公衆衛生・疫学)
  • 吉田 直子(金沢大学 医薬保健研究城薬学系)
  • 坪井 宏仁(金沢大学 医薬保健研究城薬学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インターネットを介した医薬品・医療機器個人輸入の保健衛生問題を明らかにし、消費者特性に基づく、健康被害発生防止の施策に資す。
研究方法
1) 個人輸入に関する消費者調査  i) 医薬品 ii) 医療機器及びおしゃれ用カラーコンタクトレンズ(以下カラコン):インターネット上で質問票による横断調査 iii)経験者の追跡調査: 医薬品個人輸入経験者にオンライングループインタビュー。2)個人輸入医薬品の保健衛生i) ダイエット用薬シブトラミン: 個人輸入シブトラミン製剤の品質と真正性、輸入代行サイトを調査。ii) 不審サイトからのダイエット用薬:住所隠匿サイトやED治療偽造薬販売サイトなどからダイエット用医薬品を購入、調査iii)インフルエンザ治療薬:タミフルと後発品アンチフル。3)偽造医薬品とネット販売規制の国際動向公開情報、国際会議参加、担当官と交信。
結果と考察
1) 個人輸入に関する消費者調査:i) 医薬品: 回答者(13,229名)の5.0%が医薬品個人輸入経験、副作用経験も15%。個人輸入経験者は、個人輸入薬について「偽造薬や品質不良品が含まれる危険性」,「過去の重大な健康被害」を認識し,「医薬品副作用救済制度が適用」と誤解。ii) 医遼機器及びカラコン:回答者(33,727名)のうち医療機器個人輸入経験者は6.5%、カラコン1.0%。視力補正用コンタクトが70.2%。不具合、品質不良、偽造品を経験。iii)経験者の追跡調査:輸入理由は「受診が面倒」や「低価格」。「病院で中々処方されない」。副作用リスク認識ない。医薬品アクセス改善、消費者知識向上、輸入代行者規制を要望。2)インターネットを介した個人輸入医薬品の保健衛生使用期限切れ、処方箋無要求、外国語添付文書、出所不明誤記載の日本文、無情報裸ブリスター、大量発送、卸業者の国際小売、承認取下げ品と後発品の継続販売。製造国、輸入国とも未評価。偽造薬。同一製品4倍価格差、薬価より高価。不審サイトの約半数で偽造品検出。3)  偽造薬とネット販売規制の国際動向:偽造薬対策強化で2011年欧州医薬品指令改正、2010年欧州評議会医薬品犯罪条約成立。2010年米国医薬品識別子ガイドライン公表。NZ、英国、米国、EUはネット薬局認証制度導入。
結論
ネットを介した個人輸入薬は保健衛生上問題有り。消費者特性に基づく教育啓発、治療薬のアクセス改善、輸入代行者や発送者の質、規範の向上は今後の課題である。

公開日・更新日

公開日
2011-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201034014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ネット質問調査で5.0%が医薬品個人輸入経験。「偽造薬や品質不良」「過去の重大な健康被害」を認識。「医薬品副作用救済制度適用」と誤解。OGIで薬の副作用リスクの認識がない。視力補正用コンタクトの個人輸入。カラコンも個人輸入選択。しかしネット個人輸入薬は未承認、無評価、承認取消品、偽造薬(無成分、異成分、偽成分)、期限切れ、卸の小売、大量発送、処方箋無要求、出所不明誤記日本文、薬価より高価。2011欧州医薬品指令改正、2010欧州評議会医薬品犯罪条約成立。2010米国識別子ガイドライン
臨床的観点からの成果
医薬品個人輸入者の15%が副作用経験、通院、入院有り。継続して個人輸入を行う一方、副作用経験者は個人輸入を止める。治療上の必要性には不確かな輸入代行ではなく確実な入手路の確保を求む。ネット個人輸入薬には、Xenical(抗肥満薬) 偽造品、Xenigal(抗肥満薬)無有効成分/未知成分含有、生薬系ダイエットサプリはシブトラミンを無表示で薬効量含有、生薬成分は確認不可。欧米のシブトラミン承認取消後もネット購入可。不審サイトの約半数で偽造抗肥満薬販売。
ガイドライン等の開発
現時点ではガイドライン等未発表
その他行政的観点からの成果
①厚生科学審議会医薬品制度改正検討部会(個人輸入対策の強化)、医薬食品局「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」の基礎資料提供②WHO/WRPO Rapid Alert System 22/4/2010及び14/9/2011③厚生労働省HP「個人輸入において注意すべき医薬品」及び「医薬品成分(シブトラミン及び類似成分、フェンフルラミン)が検出されたいわゆる健康食品」④奈良県報道資料「模造医薬品による健康被害に対する注意喚起」2011/4/26,5/26
その他のインパクト
①日本薬学会シンポジウム,偽造医薬品2013/3/30②NHK総合,ただイマ!偽造医薬品,2012/9/7③政府インターネットTV,医薬品等個人輸入,2011/11/8~④FNN,違法薬80カ国超集中取締,2011/9/30⑤NHK総合,追跡!偽造薬,2011/8/10⑥NHK名古屋,ナビゲーション,薬本物ですか?2011/5/20⑦毎日新聞(神奈川),2012/11/16,バイアグラ⑧産経新聞,2012/4/26,医薬品ネット⑨朝日新聞,2011/8/23,薬個人輸入厚労省初調査

発表件数

原著論文(和文)
6件
1)戸水他、社会薬学、2012 2)木村他、医遼と社会、2011 3)木村他、医療と社会、2009 4)田畑他、社会薬学2011 5)荒木他、社会薬学2010 6)高尾他、社会薬学2010
原著論文(英文等)
1件
M.H.Khan,et al,BMJ-open,2012
その他論文(和文)
3件
1)木村、ファイルマシア 2010 2)木村、PHARM TECH JAPAN、2010 3)木村他 医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス、2010
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
SP賞受賞:高尾知里他、インターネットを介した個人輸入による“ダイエット用薬”試買調査、社会薬学会2009。社会薬学会2009、2010、2011計3、薬学会2010、2011、2012、2013計6
学会発表(国際学会等)
2件
1)Nakanishi, et al. 2010 FAPA CONGRESS,5-8 Nov.Taipei 2)Odaira,et al. APCNMP2012, 26-29 May.Sydney
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
7件
1)厚生科学審議会 2)医薬食品局検討会 3)WHO/WRPO RAS 4)厚生省HP「個人輸入」 5)厚生労働省HP「医薬品成分検出健康食品」 6)奈良県報道資料
その他成果(普及・啓発活動)
9件
1)シンポ2013 2)NHK2012 3)政府TV2011 4)FNN2011 5)NHK2011 6)NHK名古屋2011 7)毎日2012 8)産経2012 9)朝日2011

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
M.H.Khan,T.Tanimoto,Y.Nakanishi, et al.
Public health concerns for anti-obesity medicines imported for personal use through the Internet: a cross-sectional survey
BMJ-open , 2 (3)  (2012)
10.1136/bmjopen-2012-00854
原著論文2
戸水尚希、吉田直子、坪井宏仁、et al.
医薬品個人輸入経験者の意識調査にみる不適切な個人輸入の抑止策
社会薬学 , 30 (2) , 53-54  (2012)
原著論文3
木村和子、本間隆之、谷本剛、et al.
インターネットで個人輸入した医薬品の保健衛生(2)-抗肥満薬による追跡-
医療と社会 , 21 (1) , 55-67  (2011)
原著論文4
田畑仁美、吉田直子、赤沢学、et al.
医療機器個人輸入の実態調査(Proceeding)
社会薬学 , 29 (2) , 73-74  (2011)
原著論文5
荒木理沙、奥村順子、赤沢学、et al.
医薬品個人輸入に関する消費者の意識調査(Proceeding)
社会薬学 , 28 (3) , 134-135  (2010)
原著論文6
高尾知里、安井将和、本間隆之、et al.
インターネットを介した個人輸入による“ダイエット用薬”試買調査(Proceeding)
社会薬学 , 28 (3) , 144-145  (2010)
原著論文7
木村和子、奥村順子、本間隆之、et al.
インターネット輸入代行で個人輸入した医薬品の保健衛生上のインパクト
医療と社会 , 18 (4) , 459-472  (2009)

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201034014Z