肝炎ウイルスと代謝・免疫系の相互作用に関する包括的研究

文献情報

文献番号
201030021A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎ウイルスと代謝・免疫系の相互作用に関する包括的研究
課題番号
H21-肝炎・一般-010
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
小池 和彦(東京大学 東京大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 岡上 武(大阪府済生会吹田病院)
  • 熊田博光(国家公務員共済組合 連合会虎の門病院 )
  • 石坂信和(大阪医科大学)
  • 水落利明(国立感染症研究所)
  • 勝二郁夫(神戸大学大学院医学系研究科)
  • 森屋恭爾(東京大学 東京大学医学部附属病院 )
  • 松浦善治(大阪大学微生物病研究所)
  • 小原恭子(熊本大学生命科学研究部)
  • 林 純(九州大学大学院医学研究院)
  • 中本安成(金沢大学医学部附属病院)
  • 相崎英樹(国立感染症研究所)
  • 四柳 宏(東京大学 東京大学医学部附属病院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
78,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型肝炎ウイルス(HCV)やB型肝炎ウイルス(HBV)による代謝および免疫系の障害について、治療効果への影響を含めて、より臨床に密接した観点から明らかにし、ついで、基礎的研究によってその原因・機序を分子レベルで究明し、新規治療法の開発を目指す。
研究方法
臨床に密接した観点から明らかにし、次いで分子医学的手法によりその機序を解析した。
結果と考察
HCVは抗酸化系を減弱し、酸化ストレスを異常増加させた。タクロリムスは肝脂肪化、インスリン抵抗性、酸化ストレス過剰産生というC型肝炎の病態を改善する。班全体研究によって、インスリン抵抗性が日本人C型肝炎におけるペグリバ療法の効果に与える影響について決着をつけた。非肥満者のC型肝炎では、肝組織中のPPARαの発現低下が肝脂肪化に重要であった。コアaa70がGln(His)の場合は総コレステロール低値、中性脂肪高値、LDLコレステロール低値、空腹時血糖高値、肝細胞脂肪化が多かった。コアaa91がMetの場合は糖尿病合併頻度が高かった。慢性肝炎では、BMIが大きい症例では、非肝炎よりHOMA-IRが亢進していた。慢性C型肝炎患者末梢B細胞にHCVが感染していること、遺伝子改変に関与するAID及び癌化関連遺伝子の発現亢進を明らかにした。HCV感染細胞で肝細胞表面のGLUT2の発現低下が引き起こされ、糖の取り込みが抑制された。分枝鎖アミノ酸がC型肝炎における肝脂肪化を改善した。
HCV感染細胞でオートファジーの誘導を阻害してもHCVの増殖には影響は認められなかったが細胞死が誘導された。HCV全長遺伝子をB細胞で特異的に発現するマウスでは25%のマウスでBリンパ腫を発症した。HCV持続感染は、頸動脈アテローム性動脈硬化症に対する脂質降下剤治療の効果を妨げること、心筋障害を示すNT-proBNPが高値であり、心不全との関連があることが示唆された。HCV感染後、細胞内総コレステロール、中性脂肪等が増加し、培養上清では時間経過でVLDLが増加し、LDL、HDLは低下した。HCVは増殖に好都合な環境を作るものと考えられる。
結論
HCV感染症、HBV感染症は全身疾患であり、感染と代謝・免疫の相互作用を通じて病態が形成されることが明らかにされた。この様な認識をもつことにより、患者の予後、QOLを大幅に改善することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201030021Z