日本人の細胞に由来するiPS細胞からの誘導ヒト肝細胞を用いたキメラマウス肝炎モデル開発とその前臨床応用

文献情報

文献番号
201030019A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人の細胞に由来するiPS細胞からの誘導ヒト肝細胞を用いたキメラマウス肝炎モデル開発とその前臨床応用
課題番号
H21-肝炎・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
池田 一雄(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 河田 則文(大阪市立大学 大学院医学研究科)
  • 吉里 勝利(株式会社フェニックスバイオ)
  • 立野 知世(向谷 知世)(株式会社フェニックスバイオ)
  • 寺岡 弘文(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 田中 靖人(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 中西 真(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 水口 裕之(独立行政法人医薬基盤研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
24,360,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、日本人の細胞からiPS細胞を作製してヒト肝細胞へと分化誘導させ、これを移植して得たキメラマウスを利用し、肝炎ウイルス感染に関わる宿主要因を日本人肝細胞で検討できるモデルを開発することを目的とする。
研究方法
1)ヒトiPS細胞の肝細胞への分化誘導方法
ヒトiPS細胞をActivinA、BMP4、FGF2、HGF、OSMで刺激し、肝細胞へと分化誘導した。
2)ヒトiPS細胞由来肝細胞様細胞のuPA/SCIDマウスへの移植方法
上記の方法で分化誘導させた細胞を、生後3週齢のuPA/SCIDマウスの脾臓に注入し、肝臓への細胞移植を行った。移植後は、一週間おきに血中ヒトアルブミン濃度を測定した。移植約30日後、肝臓の一部をサンプリングし、切片を作成し、移植細胞の生着率を算出した。
3)ヒトiPS細胞由来肝細胞様細胞のマウス胎仔への移植方法
E16.5マウスを羊膜に包まれた状態で子宮外に出し、卵黄嚢静脈へヒトiPS由来肝細胞を注入した。細胞移植された胎仔は、E18.5日に取り出し、切片を作製し、解析した。
結果と考察
1)ヒトiPS細胞の分化誘導
ActivinAの作用により、内胚葉細胞へと分化、BMP4+FGF2の刺激により、肝前駆細胞へと分化させることにより、肝細胞未成熟マーカーAFP、肝細胞成熟マーカーALBの検出が可能となった。OSM刺激後の分化誘導細胞のおよそ40%がALB陽性の肝細胞様細胞に分化していた。
2)ヒトiPS由来肝細胞のuPA/SCIDマウスへの移植
uPA/SCIDマウスへ移植した結果、ELIZAによるヒトアルブミンの血中濃度測定で、細胞生着が確認できた。移植約30日後に採取したサンプル切片において、ヒトCK18、ヒトALBの免疫組織化学を行った結果、ヒトCK18陽性細胞、ヒトALB陽性細胞は、最大で15%程の割合で、生着していた。
3)ヒトiPS由来肝細胞のE16.5マウスへの移植
ヒトiPSから分化誘導した細胞を卵黄嚢静脈から移植すると、肝臓だけでなく、全身に拡散していた。移植2日後、肝臓を取り出し、切片を作製し観察すると標識された移植細胞が生着している様子が観察できた。
結論
日本人の線維芽細胞より作製したiPS細胞を肝細胞に分化誘導させ、uPA/SCIDマウスに移植することにより、マウスでの血中でヒトアルブミンの産生を確認できた。しかし、その濃度は低く、生着率の改善をはかることが今後の課題である。

公開日・更新日

公開日
2011-06-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201030019Z