肝炎ウイルスによる発がん機構の解明に関する研究

文献情報

文献番号
201030020A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎ウイルスによる発がん機構の解明に関する研究
課題番号
H21-肝炎・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
堀田 博(神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 河田純男(山形大学 医学部)
  • 丸澤宏之(京都大学 医学部)
  • 佐々木裕(熊本大学 大学院医学薬学研究部)
  • 森石恆司(山梨大学 大学院医学工学総合研究部)
  • 有海康雄(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 加藤孝宣(国立感染症研究所)
  • 小池和彦(東京大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝がんの発生、進展におけるC型 (HCV)及びB型肝炎ウイルス(HBV)蛋白質の役割、特に、細胞内シグナル伝達の攪乱を介した病原性発現機構及び肝発がん機構を分子レベルで解明する。そして、その分子機構に基づいて、HCV及びHBVの排除、肝がん早期診断及び肝発がん阻止・治療法開発の分子基盤を確立する。
研究方法
HCV NS3蛋白質発現トランスジェニック(Tg)マウスの作製と発がんの解析、 AID発現Tgマウスやヒト初代肝培養細胞を用いた解析、 HCV陽性肝がん組織と非がん部組織の蛋白質発現とリン酸化の比較解析、HCV NS3やコア蛋白質の変異と肝発がんリスク及びインターフェロン(IFN)応答性との相関の解析、コア蛋白質とPA28γに結合する宿主蛋白質の解析、HCV感染細胞における発がん関連因子の変動の解析、HBx蛋白質発現Tgマウスや培養細胞を用いたHBV関連シグナル伝達分子の解析、を行った。
結果と考察
1) HCV NS3発現Tgマウスは原発性肝がんを発生した。HCV発がんの新規分子機序解明のためのモデル動物として有用である。2) HCV発がんリスクと相関するNS3及びコア蛋白質の変異を同定した。3) HCV感染患者の肝組織では遺伝子編集酵素AIDやAPOBEC2の発現誘導を介して発がん関連遺伝子の変異が蓄積していた。4) 肝がん組織においてリン酸化を介して細胞死抵抗性やがん化形質に関与する宿主因子の一つとしてヌクレオフォスミン(NPM)を同定した。5) HCVコア蛋白質と相互作用するPA28γと結合する宿主因子として、ホスホピルビン酸ヒドラターゼ、肺がんマーカー遺伝子産物及びポリコム遺伝子産物を同定した。(6) HCV感染によりP-body形成が阻害され、DDX6等の発がん関連因子がウイルス産生の場である脂肪滴周辺にハイジャックされ、コア蛋白質と共局在した。7) HCV発がんに関与するコア蛋白質の変異はHCVの増殖やIFN感受性に影響を与えなかった。8) HBx蛋白質がpituitary tumor-transforming gene 1(PTTG1)を安定化させ、HBV発がん・悪性化に関与していることを見出した。
結論
HCV発がんには、コア蛋白質のみならずNS3蛋白質も重要であること、及びAID、NPM、DDX6等の宿主因子との相互作用が重要であることが新たにわかった。HBV発がんにはHBxを介したPTTG1の関与も重要である。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201030020Z