癌胎児性抗原を利用した肝がんの超早期診断法と発症予防ワクチンの開発

文献情報

文献番号
201030002A
報告書区分
総括
研究課題名
癌胎児性抗原を利用した肝がんの超早期診断法と発症予防ワクチンの開発
課題番号
H20-肝炎・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
中面 哲也(独立行政法人国立がん研究センター 東病院 臨床開発センター がん治療開発部)
研究分担者(所属機関)
  • 野村 和弘(東京労災病院)
  • 藤山 重俊(NTT西日本九州病院)
  • 本間 定(東京慈恵会医科大学 DNA医学研究所)
  • 小井戸 薫雄(東京慈恵会医科大学 慈恵医大附属柏病院 )
  • 豊田 秀徳(大垣市民病院)
  • 河島 光彦(独立行政法人国立がん研究センター 東病院)
  • 西村 泰治(熊本大学 大学院生命科学研究部)
  • 千住 覚(熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
22,226,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝細胞がんの超早期診断法と発症予防ワクチンの開発を主な目的とし、肝細胞がんの新規免疫細胞療法の開発も目指す。
研究方法
1.肝細胞がんの超早期診断法の開発
2.肝細胞がんのワクチンの開発
3.CTL療法の開発
4.iPS細胞由来の免疫細胞療法の開発
結果と考察
1.肝細胞がんの術後再発、および慢性肝炎・肝硬変患者からの発がんの超早期診断を目指して前向きの検体収集を行い、AFP、AFP-L3分画、DCP、β2-ミクログロブリン、GPC3および抗GPC3-IgG抗体について経時的変化を解析した。本研究期間内にはこれらのマーカーの超早期診断マーカーとしての有用性を証明するにはいたらなかったが、プロトアレイを用いた網羅的解析では期待できる抗体を多数見出した。また、肝細胞がんにおいて、ウイルスを使用した血中循環がん細胞検出技術が適用可能であることを示した。
2.進行肝細胞がん患者を対象としたGPC3ペプチドワクチンの臨床第Ⅰ相試験の結果により、製薬企業への導出が実現した。
3.新規CTL誘導法により、簡便な方法で約50mlの採血量から細胞移入療法を行う数のCTLを誘導することが可能となった。NOD/Scidマウスを用いたin vivo試験において、GPC3特異的CTLとγδT細胞、それぞれに起因する抗腫瘍効果が確認された。また、これまでに樹立したGPC3ペプチド特異的CTLクローンのT細胞受容体(TCR)遺伝子を単離しており、TCR遺伝子導入細胞移入療法へ向けた検討も行っている。
4.iPS細胞は、がんに対する免疫療法を行うための樹状細胞のソースとしてのみならず、がんに対して直接的に抑制効果を発揮するマクロファージを作成するための細胞ソースとしても有用であることが示された。
結論
肝細胞がんの超早期診断法の開発においては、プロトアレイを用いた網羅的解析で期待できる抗体を多数見出し、ウイルスを使用した血中循環がん細胞検出技術の可能性を示した。GPC3ペプチドワクチンの製薬企業への導出が実現した。GPC3特異的CTL の大量培養が可能になり、GPC3ペプチド特異的CTLクローンのTCR遺伝子導入細胞移入療法の開発も実施している。iPS細胞から樹状細胞やマクロファージを誘導することができた。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

文献情報

文献番号
201030002B
報告書区分
総合
研究課題名
癌胎児性抗原を利用した肝がんの超早期診断法と発症予防ワクチンの開発
課題番号
H20-肝炎・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
中面 哲也(独立行政法人国立がん研究センター 東病院 臨床開発センター がん治療開発部)
研究分担者(所属機関)
  • 野村 和弘(東京労災病院)
  • 藤山 重俊(NTT西日本九州病院)
  • 本間 定(東京慈恵会医科大学 DNA医学研究所)
  • 小井戸 薫雄(東京慈恵会医科大学 慈恵医大附属柏病院)
  • 豊田 秀徳(大垣市民病院)
  • 河島 光彦(独立行政法人国立がん研究センター 東病院)
  • 西村 泰治(熊本大学 大学院生命科学研究部)
  • 千住 覚(熊本大学 大学院生命科学研究部)
  • 木下 平(独立行政法人国立がん研究センター 東病院)
  • 古瀬 純司(杏林大学 医学部)
  • 池田 公史(独立行政法人国立がん研究センター 東病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝細胞がんの超早期診断法と発症予防ワクチンの開発を主な目的とし、肝細胞がんの新規免疫細胞療法の開発も目指す。
研究方法
1.肝細胞がんの超早期診断法の開発
2.肝細胞がんのワクチンの開発
3.CTL療法の開発
4.iPS細胞由来の免疫細胞療法の開発
結果と考察
1.一部の慢性肝炎・肝硬変患者の末梢血中に検出されるCTLや様々な血清マーカーが、CTで検出されない超早期のがんを診断している可能性を示し、多くの肝硬変患者をもつ4施設と超早期診断法の有効性を検証する大規模な臨床疫学研究を開始した。本研究期間内には既存のマーカーと我々が同定したマーカーの超早期診断マーカーとしての有用性を証明するにはいたらなかったが、プロトアレイを用いた網羅的解析では期待できる抗体を多数見出した。また、肝細胞がんにおいて、ウイルスを使用した血中循環がん細胞検出技術が適用可能であることを示した。
2.進行肝細胞がん患者を対象としたGPC3ペプチドワクチンの臨床第Ⅰ相試験を実施した。その結果により、製薬企業への導出が実現した。
3.GPC3ペプチド特異的CTLクローンを複数樹立した。TCR遺伝子のクローニングを進めており、TCR遺伝子導入細胞移入療法へ向けた検討を行っている。GPC3ペプチドワクチン投与患者の少量のPBMC(200万個)から、新規CTL培養法を用いて、GPC3ペプチド特異的CTLが大量に誘導可能であることが確認された。
4.iPS細胞は、がんに対する免疫療法を行うための樹状細胞のソースとしてのみならず、がんに対して直接的に抑制効果を発揮するマクロファージを作成するための細胞ソースとしても有用であることが示された。
結論
肝細胞がんの超早期診断法の開発においては、本研究期間内には有用性を証明するにはいたらなかったが、プロトアレイを用いた網羅的解析で期待できる抗体を多数見出し、ウイルスを使用した血中循環がん細胞検出技術の可能性を示した。GPC3ペプチドワクチンの臨床第Ⅰ相試験を実施し、GPC3ペプチドワクチンの製薬企業への導出が実現した。GPC3ペプチド特異的CTLクローンを複数樹立し、GPC3特異的CTL の大量培養が可能になった。iPS細胞から樹状細胞やマクロファージを誘導することができた。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201030002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
GPC3ペプチドワクチン投与患者の末梢血単核球(PBMC)からGPC3ペプチド特異的キラーT細胞(CTL)クローンを複数樹立した。TCR遺伝子のクローニングを進めており、TCR遺伝子導入細胞移入療法へ向けた検討を行っている。GPC3ペプチドワクチン投与患者の少量のPBMC(200万個)から、新規CTL培養法を用いて、GPC3ペプチド特異的CTLが大量に誘導可能であることが確認された。iPS細胞から樹状細胞やマクロファージを誘導することができた。
臨床的観点からの成果
進行肝細胞がん患者を対象にGPC3ペプチドワクチンの臨床第Ⅰ相試験を実施して、安全性とほぼ全例でのペプチド特異的CTLの誘導効果を確認した。また、複数の症例でワクチン投与後の腫瘍内に多数のCTLの浸潤を確認できた。33例中1例ではあるが、著明な腫瘍縮小効果を認めた。以上の結果より製薬企業への導出が実現した。
ガイドライン等の開発
特記事項なし。
その他行政的観点からの成果
特記事項なし。
その他のインパクト
GPC3ペプチドワクチンについては、テレビでは、平成21年10月27日テレビ朝日「たけしの本当は怖い家庭の医学」がんになっても長生きできるSP、平成22年1月27日MRO北陸放送「がん患者を救え!ペプチドワクチン」、平成22年5月4日テレビ朝日(関東エリア)「医療最前線 がんに負けない!」に取り上げられ、週刊誌では、平成22年に週刊東洋経済、サンデー毎日、週刊ポストに取り上げられた。がんの超早期診断法の開発については、平成22年に週刊東洋経済に取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
53件
その他論文(和文)
46件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
109件
学会発表(国際学会等)
22件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Motomura Y, Ikuta Y, Nakatsura T, et al.
HLA-A2 and -A24-restricted Glypican-3-derived peptide vaccine induce Specific CTLs: Preclinical study using mice.
International Journal of Oncology , 32 (5) , 985-990  (2008)
原著論文2
Shirakawa H, Kuronuma T, Nakatsura T, et al.
Glypican-3 is a useful diagnostic marker for component of Hepatocellular Carcinoma in Human Liver Cancer.
International Journal of Oncology , 34 , 649-656  (2009)
原著論文3
Shirakawa H, Suzuki H, Nakatsura T, et al.
Glypican-3 expression is correlated with poor prognosis in hepatocellular carcinoma.
Cancer Science , 100 (8) , 1403-1407  (2009)
原著論文4
Hayashi E, Motomura Y, Nakatsura T, et al.
Detection of glypican-3-specific CTLs in chronic hepatitis and liver cirrhosis.
Oncology Reports , 22 , 149-154  (2009)
原著論文5
Senju S, Haruta M, Matsunaga Y, et al.
Characterization of dendritic cells and macrophages generated by directed differentiation from mouse induced pluripotent stem cells.
Stem Cells , 27 , 1021-1031  (2009)
原著論文6
Inoue M, Senju S, Hirata S, et al.
An in vivo model of priming of antigen-specific human CTL by Mo-DC in NOD/Shi-scid IL2rγnull(NOG) mice.
Immunology Letters , 126 , 67-72  (2009)
原著論文7
Fukushima S, Hirata S, Senju S, et al.
Multiple antigen-targeted immunotherapy with α-galactosylceramide-loaded and genetically engineered dendritic cells derived from embryonic stem cells.
Journal of Immunotherapy , 32 , 219-231  (2009)
原著論文8
Nobuoka D, Kato Y, Nakatsura T, et al.
Postoperative serum α-fetoprotein level is a useful predictor of recurrence after hepatectomy for hepatocellular carcinoma.
Oncology Reports , 24 (2) , 521-528  (2010)
原著論文9
Saito Y, Oba N, Nakatsura T, et al.
Identification of β2-microgloblin as a candidate for early diagnosis of imaging invisible hepatocellular carcinoma in patient with liver cirrhosis.
Oncology Reports , 23 (5) , 1325-1330  (2010)
原著論文10
Yoshikawa T, Nakatsugawa M, Nakatsura T, et al.
HLA-A2-restricted glypican-3 peptide-specific CTL clones induced by peptide vaccine show high avidity and antigen-specific killing activity against tumor cells.
Cancer Science , 102 (5) , 918-925  (2011)
原著論文11
Sawada Y, Yoshikawa T, Nakatsura T, et al.
Phase I trial of glypican-3-derived peptide vaccine for advanced hepatocellular carcinoma showed immunological evidence and potential for improving overall survival.
Clinical Cancer Research , 18 (13) , 3686-3696  (2012)
原著論文12
Nobuoka D, Motomura Y, Nakatsura T, et al.
Radiofrequency ablation for hepatocellular carcinoma induces glypican-3 peptide-specific cytotoxic T lymphocytes.
International Journal of Oncology , 40 (1) , 63-70  (2012)
原著論文13
Sawada Y, Yoshikawa T, Nakatsura T, et al.
Remarkable tumor lysis in a hepatocellular carcinoma patient immediately following glypican-3-derived peptide vaccination: An autopsy case.
Human Vaccines and Immunotherapeutics , 9 (6) , 1228-1233  (2013)
原著論文14
Nobuoka D, Yoshikawa T, Nakatsura T, et al.
Intratumoral peptide injection enhances tumor cell antigenicity recognized by cytotoxic T lymphocytes: a potential option for improvement of antigen-specific cancer immunotherapy.
Cancer Immunology Immunotherapy , 62 (4) , 639-652  (2013)
原著論文15
Nobuoka D, Yoshikawa T, Nakatsura T, et al.
Peptide vaccines for hepatocellular carcinoma.
Human Vaccines and Immunotherapeutics , 9 (1) , 210-212  (2013)
原著論文16
Nobuoka D, Yoshikawa T, Nakatsura T, et al.
Peptide intra-tumor injection for cancer immunotherapy:Enhancement of tumor cell antigenicity is a novel and attractive strategy.
Human Vaccines and Immunotherapeutics , 9 (6) , 1234-1236  (2013)
原著論文17
Ofuji K, Saito K, Nakatsura T, et al.
Critical analysis of the potential of targeting GPC3 in hepatocellular carcinoma.
Journal of Hepatocellular Carcinoma , 1 , 35-42  (2014)
原著論文18
Sawada Y, Yoshikawa T, Nakatsura T, et al.
Programmed death-1 blockade enhances the antitumor effects of peptide vaccine-induced peptide-specific cytotoxic T lymphocytes.
International Journal of Oncology , 46 (1) , 28-36  (2015)

公開日・更新日

公開日
2016-05-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201030002Z