肝発癌抑制を視野に入れた肝硬変の栄養療法のガイドライン作成を目指した総合的研究

文献情報

文献番号
201030005A
報告書区分
総括
研究課題名
肝発癌抑制を視野に入れた肝硬変の栄養療法のガイドライン作成を目指した総合的研究
課題番号
H20-肝炎・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 一幸(岩手医科大学医学部 消化器・肝臓内科)
研究分担者(所属機関)
  • 森脇久隆(岐阜大学大学院医学系研究科 消化器病態内科学)
  • 加藤章信(岩手医科大学医学部 消化器・肝臓内科)
  • 高後裕(旭川医科大学医学部 内科学講座消化器・血液腫瘍抑制御内科学分野)
  • 鈴木壱知(獨協医科大学越谷病院 消化器内科)
  • 西口修平(兵庫医科大学内科学 肝胆膵科)
  • 坂井田功(山口大学大学院医学系研究科 消化器病態内科学)
  • 片山和宏(大阪府立成人病センター 肝胆膵内科)
  • 上野義之(国立学校法人東北大学医学研究科 消化器病態学)
  • 羽生大記(大阪市立大学大学院 生活科学研究科)
  • 遠藤龍人(岩手医科大学 消化器・肝臓内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
8,820,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝発癌抑制を視野に入れたわが国における肝硬変の栄養療法のガイドライン作成を目指した総合的研究を行う。
研究方法
研究分担者及び研究協力者による多施設共同研究を実施し、合わせて肝硬変の病態栄養および治療に関わる臨床的研究を継続した。

結果と考察
多施設共同研究として、1.分岐鎖アミノ酸(BCAA)顆粒製剤による肝癌治療後の再発抑制効果に関する臨床共同研究、2.肝硬変患者における栄養摂取状況と病態の進展に関する大規模実態調査、3.肝硬変に伴う高アンモニア血症に対するノベルジンカプセルのプラセボ対照二重盲検試験、が進められ症例を集積した。しかし、多施設共同研究1と3については目標症例数が得られず班研究終了後も研究継続とした。個別研究成果:1.肝硬変患者の肥満度を成因別および性差で調査し、肝硬変全体では約30%がBMI25以上であり、成因ならびに性差によりその頻度は異なる。2.脂肪性肝疾患患者、慢性肝炎患者および肝硬変患者の摂取総エネルギー量、三大栄養素の摂取量、鉄および亜鉛摂取量について比較検討したところ、炭水化物摂取量、脂質エネルギー比で差異を認めるが、亜鉛と鉄摂取量には明らかな差異を認めない。3.C型肝硬変患者では生活活動量の低下、身体計測における筋肉量と握力の低下を認める。4.肝硬変患者の血清非トランスフェリン結合鉄濃度は健常者に比し有意に高値を示す。5.エネルギー代謝異常の指標である非蛋白呼吸商の代替マーカーとして身体計測値である%ACと%AMCが有効である。6.非代償性肝硬変患者の血漿L-Cystine濃度は腎機能を反映し、L-Cystine/L-Glutamin比は血清TNFα値および末梢血単核球数と相関する。7.亜鉛補充療法を施行した肝硬変患者の発癌率と死亡率は、血清亜鉛濃度が上昇した反応例で低い。8.市民公開講座を2回開催し、出席者へのアンケート調査を実施した。
結論
本研究班の成果ならびにこれまでの論文発表を基に、肝発癌抑制を視野に入れた肝硬変の栄養療法のガイドライン(案)を提示した。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-21
更新日
-

文献情報

文献番号
201030005B
報告書区分
総合
研究課題名
肝発癌抑制を視野に入れた肝硬変の栄養療法のガイドライン作成を目指した総合的研究
課題番号
H20-肝炎・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 一幸(岩手医科大学医学部 消化器・肝臓内科)
研究分担者(所属機関)
  • 森脇 久隆(岐阜大学大学院医学系研究科 消化器病態内科学)
  • 加藤 章信(岩手医科大学医学部 消化器・肝臓内科)
  • 高後 裕(旭川医科大学医学部 内科学講座消化器・血液腫瘍抑制御内科学分野)
  • 鈴木 壱知(獨協医科大学越谷病院 消化器内科)
  • 西口 修平(兵庫医科大学内科学 肝胆膵科)
  • 坂井田 功(山口大学大学院医学系研究科 消化器病態内科学)
  • 片山 和宏(大阪府立成人病センター 肝胆膵内科)
  • 上野 義之(国立学校法人東北大学医学研究科 消化器病態学)
  • 羽生 大記(大阪市立大学大学院 生活科学研究科)
  • 遠藤 龍人(岩手医科大学医学部 消化器・肝臓内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国ではウイルス性肝硬変症が多いが高齢化が進んでおり、抗ウイルス療法を享受出来ない例も多い。また最近はNASHからの肝硬変や肝癌例も増加してきている。わが国における肝硬変患者に対する栄養療法は、日本病態栄養学会でのガイドラインやESPENのガイドラインを用いて行われているが、鉄制限食、分岐鎖アミノ酸(BCAA)療法、分割食などの位置づけを含めて未だ不十分である。そこで、肝発癌抑制を視野に入れ、わが国の肝硬変患者に見合った栄養療法のガイドラインを作成することを目的に研究を行なった。
研究方法
研究分担者10名および研究協力者による研究班を組織し、栄養療法ガイドラインを作成するための多施設共同研究および病態栄養と治療法に関する基礎的・臨床的研究を行なった。また市民公開講座を開催し患者からのアンケート調査を行なった。
結果と考察
1.肝硬変全体では約30%がBMI25以上であり、成因と性差でその頻度は異なる。また生活活動量は低下しており、身体計測では筋肉量と握力が低下している。2.肝硬変患者の栄養摂取状態(摂取総エネルギー・三大栄養素摂取量、鉄・亜鉛・食塩摂取量など)は脂肪性肝疾患および慢性肝炎の患者と異なる。3.鉄代謝異常を鋭敏に反映する血清非トランスフェリン結合鉄の測定法を確立し、肝硬変患者では健常者に比し有意に高値を示した。4.エネルギー代謝異常の指標である非蛋白呼吸商の代替マーカとして身体計測値(%ACと%AMC)、血清マーカ(TNFαとその受容体、グレリン、遊離脂肪酸)を示した。5.非代償性肝硬変患者のアミノ酸インバランスは末梢血樹状細胞数・機能と密接に関連する。6.亜鉛補充療法が肝硬変患者の発癌率と死亡率の改善に寄与する基礎的データを得た。7.市民公開講座出席者へのアンケート調査を実施し、栄養食事療法のリーフレット作成ための資料を得た。8.脂肪性肝疾患モデルマウスを用いてBCAA顆粒製剤の肝発癌抑制効果を確認した。9.分割食(LES)の耐糖能異常の改善効果を確認し、その実施法と併用療法について提示した。10.研究班の成果とこれまでの論文発表を基に、肝発癌抑制を視野に入れた肝硬変の栄養療法のガイドライン(案)を作成した。
結論
肝発癌抑制を視野に入れた肝硬変の栄養療法のガイドのライン(案)を提示した。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201030005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
慢性肝疾患患者の栄養摂取状況と肥満度を含めた栄養代謝病態に関する全国多施設調査の結果に基づき、肝発癌抑制を視野に入れた肝硬変の栄養療法のガイドライン(案)2010を提示し、その概要を2012年英文誌(Hepatol Res)し提示した(文献参照)。ウイルス性肝硬変患者の高齢化が進み、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)からの肝硬変や発癌例が増加しているわが国の現状を踏まえた指針として位置づけられ、今後の検証が必要である。
臨床的観点からの成果
肝硬変の栄養摂取状態や生活活動量、筋肉量・筋力、鉄代謝動態は脂肪性肝疾患や慢性肝炎患者と異なること、分岐鎖アミノ酸(BCAA)療法、就寝前補食療法(LES)、亜鉛補充療法の位置づけを明らかにした。また、エネルギー代謝異常の指標である非蛋白呼吸商の代替マーカーとして身体計測値(%ACと%AMC)、血清マーカー(TNFαとその受容体、グレリン、遊離脂肪酸)が有用であることを示した。本ガイドラインの普及には管理栄養士への啓発が必須でありその活動を行っている。
ガイドライン等の開発
研究班発足後3年間における研究成果、国内外の文献的考察ならびに研究分担者と研究協力者の意見を取り入れ、「肝発癌抑制を視野に入れた肝硬変の栄養療法のガイドライン(案)2010」を提示した。
その他行政的観点からの成果
ガイドラインの立案や市民公開講座を通して慢性肝炎から肝硬変、さらには肝癌への進展抑制を期待した栄養食事療法を啓発することにより、肝疾患に携わる医師や管理栄養士に対して極めて有益かつ実効的な医療情報を提供するとともに、現在国を挙げて取り組んでいる「肝癌撲滅」の施策に大きなインパクトを与えるものと期待される。
その他のインパクト
東京および神戸において市民公開講座を開催した。管理栄養士とともに患者・支援者に対して肝硬変の栄養食事療法と研究班の成果を啓発するとともに、同時に行ったアンケート調査に基づいて患者の視点にたった「肝硬変患者向け栄養療法ガイド(リーフレット)」を作成予定である。また、2012年にポケット版のリーフレットを作成し、主任研究者が出席した栄養関連の講演会・研究会で会員に配布し、本ガイドラインの普及と啓発活動を行った。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
14件
その他論文(和文)
23件
その他論文(英文等)
13件
学会発表(国内学会)
62件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
市民公開講座(東京・神戸) ガイドライン案

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Suzuki K, Endo R, Kohgo Y, et al.
Guidelines on nutritional management in Japanese patients with liver cirrhosis from the perspective of preventing hepatocellular carcinoma
Hepatol Res , 42 (7) , 621-626  (2012)
原著論文2
Kuroda H, Kasai K, Endo R, Takikawa Y and Suzuki K, et al
Changes in liver function parameters after percutaneous radiofrequency ablation therapy in patients with hepatocellular carcinoma.
Hepatol Res , 40 (5) , 550-554  (2010)
原著論文3
Shiraki M, Terakura Y, Iwasa J, Shimizu M, Miwa Y, Murakami N, Nagaki M, Moriwaki H.
Elevated serum tumor necrosis factor-alpha and soluble tumor necrosis factor receptors correlate with aberrant energy metabolism in liver cirrhosis.
Nutrition , 26 (3) , 269-275  (2010)
原著論文4
Iwasa J, Shimizu M, Shiraki M, Tsurumi H, Tanaka T, Moriwaki H, et al
Dietary supplementation with branched-chain amino acids suppresses diethylnitrosamine-induced liver tumorigenesis in obese and diabetic C57BL/KsJ-db/db mice.
Cancer Sci , 101 (2) , 460-467  (2010)
原著論文5
Terakura Y, Shiraki M, Nishimura K, Iwasa J, Nagaki M, Moriwaki H.
Indirect calorimetry and Anthropometry to Estimate Energy Metabolism in Patients with Liver Cirrhosiis
J Nutr Sci Vitaminol , 56 (6) , 372-379  (2010)
原著論文6
Harima Y, Yamazaki T, Hamabe S, Saeki I, Okita K, Terai S, Sakaida I.
Effect of a late evening snack using branched-chain amino acid-enriched nutrients in patients undergoing hepatic arterial infusion chemotherapy for advanced hepatocellular carcinoma.
Hepatol Res , 40 (6) , 574-584  (2010)
原著論文7
Michitaka K, Nishiguchi S, Aoyagi Y, Hiasa Y, Tokumoto Y, Onji M.
Etiology of liver cirrhosis in Japan: a nationwide survey.
J Gastroenterol , 45 (1) , 86-94  (2010)
原著論文8
Ikezawa K, Naito M, Yumiba T, Maeda K, Michida T, Katayama K, et al.
Splenectomy and antiviral treatment for thrombocytopenic patients with chronic hepatitis C virus infection.
J Viral Hepat , 17 (7) , 488-492  (2010)
原著論文9
Kazutomo Suzuki,Kagemasa Kagawa,Kazuhito Koizumi, Kazuyoshi Suzuki,Hiromi Katayama, Miwa Sugawara
Effects of late evening snck on diurnal plasma glucose profile in patients with chronic viral liver disease.
Hepatol Res , 40 (9) , 887-893  (2010)
原著論文10
Kuroda H, Ushio A, Miyamoto Y, Sawara K, Oikawa K, Kasai K, Endo R, Takikawa Y and Suzuki K
Effects of branched-chain amino acid-enriched nutrient for patients with hepatocellular carcinoma following radiofrequency ablation: a one-year prospective trial.
J Gastroenterol Hepatol , 25 (9) , 1550-1555  (2010)
原著論文11
Obara N, Fukushima K, Ueno Y, Sato K, Tsuduki T, Ishida K, Shimosegawa T, et al
Possible involvement and the mechanisms of excess trans-fatty acid consumption in severe NAFLD in mice.
J Hepatol , 53 (2) , 326-334  (2010)
原著論文12
Habu D, Nishiguchi S, Nakatani S, Lee C, Shiomi S, et al
Comparison of the effect of BCAA granules on between decompensated and compensated cirrhosis.
Hepatogastroenterology , 56 (96) , 1719-1723  (2009)
原著論文13
Kawamura E, Habu D, Morikawa H, Enomoto M, Saeki S, Kawada N, Shiomi S, et al
A randomized pilot trial of oral branched-chain amino acids in early cirrhosis: validation using prognostic markers for pre-liver transplant status.
Liver Transpl , 15 (7) , 790-797  (2009)
原著論文14
片山和宏, 山口敦子, 加藤道夫, 中村武史, 高松正剛, 羽生大記, 伊藤大, 金子晃, 高橋友和
慢性肝疾患患者を対象とした肝臓病教室での情報提供に対する医療者および患者の意識調査に関する検討
肝臓 , 60 (7) , 356-361  (2009)
原著論文15
Kakazu E,Ueno Y, Kondo Y, Fukushima K, Shiina M, Inoue J, Tamai K, Ninomiya M, Shimosegawa T.
Branched chain amino acids enhance the maturation and function of myeloid dendritic cells ex vivo in patients with advanced cirrhosis.
Hepatology , 50 (6) , 1936-1945  (2009)
原著論文16
Watanabe Y, Kato A, Suzuki K, et al.
Selective alterations of brain dopamine D2 receptor binding in cirrhotic patients: results of 11CN-methyspiperone PET study.
Metab Brain Dis , 23 (3) , 265-274  (2008)
原著論文17
Korenaga K, Korenaga M, Uchida K, Yamasaki T, Sakaida I.
Effects of a late evening snack combined with alpha-glucosidase inhibitor on liver cirrhosis.
Hepatol Res , 38 (11) , 1087-1097  (2008)
原著論文18
Kato A, Watanabe Y, Sawara K, Suzuki K.
Diagnosis of sub-clinical hepatic encephalopathy by neuropsychological tests (NT-tests).
Hepatol Res , 38 , 112-127  (2008)
原著論文19
Kohgo Y, Ohtake T, Ikuta K, Suzuki Y, Torimoto Y, Kato J.
Dysregulation of systemic iron metabolism in alcoholic liver diseases.
J Gastroenterol Hepatol , 23 (1) , 78-81  (2008)
原著論文20
Ohfuji S, Fukushima W, Tanaka T, Habu D, Nishiguchi S, Shiomi S, Hirota Y,et al
Does a late evening meal reduce the risk of hepatocellular carcinoma among patients with chronic hepatitis C?
Hepatol Res , 38 (9) , 860-868  (2008)

公開日・更新日

公開日
2016-05-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201030005Z