ウイルス性肝疾患に対する分子標的治療創薬に関する研究

文献情報

文献番号
201030029A
報告書区分
総括
研究課題名
ウイルス性肝疾患に対する分子標的治療創薬に関する研究
課題番号
H22-肝炎・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
金子 周一(金沢大学 医薬保健研究城医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 小原 道法((財)東京都医学研究機構東京都臨床医学総合研究所)
  • 菅 裕明(東京大学大学院理学系研究科)
  • 深澤 征義(国立感染症研究所生化学)
  • 竹原 徹郎(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 宇都 浩文(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
  • 前川 伸哉(山梨大学大学院医学工学総合研究部)
  • 村上 周子(名古屋市立大学)
  • 堀本 勝久(産業技術総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
56,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
B型(HBV)およびC型肝炎ウイルス(HCV)感染から肝硬変に進行、あるいは肝細胞がんを併発して死亡する患者数は我が国だけでも年間5万人に及ぶ。HBVに対して核酸アナログ製剤が使用されているが薬剤抵抗株の出現と長期間にわたる服薬が問題となっている。HCVに対してペグインターフェロン・リバビリン併用療法が行われているがHCVの排除が得られる率は5割に過ぎない。本研究の目的は、肝炎および肝がんを対象に新たな診断法を開発するとともに、siRNA製剤および特殊ペプチド製剤を用いた創薬研究を行うことである。
研究方法
トランスクリプトーム、プロテオーム、脂質解析を駆使して診断法の開発と標的分子を同定するとともに、独創的な創薬技術として期待されるsiRNA製剤および特殊ペプチド製剤の創薬研究を行う。本研究は3年計画で実施し、本年は初年度である。
結果と考察
診断法の開発および治療の標的分子の研究では、肝炎では、RANTESがC型肝炎の治療抵抗性の独立した因子として抽出された。酸化ストレスマーカー候補MnSODの意義について解析し、CCケモカインの1種を同定した。肝がんでは、AFP、EpCAM陽性肝がんの特徴を明らかにするとともに、EpCAMを標的とする治療法開発の分子基盤を示した。また、micro RNAであるlet-7がBcl-xLの発現を抑制していることを示した。ヒト肝細胞置換キメラマウス(PXBマウス)のHBV 感染における肝障害と線維化を検討した。脂質ラフトの研究では脂肪と関連する118種類のタンパク質を同定した。いくつかの分子については免疫化学的にも脂肪滴への局在を確認し、IMP1及びIMP3はウイルスライフサイクルに関与する可能性を示唆した。活性化していると推定される制御ネットワークを抽出するシステムを構築した。また、創薬研究は、siRNAと特殊環状ペプチドを用いる研究を行った。HCVの5’非翻訳領域(IRES)にデザインしたsiRNAのうち高い活性を持つものを得た。HCVの E2タンパク、ならびに肝臓癌のマーカーであるEpCAMに結合する特殊環状ペプチドの探索を行って候補ペプチドを得た。
結論
肝炎および肝がんに対する診断法および治療の標的分子に用いる分子が同定された。HCV複製を抑制するsiRNA、および、肝がんを抑制する特殊環状ペプチド創薬の基盤研究が行われた。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201030029Z