既存添加物「酸化防止剤」の製法による抗酸化能及び主要成分の変動解析

文献情報

文献番号
201033050A
報告書区分
総括
研究課題名
既存添加物「酸化防止剤」の製法による抗酸化能及び主要成分の変動解析
課題番号
H21-食品・若手-018
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
天倉 吉章(松山大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 好村 守生(松山大学 薬学部)
  • 吉田 隆志(松山大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,規格整備が遅れている既存添加物中の単一成分でない酸化防止剤について,複数の製法により調製したモデル酸化防止剤の抗酸化能及び主要成分の変動解析を行うことで使用目的に適した製法を提案し,食品添加物の適正使用のための規格化に寄与する科学データの集積を目的とする.平成22年度(2年計画の2年目)は,新たに5品目(ヒマワリ種子,ローズマリー,チャ,生コーヒー豆,ヤマモモ)について検討した.
研究方法
本年度は,新たに5品目(チャ抽出物,ヒマワリ種子抽出物,ヤマモモ抽出物,生コーヒー抽出物,ローズマリー抽出物)を検討した.これら原料を複数の製法により調製した抽出物(モデル酸化防止剤)について,含有成分の変動解析を行い,未同定成分の構造解析,抗酸化能(ORAC値)の変動解析を実施した.
結果と考察
ヒマワリ種子抽出物:50%エタノール抽出物の抗酸化活性が強く,chlorogenic acid及び3,5-dicaffeoylquinic acidが主成分として同定された.ヤマモモ抽出物:50%エタノール抽出物及びメタノール抽出物の抗酸化活性が強く,いずれも主成分としてmyricitrinが検出された.チャ抽出物:アルコールまたは水抽出物で強い抗酸化活性を示した.抗酸化活性画分の含有成分を検討した結果,epigallocatechin gallate及びepicatechin gallateが主成分として検出された.生コーヒー豆抽出物:50%エタノール抽出物の抗酸化活性が強く,chorogenic acidなどのカフェー酸誘導体が主成分として検出された.ローズマリー抽出物:50%エタノール抽出物の抗酸化活性が強く,活性画分の含有成分を精査した結果,ほぼrosmarinic acidのみであった.主成分として同定された化合物について抗酸化能を評価した結果,すべて高い抗酸化値を示した.
結論
5抽出物(ヒマワリ種子,ローズマリー,チャ,生コーヒー豆,ヤマモモ)の製法とそれによる抗酸化能及び成分分布について検討し,ヒマワリ種子,生コーヒー豆ではchlorogenic acid,ローズマリーではrosmarinic acid,チャではepigallocatechin gallate及びepicatechin gallate,ヤマモモではmyricitrinを指標成分とした調製法が効果的である結果が得られた.

公開日・更新日

公開日
2011-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
201033050B
報告書区分
総合
研究課題名
既存添加物「酸化防止剤」の製法による抗酸化能及び主要成分の変動解析
課題番号
H21-食品・若手-018
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
天倉 吉章(松山大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 好村 守生(松山大学 薬学部)
  • 吉田 隆志(松山大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では,既存添加物の中で抽出物が多い酸化防止剤に重点を置き,既存添加物名簿に記載されている製法の範囲内で複数の抽出物(モデル酸化防止剤)を調製し,抗酸化能およびそれらの成分分布を評価,解析することで,添加物の適正使用のための規格化に寄与する科学データの集積を目的として研究を実施した.2年計画で計10品目(ドクダミ,セージ,ウイキョウ,ピメンタ,クローブ,ヒマワリ種子,ローズマリー,チャ,生コーヒー豆,ヤマモモ)について検討した.
研究方法
既存添加物名簿記載の製法に準拠した数製法によるモデル酸化防止剤を調製し,未同定成分の構造解明を含めた含有成分の網羅的解析を行った.また作製した各モデル酸化防止剤の抗酸化活性(ORAC値)を評価した.各モデル酸化防止剤の主要成分を明確にし,酸化防止剤として目的に応じた有効で優れた製法を考察した.
結果と考察
当初の研究計画通り,10品目(ドクダミ,セージ,ウイキョウ,ピメンタ,クローブ,ヒマワリ種子,ローズマリー,チャ,生コーヒー豆,ヤマモモ)について検討し,酸化防止剤として有効な添加物製法に関する新たな知見を得た.例えば,ドクダミ抽出物については,50%エタノール抽出物が強い抗酸化活性を示し,分画物を調製して精査した結果,フラボノイド配糖体quercitrinが主成分,有効成分として同定され,quercitrin含量を目安に調製する方法が有効であることが示された.セージ抽出物では,50%エタノール抽出物が高い抗酸化活性を示し,抽出物の抗酸化活性画分の含有成分を分析したところ,rosmarinic acidが主成分及び有効成分として同定された.またクローブ抽出物では,水蒸気蒸留物及び80%エタノール抽出物に顕著な抗酸化活性が認められた.主成分としてeugenol及びacetyleugenolが同定され,本抗酸化活性はそれら含有量に依存していることが考察された.このように,他の7品目についても同様に結果,考察が示された.
結論
天然酸化防止剤の製法による成分変動解析と構造解明及び抗酸化能の変動解析の研究では,ドクダミ,セージ,ウイキョウ,ピメンタ,クローブ,ヒマワリ種子,ローズマリー,チャ,生コーヒー豆,ヤマモモをを対象に研究を実施し,それぞれの酸化防止効果に寄与する成分を明らかにすることができ,それらを指標にした製法を提案することができた.

公開日・更新日

公開日
2011-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201033050C

成果

専門的・学術的観点からの成果
天然酸化防止剤原料10品目(ドクダミ,セージ,ウイキョウ,ピメンタ,クローブ,ヒマワリ種子,ローズマリー,チャ,生コーヒー豆,ヤマモモ)を対象に,添加物の製法による成分および抗酸化能の変動解析を実施することで,酸化防止効果に寄与する有効成分を明らかにすることができ,またそれらを指標とした製法を提案することができた.さらに文献未記載の6種の化合物を単離,構造決定することができ,新たな食品成分情報を加えることができた.
臨床的観点からの成果
現在までのところなし.将来的には,添加物を調製する際の参考資料としての利用を期待する.
ガイドライン等の開発
現在までのところなし.
その他行政的観点からの成果
具体的にはなし.既存添加物の「製法」を主体とした検討は実施されておらず,本結果は多成分を含有する天然添加物において,用途に応じた添加物を調製するための科学データとなり得る.また既存添加物名簿や公定書の更新など,規格整備を軸とした行政的応用が期待できる.一方で,今回検討した植物原料については,添加物使用のみならず機能性食品などへの使用もあげられており,これら含有成分の網羅的解析は,食品や薬を含めた他成分との相互作用を検討する際にも重要なデータとなり得,食の安全性確保への二次的応用も考えられる.
その他のインパクト
本研究成果の一部を紹介する内容で,食の安全安心に関するリスクコミュニケーションの一環として広島市で実施された夏休みジュニア食品衛生教室(平成22年8月)において,「食品添加物をもっと考える」というテーマで講演を行い,小学生親子に対して添加物の種類などを紹介した.また,大分市で実施された大学公開講座(平成22年11月)において,本研究成果の一部を紹介する内容で食品添加物の概要について一般市民を対象に講演した.

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Amakura, Y., et al.
Variational analysis of marker constituents and antioxidative potencies by preparation methods of natural antioxidants as food additives
J. Food Chem. Safety , 18 , 25-34  (2011)
原著論文2
Yoshimura, M., et al.
Polyphenolic compounds in clove and pimento and their antioxidative activities
Biosci. Biotechnol. Biochem. , 75 , 2207-2212  (2011)
原著論文3
Yoshimura, M., et al.
Diarylheptanoid sulfate and related compounds from Myrica rubra bark
J. Nat. Prod. , 75 , 1798-1802  (2012)
原著論文4
Amakura, Y., et al.
Isolation of phenolic constituents and characterization of antioxidant markers from sunflower (Helianthus annuus) seed extract
Phytochemistry Letters , 6 , 302-305  (2013)
原著論文5
Amakura, Y., Yoshimura, M., Yoshida, T.
Variability analysis of marker constituents by preparation methods of natural antioxidants as food additives
J. Food Chem. Safety , 20 , 9-21  (2013)

公開日・更新日

公開日
2016-06-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201033050Z