文献情報
文献番号
201030008A
報告書区分
総括
研究課題名
非アルコール性脂肪性肝疾患の病態解明と診断法、治療法の開発に関する研究
課題番号
H20-肝炎・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
岡上 武(社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会吹田病院 内科)
研究分担者(所属機関)
- 高後 裕(旭川医科大学医学部・消化器血液腫瘍制御内科学)
- 河田 純男(山形大学医学部・消化器内科学)
- 小池 和彦(東京大学大学院医学系研究科・消化器内科学)
- 植木 浩二郎(東京大学大学院医学系研究科・糖尿病・代謝内科学)
- 有井 滋樹(東京医科歯科大学大学院医歯薬学総合研究科・肝胆膵・総合外科学 )
- 渡辺 純夫(順天堂大学医学部・消化器内科学)
- 橋本 悦子(東京女子医科大学・消化器内科学・消化器病学)
- 安居 幸一郎(京都府立医科大学大学院医学研究科・消化器病学)
- 竹原 徹郎(大阪大学大学院医学系研究科・消化器内科学・消化器病学)
- 西原 利治(高知大学教育研究部医療学系・消化器内科学)
- 宇都 浩文(鹿児島大学大学院医歯薬総合研究科・消化器疾患・生活習慣病学・消化器病学)
- 松田 文彦(京都大学大学院医学研究科付属ゲノム医学センター学・疾患ゲノム疫学解析分野)
- 篁 俊成 (金沢大学医薬保健研究域医学系恒常性制御学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
36,509,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
非飲酒者でありながら大量飲酒者肝障害におけるアルコール性肝障害(脂肪肝、アルコール性肝炎、肝硬変、肝癌)と同様の病変が肝臓に見られる病気を非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と称し、この中には予後良好の単純性脂肪肝(SS)と肝硬変や肝癌に進行する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)がある。NAFLD患者の多くは肥満・糖尿病・高血圧・脂質異常症などのいわゆる生活習慣病を有し、わが国は1000万人ものNAFLD患者がいて、うち200万人はNASHと推定されているが、その病態・予後・治療などは不明な点が多い。これらを明らかにするために、多数例の糖尿病患者の肝障害の実態、NASH肝癌の特徴やNASH発症の遺伝的素因などを明らかにする事とした。
研究方法
1)糖尿病患者の肝障害実態解明の大規模データベース作成,2)NASH起因肝癌の実態解明,3)血液生化学検査によるSSとNASHの鑑別法,4)遺伝子解析(ゲノムワイドスキャンによるSNP解析)によるNASH発症感受性遺伝子の解析,5)NASH治療指針の確立
結果と考察
1)糖尿病患者5583例(男性:3189例、女性:2394例)の30%以上に肝障害を認め、肝炎感染者やアルコール性肝障害を合併する者は少数で、肝障害患者の80%以上はNAFLDで、肝組織検査ではNAFLDの60%以上がNASH。2)NASH起因肝癌87例では男性54例、女性33例で、平均年齢は72歳(68-75歳)で多くは進行したNASHから癌が発生したが、男性例ではあまり進行していないNASHからも発癌し、腫瘍マーカー正常例が多く、肝癌早期発見には定期的な画像検査が重要と判明。3)血液検査の中で血清フェリチン値、インスリン値(IRI)、線維化マーカーであるⅣ型コラーゲン7sを組み合わせると、SSとNASHの鑑別が可能となった。4)NASH発症・進展の感受性遺伝子を染色体22番上に同定し、その遺伝子はPNPLA3であることが判明した。SNP解析に基づく、長期予後の検討が重要である。
結論
1)糖尿病患者では高頻度に肝障害がみられ、その約8割はNAFLDで、それに占めるNASHは高頻度。2)NASH起因肝癌のほとんどは65-75歳で、女性では進行したNASHを背景に肝癌が発生するが、男性では比較的軽度の線維化例からも発癌。腫瘍マーカー陰性特にほとんどの例はAFPが陰性。3)血清フェリチン、IRI,Ⅳ型コラーゲン7Sを組み合わせたスコアー(NAFIC score)で単純性脂肪肝とNASHの鑑別に有用。4)22番染色体のPNPLA3のSNPがNASHの発症・進展の感受性遺伝子と判明。
公開日・更新日
公開日
2011-06-02
更新日
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