文献情報
文献番号
201033052A
報告書区分
総括
研究課題名
抗酸化物質を含有するいわゆる健康食品の安全性・有効性に関する研究
課題番号
H21-食品・若手-020
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
竹林 純(独立行政法人国立健康・栄養研究所 食品保健機能プログラム)
研究分担者(所属機関)
- 松本 輝樹(独立行政法人国立健康・栄養研究所 食品保健機能プログラム )
- 卓 興鋼(独立行政法人国立健康・栄養研究所 情報センター)
- 坪田 恵 (宇津木 恵)(独立行政法人国立健康・栄養研究所 栄養疫学プログラム)
- 沖 智之(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター 機能性利用研究チーム)
- 後藤 一寿(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター 異業種連携研究チーム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
野菜や果実等に豊富に含まれる抗酸化物質は、健康維持・増進に寄与すると考えられる。しかし、これらの抗酸化物質を含む「いわゆる健康食品」(抗酸化サプリメント)については、その有効性及び安全性を示す科学的根拠が不足している。そこで本研究では、抗酸化サプリメントの有効性及び安全性評価を行った。
研究方法
1)日本において良く摂取されている13種類の果物についてORAC法を用いて抗酸化能を測定し、果物からの抗酸化物質一日摂取量を推算。2)果物からの抗酸化物質摂取量の地域差について検討。3)国内流通している30種類の抗酸化サプリメントの抗酸化能をORAC法で測定。4)抗酸化サプリメントの安全性について培養細胞等を用いて評価。5)抗酸化サプリメントの有効性・安全性に関する文献を調査。6)抗酸化サプリメントに対する消費者意識調査を実施。
結果と考察
1)200 g/日の一般的な果物を摂取した場合、抗酸化物質標準品トロロックスに換算して約2,500マイクロモル相当、350 g/日の一般的な野菜と併せて約4,600マイクロモル相当の抗酸化物質を摂取可能と推算された(注意:これらの数値の生理学的意味は現時点では不明)。2)抗酸化力の値が高いりんご、もも、ミカンの産地で果物からの抗酸化物質摂取量が高い傾向にあった。3)大半の抗酸化サプリメントからの抗酸化物質摂取総量は、摂取目安量を守る限り概ね食経験の範囲内と考えられたが、抗酸化物質含有量が非常に高いもの(1種)や低いもの(複数)も認められた。4)抗酸化力が高い抗酸化サプリメントほど細胞毒性を示す傾向が認められた。5)よく利用されている抗酸化サプリメントの多くでは、有効性・危険性を強く支持する文献情報が乏しく、一部で有効性を示す報告があったが、危険性を示す報告も複数あった。6)抗酸化力を有する食品に対する一般消費者の高い関心が伺えたが、科学的根拠に基づかない過度な期待、大量摂取に繋がる考えを持っていることが明らかになった。
結論
現在国内流通している抗酸化サプリメントの抗酸化物質含有量は、摂取目安量を守る限り、野菜・果物からの摂取推算値と比較して概ね食経験の範囲内であると予測された。しかし、消費者には抗酸化サプリメントに対する過度な期待や誤った認識があり、大量摂取時の安全性は充分確保されているとは言えない。また、現時点で抗酸化サプリメントの有効量を示す充分な科学的根拠も得られていない。抗酸化物質摂取の有効性・安全性に関するさらなる研究が必要である。
公開日・更新日
公開日
2011-06-02
更新日
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