文献情報
文献番号
201030013A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫抑制薬,抗悪性腫瘍薬によるB型肝炎ウイルス再活性化の実態解明と対策法の確立
課題番号
H21-肝炎・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
持田 智(埼玉医科大学 医学部 消化器内科・肝臓内科)
研究分担者(所属機関)
- 楠本 茂(名古屋市立大学・大学院医学研究科 腫瘍・免疫内科学分野血液腫瘍内科学)
- 井戸 章雄(鹿児島大学医歯学総合研究科 消化器疾患・生活習慣病学)
- 池田 健次(虎の門病院・肝臓病センター・肝臓病内科)
- 別所 正美(埼玉医科大学 医学部 血液内科)
- 檀 和夫(日本医科大学 医学部 血液内科)
- 鈴木 洋通(埼玉医科大学 医学部 腎臓内科)
- 浦 信行(手稲渓仁会病院 総合内科)
- 三村 俊英(埼玉医科大学 医学部 リウマチ・膠原病科)
- 山本 一彦(東京大学大学院 医学系研究科 内科学専攻アレルギーリウマチ学)
- 佐々木 康綱(埼玉医科大学 医学部 国際医療センター腫瘍内科)
- 藤井 博文(自治医科大学 医学部 臨床腫瘍科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
17,568,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
悪性リンパ腫の治療でリツキシマブと副腎皮質ステロイドをHBV既往感染例に投与すると,ウイルス再活性化が生じて重症肝炎を発症する場合がある。その対策として厚労省「坪内班」,「熊田班」はガイドラインを発表したが,これはリツキシマブ以外の免疫抑制薬,抗悪性腫瘍薬による治療も対象としている。そこで,本研究ではリツキシマブ以外の免疫抑制・化学療法を実施する既往感染,キャリア例を対象に再活性化の実態をprospectiveに解明することを目指す。
研究方法
血液45施設,リウマチ・膠原病19施設,腎臓15施設,腫瘍内科18施設からなる計97施設の研究組織を確立し,リツキシマブ以外の免役抑制薬,抗悪性腫瘍薬を投与されるHBV既往感染,キャリア例を登録する。これら症例でHBV-DNAを1ヶ月ごとに測定し,再活性化の頻度と治療法との関連を解析する。再活性化した既往感染例及びキャリア例は核酸アナログ製剤で治療し,ガイドラインの有用性を検証する。また,ウイルス遺伝子の塩基配列を解析し,再活性化に関わるウイルス側要因も解明する。
結果と考察
平成23年2月末日までに180例(血液70例,リウマチ・膠原病84例,腎臓10例,腫瘍内科16例)が登録された。これらのうち,キャリ例は17例(血液3例,リウマチ・膠原病7例,腎臓2例,腫瘍内科5例),既往感染例は163例(血液67例,リウマチ・膠原病77例,腎臓8例,腫瘍内科11例)であり,観察期間は最大16ヶ月である。キャリア例は全例で核酸アナログ製剤の予防投与を行うことで,肝炎を発症せず免疫抑制・化学療法を遂行できている。一方,既往感染例では,初回スクリーニング時に血清HBV-DNA量が2.1 Log copies/mL未満であるが,「検出」された症例が4例(2.5%)存在し,また,7例(4.3%)でHBV再活性化を生じた。再活性化は副腎ステロイドないしはメトトレキサートの単独投与例でも認められ,また,抗悪性腫瘍薬を多剤投与されていた血液領域の症例では血清HBV-DNA量が6.4 Log copies/mLまで上昇した。
結論
リツキシマブ以外の免疫抑制,化学療法でもHBVの再活性化が生じることが明らかとなった。その頻度は経過観察期間が長期になるに従って更に高率になる可能性があり,平成23年度はより多数の症例で,検討を推進する予定である。
公開日・更新日
公開日
2011-06-02
更新日
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