文献情報
文献番号
201033049A
報告書区分
総括
研究課題名
トキシコキネティクス/トキシコプロテオミクス解析による食品ナノマテリアルの免疫毒性リスク予測・回避法の開発
課題番号
H21-食品・若手-017
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
吉岡 靖雄(大阪大学臨床医工学融合研究教育センター 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 吉川 友章(大阪大学薬学研究科 毒性学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ナノマテリアルは、食品産業において革命を起こす新素材として期待され、機能性食品・栄養成分送達システム・着色剤・香料として利用されつつある。一方で、生体免疫系がナノマテリアルを異物として認識した際に機能不全を起こす可能性が報告されるなど、ナノマテリアルの革新的機能が人体に対して未知の免疫撹乱作用を呈する危険性が指摘されている。そこで本研究では、食品添加物として認可されているシリカ粒子を用いて、ナノマテリアルの免疫応答に与える影響評価と、プロテオミクスによる安全性予測バイオマーカーの探索を試みた。
研究方法
非晶質シリカ(直径30、70、300、1000 nm;それぞれnSP30、nSP70、nSP300、mSP1000)を使用した。鶏卵白アルブミン(OVA)誘発食物アレルギーモデルマウスを用いて食物アレルギーに与える影響を評価した。また、デキストラン硫酸ナトリウム塩誘発大腸炎モデルマウスにより炎症性腸疾患に与える影響を検討した。
結果と考察
まず、OVAと非晶質シリカを経口投与し、OVAに対するアレルギー応答を検討した。その結果、OVA単独投与群ではOVA特異的抗体誘導は、ほとんど誘導されなかったのに対して、nSP30とOVAを共投与することで、OVA特異的抗体の有意な産生上昇が観察された。以上の結果から、非晶質ナノシリカが、食物アレルギー発症を助長する可能性が示された。次に、炎症性腸疾患の発症に与える影響を評価した結果、nSP70とmSP1000のみを用いたプレリミナリーな結果ではあるが、nSP70投与群でのみ、大腸炎に起因する体重低下が悪化する傾向が認められた。従って、詳細な検討が必要ではあるものの、非晶質ナノシリカが炎症性腸疾患の病態悪化要因になる可能性が示された。一方で、非晶質ナノシリカの粒子表面の化学修飾により、上記の生体影響を軽減し得る可能性も明らかとしており、安全なナノマテリアルの創出に向けた基盤情報になると考えている。さらに、非晶質ナノシリカの経口曝露により変動する血中蛋白質をスクリーニングすることで、ハプトグロビンなどの急性期蛋白質が安全性予測バイオマーカーになり得ることを明らかとした。
結論
本研究で得られた成果は、安全なナノマテリアルの創製に向けた有用な情報になると期待される。
公開日・更新日
公開日
2011-05-18
更新日
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