ヒト肝細胞キメラマウスを用いた治療抵抗性の肝炎に関する研究

文献情報

文献番号
201030009A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト肝細胞キメラマウスを用いた治療抵抗性の肝炎に関する研究
課題番号
H20-肝炎・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
茶山 一彰(広島大学病院 広島大学病院 消化器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉里勝利(株式会社フェニックスバイオ)
  • 金子周一(金沢大学)
  • 土方誠(京都大学ウイルス研究所)
  • 高倉喜信(京都大学大学院薬学研究科)
  • 前川伸哉(山梨大学大学院医学工学総合研究部肝疾患地域先端医療システム講座)
  • 松浦善治(大阪大学微生物研究所)
  • 大段秀樹(広島大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 今村道雄(広島大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
68,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は,ヒト肝細胞キメラマウスを使用し,B型肝炎ウイルス(HBV),C型肝炎ウイルス(HCV)の感染実験を行い,感染の成立,パッセージ,薬剤の有効性の評価が可能であることを確認してきた.さらにHBV,HCVのクローンを用いて,リバースジェネティックスの系も構築した.
研究方法
肝炎ウイルス感染ヒト肝細胞キメラマウス,肝炎ウイルス培養系および臨床サンプルを用いて,肝炎ウイルスのウイルス学的解析,各種耐性ウイルスに対する治療薬の効果判定,感染の成立,予防に関する研究を行なった.
結果と考察
これまでに確立したHBVおよびHCV全長クローンを用いたリバースジェネティックスの系を発展させ,本年度,HBx欠損クローンを用いることにより,HBx蛋白がHBVの感染・複製に必須であり,抗ウイルス療法のターゲットとなり得ることを見いだした.HCVに関しては,これまでに確立したgenotype 1a,1b,2a型に加え,2b型HCVのリバースジェネティックスの確立にも成功した.また1b型クローンのCoreやISDR薬剤耐性変異を挿入することにより,変異ウイルスの薬剤耐性能および複製能を検証する系の作製,さらにはCoreやISDR領域にアミノ酸変異を挿入することにより,変異ウイルスのIFN感受性や複製能を解析する系の作製にも成功した.またHCV感染マウスを用いてプロテアーゼ阻害剤投与によるウイルス動態および耐性株出現の検討を行い,さらにはプロテアーゼ阻害剤やポリメラーゼ阻害剤などの異なるHCV蛋白を標的とする薬剤を併用することにより,IFN製剤を使用せずともHCVの排除が可能であることを見いだした.また多数のHCV患者のサンプルを用いてHCVのCoreおよびISDR変異や宿主のIL28B遺伝子多型が,インターフェロンの治療効果と密接に関与していることが明らかとなった.本研究を通じて見いだされたこれら候補遺伝子や治療抵抗性に関与するウイルスおよび宿主因子は,今後のさらなる創薬および新規治療法の開発に応用されるものになると思われる.
結論
構築したHCVクローンをマウスに投与するシステムにより,生体内における変異株の増殖能および薬剤耐性能の検討が可能である.今後,ウイルス感染マウスあるいは多数のHCV患者のサンプルを用いてHCVのCoreおよびISDR変異や宿主のIL28B遺伝子多型が,どのようなメカニズムによりインターフェロンの治療効果に関与しているかを見いだし,治療抵抗性肝炎に対する,治療法の開発が必要である.

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-21
更新日
-

文献情報

文献番号
201030009B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒト肝細胞キメラマウスを用いた治療抵抗性の肝炎に関する研究
課題番号
H20-肝炎・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
茶山 一彰(広島大学病院 広島大学病院 消化器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉里勝利(株式会社フェニックスバイオ)
  • 金子周一(金沢大学)
  • 土方誠(京都大学ウイルス研究所)
  • 高倉喜信(京都大学大学院薬学研究科病態情報薬学分野)
  • 前川伸哉(山梨大学大学院医学工学総合研究部)
  • 松浦善治(大阪大学微生物病研究所)
  • 大段秀樹(広島大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 今村道雄(広島大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は,ヒト肝細胞キメラマウスを使用し,B型肝炎ウイルス(HBV),C型肝炎ウイルス(HCV)の感染実験を行い,感染の成立,パッセージ,薬剤の有効性の評価が可能であることを確認してきた.さらにこれまでHBV,HCVのクローンを用いて,リバースジェネティックスの系も構築している.本研究は,これらの系を応用させ,肝炎ウイルスの新規治療法の開発および新規治療ターゲットとなる分子の探索を行った.
研究方法
肝炎ウイルス感染ヒト肝細胞キメラマウス,肝炎ウイルス培養系および臨床サンプルを用いて,規治療法の開発および新規治療ターゲットとなる分子の探索を行った.
結果と考察
ヒト肝細胞キメラマウスおよびHBV,HCVクローンを用いてリバースジェネティックスの系を世界にさきがけ確立した.これらを応用し,HBx蛋白がHBVの感染・複製に必須であり,抗ウイルス療法のターゲットとなり得ることを見いだした.またgenotype 1a,1b,2aおよび2b型HCVのリバースジェネティックスの系を確立した.1b型クローンのCore,ISDR,NS3領域にアミノ酸変異を挿入し,変異ウイルスの薬剤耐性能および複製能を検証する系を作製した.臨床応用が期待される新規治療法の開発も行った.HIVのentry阻害剤であるPS-ONあるいは肝移植ドナーより抽出した肝由来リンパ球によりHCV感染が予防されること,ソヤサポゲノールB誘導体がIFN効果を増強すること,異なるDAAsを併用することによりIFN製剤を使用せずともHCV排除が可能であることを見いだした.このように肝炎ウイルスを感染させたヒト肝細胞キメラマウスは,ウイルス学的解析,各種耐性ウイルスに対する治療薬の効果判定,新規治療法の開発に有用なモデルであることが示された.また班員により治療のターゲットとなる新規候補化合物や候補遺伝子が見いだされ,さらに多数のHCV患者のサンプルを用いてHCVのCoreおよびISDR変異や宿主のIL28B遺伝子多型が,インターフェロンの治療効果と密接に関与していることを明らかにした.
結論
構築した変異ウイルス感染マウスは肝炎ウイルスの分子生物学的な検討に有用であり,特に薬物耐性の研究には重要な価値を有すると考えられる.

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201030009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
リバースジェネティクス法により,HBVあるいは4種類の遺伝子型のHCV感染マウスの構築に世界に先駆け成功した.この手技を応用することにより種々の変異を有する感染マウスの作製が可能である.変異ウイルス感染マウスは,肝炎ウイルスの分子生物学的検討および抗ウイルス剤に対する感受性や耐性株に対する治療法の開発に非常に有用である.また種々のIL28B遺伝子型のヒト肝細胞を移植したマウスを用いることにより,IL28B遺伝子型が何故IFN治療効果に関与しているか解明の手がかりとなるものと思われる.
臨床的観点からの成果
肝炎ウイルスに対する抗ウイルス療法において,耐性ウイルスの出現が大きな問題となっている.研究を通じて作製した変異ウイルス感染マウスはこの問題点への対策法を構築する動物モデルとして有用である.またHCV感染マウスを用いて開発した新規抗HCV治療法は,いずれも臨床応用への発展が期待できるものである.特に異なるHCV蛋白を標的とした薬剤を併用する治療は,今後,IFN製剤を使用しない新規治療法として,今後のC型慢性肝炎に対する中心的な治療法となる可能性が高い.
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
特記事項なし
その他のインパクト
平成22年6月3日,ホテルグランヴィア広島にて第6回広島肝臓研究センターシンポジウムを開催.全国から約100名の研究者が参加し,討論を行った.

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
38件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
22件
学会発表(国際学会等)
34件
その他成果(特許の出願)
1件
プロスタグランジンI2のアゴニストを含む、C型肝炎ウイルスの感染抑制剤、発明者 土方 誠、阿部雄一、脇田隆字、出願日2010年9月30日、出願番号 特願2010-222045
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tsuge M, Hiraga N, Akiyama R, et al
HBx protein is indispensable for development of viraemia in human hepatocyte chimeric mice
J Gen Virol , 91 , 1854-1864  (2010)
10.1099/vir0.019224-0.
原著論文2
Kamiya N, Iwao E, Hiraga N, et al
Practical Evaluation of a Mouse with Chimeric Human Liver Model for Hepatitis C Virus Infection Using an NS3-4A Protease Inhibitor
J Gen Virol , 91 , 1668-1677  (2010)
10.1099/vir.0.019315-0.
原著論文3
Mishima K, Sakamoto N, Sekine-Osajima Y, et al
Cell culture and in vivo analyses of cytopathic hepatitis C virus mutants
Virology , 405 , 361-369  (2010)
10.1016/j.virol.2010.06.020.
原著論文4
Suda G, Sakamoto N, Itsui Y, et al
IL-6-mediated intersubgenotypic variation of interferon sensitivity in hepatitis C virus genotype 2a/2b chimeric clones
Virology , 407 , 80-90  (2010)
10.1016/j.virol.2010.07.041
原著論文5
Ohara E, Hiraga N, Imamura M,
Elimination of Hepatitis C Virus by Short Term NS3-4A and NS5B Inhibitor Combination Therapy in Human Hepatocyte Chimeric Mice
J Hepatol , 54 , 872-878  (2011)
10.1016/j.jhep.2010.08.033.
原著論文6
Abe H, Imamura M, Hiraga N, et al
ME3738 enhances the effect of interferon and inhibits hepatitis C virus replication both in vitro and in vivo
J Hepatol , 55 (1) , 11-18  (2011)
10.1016/j.jhep.2010.10.017.
原著論文7
Chayama K, Hayes CN, Hiraga N, et al
Animal model for study of human hepatitis viruses
J Gastroenterol Hepatol , 26 , 13-18  (2010)
10.1111/j.1440-1746.2010.06470.x.
原著論文8
Nishi H, Inagi R, Kawada N, et al
Cytoglobin, a novel member of the globin family, protects kidney fibroblasts against oxidative stress under ischemic conditions
Am J Pathol , 178 , 128-139  (2011)
10.1016/j.ajpath.2010.11.011.
原著論文9
Utoh R, Tateno C, Kataoka M, et al
. Hepatic hyperplasia associated with discordant xenogeneic parenchymal-nonparenchymal interactions in human hepatocyte-repopulated mice
Am J Pathol , 177 , 654-665  (2010)
10.2353/ajath.2010.090430.
原著論文10
Honda M, Sakai A, Yamashita T, et al
Hepatic ISG expression is associated with genetic variation in interleukin 28B and the outcome of IFN therapy for chronic hepatitis C
Gastroenterology , 22 , 499-509  (2010)
10.1053/j.gastro.2010.04.049.
原著論文11
Miyakawa N, Nishikawa M, Takahashi Y, et al
Prolonged circulation half-life of interferon γ activity by gene delivery of interferon γ-serum albumin fusion protein in mice
J Pharm Sci , 100 (6) , 2350-2357  (2011)
10.1002/jps.22473.
原著論文12
Takiguchi N,Takanashi Y, Nishikawa M, et al
Positive correlation between the generation of ractive oxygen species and activation/reactivation of transgene expression after hydrodynamic injection into mice.
Pharm Res , 28 (4) , 702-711  (2011)
10.1007/s11095-010-0331-3.
原著論文13
Moriishi K, Shoji I, Mori Y, et al
Involvement of PA28g in the propagation of hepatitis C virus
Hepatology , 52 , 411-420  (2010)
10.1002/hep.23680.
原著論文14
Tani H, Shiokawa M, Kaname Y, et al
Involvement of ceramide in the propagation of Japanese encephalitis virus
J Virol , 84 , 2798-2807  (2010)
10.1128/JVI.02499-09.
原著論文15
Fukuhara T, Taketomi A, Motomura T, et al
Variants in IL28B in liver recipients and donors correlate with response to peginterferon and ribavirin therapy for recurrent hepatitis C
Gastroenterology , 39 , 1577-1585  (2010)
10.1053/j.gastro.2010.07.058
原著論文16
Ito M, Masumi A, Mochida K, et al
Peripheral B Cells May Serve as a Reservoir for Persistent Hepatitis C Virus Infection
J Innate Immun , 2 , 607-617  (2010)
10.1159/000317690.
原著論文17
Enomoto N, Maekawa S.
HCV genetic elements determining the early response to peginterferon and ribavirin therapy
Intervirology , 53 (1) , 66-69  (2010)
10.11591000252787.
原著論文18
Itakura J, Kurosaki M, Itakura Y, et al
Reproducibility and usability of chronic virus infection model using agent-based simulation; comparing with a mathematical model
Biosystems , 99 (1) , 70-78  (2010)
10.10161j.biosystems.2009.09.001.
原著論文19
Y. Ushitora, H. Tashiro, S. Takahashi, H. et al
Splenectomy in Chronic Hepatic Disorders: Portal Vein Thrombosis and Improvement of Liver Function
Dig Surg , 28 , 9-14  (2011)
10.1159/000321886.
原著論文20
M. Doskali, Y. Tanaka, M. Ohira, K. et al
Possibility of Adoptive Immunotherapy With Peripheral Blood-derived CD3-CD56+ and CD3+CD56+ Cells for Inducing Antihepatocellular Carcinoma and Antihepatitis C Virus Activity
J Immunother , 34 , 129-138  (2011)
10.10971CJI.0b013e3182048c4e.

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201030009Z