肝癌早期発見を目的とした分子マーカーおよび画像診断システムの開発

文献情報

文献番号
201030001A
報告書区分
総括
研究課題名
肝癌早期発見を目的とした分子マーカーおよび画像診断システムの開発
課題番号
H20-肝炎・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
有井 滋樹(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 松井 修(金沢大学大学院医学系研究科循環医科学専攻血管病態制御学講座経血管診療学)
  • 佐田 通夫(久留米大学 医学部 内科学講座消化器内科部門)
  • 青柳 豊(新潟大学 教育研究院医歯学系(医学部第三内科))
  • 田中 博(東京医科歯科大学 大学院生命情報科学教育部)
  • 森安 史典(東京医科大学 消化器内科(内科学第4講座))
  • 川崎 誠治(順天堂大学 医学部 肝胆膵外科)
  • 角谷 眞澄(信州大学 画像医学講座)
  • 泉 並木(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 高山 忠利(日本大学 医学部 消化器外科)
  • 國土 典宏(東京大学医学部附属病院 肝胆膵外科)
  • 稲澤 譲治(東京医科歯科大学難治疾患研究所 ゲノム応用医学研究部門 分子細胞遺伝)
  • 山本 雅一(東京女子医科大学 消化器外科)
  • 飯島 尋子(兵庫医科大学 超音波センター、内科 肝胆膵科)
  • 佐賀 恒夫(放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター)
  • 坂元 亨宇(慶応義塾大学医学部 病理学)
  • 井本 逸勢(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 田中 真二(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 肝胆膵・総合外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
85,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
登録症例の再発、生命予後などを観察することにより新たな分子マーカーを同定し、早期画像診断については乏血性肝細胞癌の診断法を確立する。
研究方法
Ⅰ.分子マーカーによる早期発見システムの開発;(1)病期および再発に関するデータから高感度AFPL3分画の意義について解析する。(2)切除標本の癌部、非癌部組織を用いたDNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子解析を行い、早期再発と相関する遺伝子群を解析し、同定した遺伝子に対してgene set enrichment analysis (GSEA)解析を行う。さらに多施設症例のティッシュマイクロアレイ解析によってvalidationを行う。Ⅱ.早期画像診断システムの開発;EOB-MRIの診断能を従来の診断法と以下の点について比較した。(1)多血性古典的肝細胞癌 ①動脈相での動脈性vascularity描出についてMDCTとの比較②動脈性vascularityの描出について造影超音波との比較 (2)乏血性高分化肝細胞癌 ①検出能についてMDCT, 超音波診断との比較②結節の悪性度診断についての従来法との比較③EOB肝細胞相低信号、動脈優位相乏血性結節に対する対応 (3)ソナゾイド造影超音波検査の有用性
結果と考察
Ⅰ.分子マーカーによる早期発見システムの開発;(1)高感度AFPL3分画が、早期診断、早期再発診断に貢献することが明らかとなった。(2)非癌部におけるCYP1A2の発現度(低発現例で高頻度に再発する)が有意に再発に関与することが明らかになった。Ⅱ.早期画像診断システムの開発;(1)EOB-MRIの診断能はdynamic CT, dynamic MRIを凌いだ。(2)乏血性高分化肝細胞癌あるいは早期肝細胞癌の検出能ではEOB-MRIが他の診断法に比べて優れていること、1cm以上で肝細胞相で明瞭な低信号を示すものは早期肝細胞癌の可能性が高いことが明らかとなった。(3)造影超音波検査はターゲットとした結節についてはEOB-MRIを凌ぐ診断能を有するが全体の評価ではEOB-MRIに及ばないもとが示された。
結論
Ⅰ.分子マーカーによる早期発見システムの開発 AFP L3分画に有用性とCYP1A2の多中心性再発・発癌予測への関与を示した。Ⅱ.早期画像診断システムの開発 EOB-MRIの診断能がMD-CTのそれを凌駕することを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-21
更新日
-

文献情報

文献番号
201030001B
報告書区分
総合
研究課題名
肝癌早期発見を目的とした分子マーカーおよび画像診断システムの開発
課題番号
H20-肝炎・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
有井 滋樹(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 松井 修(金沢大学大学院医学系研究科 循環医科学専攻 血管病態制御学講座経血管診療学)
  • 佐田 通夫(久留米大学 医学部 内科学講座 消化器内科部門)
  • 青柳 豊(新潟大学 教育研究院医歯学系(医学部第三内科))
  • 田中 博(東京医科歯科大学 大学院生命情報科学教育部)
  • 森安 史典(東京医科大学 消化器内科(内科学第4講座))
  • 川崎 誠治(順天堂大学 医学部 肝胆膵外科)
  • 角谷 眞澄(信州大学 画像医学講座)
  • 泉 並木(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 高山 忠利(日本大学 医学部 消化器外科)
  • 國土 典宏(東京大学 医学部附属病院 肝胆膵外科)
  • 稲澤 譲治(東京医科歯科大学 難治疾患研究所 ゲノム応用医学研究部門 分子細胞遺伝)
  • 山本 雅一(東京女子医科大学 消化器外科)
  • 飯島 尋子(兵庫医科大学 超音波センター、内科 肝胆膵科)
  • 佐賀 恒夫(放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター)
  • 坂元 亨宇(慶応義塾大学 医学部 病理学)
  • 井本 逸勢(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 田中 真二(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 肝胆膵・総合外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝細胞癌は我が国男性癌死亡の第4位を占め、その克服にはより精緻で効率のよい早期診断法の開発が喫緊の課題である。本研究では分子マーカーの解析と画像診断的手法により肝細胞癌早期発見システムを開発することを目的とする。
研究方法
1.包括的分子解析に基づく新規早期発見マーカーの同定包括的微細ゲノム情報解析、cDNAマイクロアレイ解析などを行い、早期発見に有用な分子マーカーを同定する。2.新規画像診断法であるGd-EOB-DTPA造影MRI(EOB-MRI), Perfulbutane(ソナゾイド)による造影超音波検査を用いてこれら診断法の微小結節、乏血性結節の検出能、質的診断能を明らかにし、肝細胞癌早期診断アルゴリズムを構築する。これらを遂行するために多くの肝細胞癌患者の協力を得て、切除標本、生検標本と当該患者の臨床・病理情報を集積することに努力した。
結果と考察
組織由来分子マーカーとして有機アニオン輸送ポリペプチドであるOATP8と薬物代謝酵素CYP1A2が同定された。OATP8は後述するEOB-MRIの肝細胞相における信号強度を規定する分子であることが検証され、その発現度は多段階発癌の各過程と相関することが明らかとなった。CYP1A2については東京医科歯科大学の切除標本の非癌部肝組織から網羅的遺伝子解析により同定した。そして班員から得られた切除標本(非癌部)とその患者情報からvalidationを行い、非癌部におけるCYP1A2の低発現例では再発率が高いことが検証された。画像診断については以下のようなデータを得た。1)動脈性血流の描出能がEOB-MRIと従来型のMD-CTTは同等、2)結節の検出能はEOB-MRIが優れていること、3)MD-CTでは乏血性と判定され質的診断の困難な結節がEOB-MRIで低信号となった場合、高い確率で(約80%)肝細胞癌であること、4)乏血性結節においてEOB-MRIと造影超音波の併用により、大幅に診断能が向上することである。以上の結果からEOB造影によるダイナミックMRIで多血結節、乏血結節を分け、乏血結節の場合にはEOB-MRIの肝細胞相と造影超音波検査で診断を進めるという新しいアルゴリズムを提唱した。
結論
全体研究として以下の二つの成果を得た。Ⅰ.新規の分子マーカーとして非癌部肝組織から再発関連分子(多中心性再発)としてCYP1A2を同定した。この分子は酸化ストレスのバイオマーカーとも考えられ、発癌関連分子にもなると考えられる。Ⅱ.画像診断研究では新しい診断アルゴリズムを提唱した。とくに乏血性肝細胞癌に有用であることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201030001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
分子マーカーについては薬物代謝に関連し、酸化ストレスで発現が低下するCYP1A2が非癌部肝組織で低発現の症例に再発率の高いことが明らかとなった。この再発の多くが多中心性再発であること、背景肝組織由来であることから発癌のマーカーとも考えられた。画像診断についてはEOB-MRIが腫瘍の検出能、質的診断能において他の画像診断法より優れていること、乏血性肝癌の診断に有用であること、トランスポーターOATP8がその信号強度と逆相関し、多段階発癌に応じた発現を示すことが示された。
臨床的観点からの成果
分子マーカーについては高感度AFPL3分画が早期診断、早期再発診断に有用であること、非癌部におけるCYP1A2低発現が再発の予測、さらには発癌予測にもなりうることを示した。今後、大規模試験での検リが望まれる。画像診断についてはEOB-MRIが他の画像診断法よりも優れていることから、診断の中心と位置付けられることが示された。ソナゾイドによる造影超音波検査と併用することによりさらに診断精度が増すことも明らかとなった。
ガイドライン等の開発
肝癌診断アルゴリズムが日本肝臓学会・日本肝癌研究会により策定されて、汎用されている。しかし、EOB-MRI, ソナゾイド造影超音波検査導入以前に作成されたものであるので、これら診断法が組み込まれておらず、実情にそぐわなくなっている。また、乏血性肝細胞癌の診断が未完成であるという問題点もある。本研究により、上記問題点がすべて解決されたものと考え、改訂に際し、新たな診断ガイドラインを提唱する予定である。
その他行政的観点からの成果
分子マーカーについてはCYP1A2が発癌予測になることが大規模試験で明らかにされればたとえば肝硬変患者の生検によりスーパーハイリスクを特定することが可能となり、医療行政への影響は大きい。画像診断の成果に関しては次期のガイドライン改訂の際の有力な情報を得たといえる。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
54件
その他論文(和文)
16件
その他論文(英文等)
17件
学会発表(国内学会)
251件
学会発表(国際学会等)
66件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計7件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
K Matsuura,M Sata,N Izumi at al.
Distribution of hepatitis B virus genotypes among patients with chronic infection in Japan shifting toward an increase of genotype A.
J Clin Microbiol. , 47 (5) , 1476-1483  (2009)
原著論文2
T Ishizawa,N Kokudo et al.
Real-time identification of liver cancers by using indocyanine green fluorescent imaging
Cancer , 115 (11) , 2491-2504  (2009)
原著論文3
T Yamamoto,H Iijima et al.
Involvement hepatoma-derived growth factor in the growth inhibition of hepatocellular carcinoma cells by vitamin K2.
J Gastroenterol , 44 (3) , 228-235  (2009)
原著論文4
K Effendi,M Sakamoto et al.
Bmi-1 gene is upregulated in early-stage hepatocellular carcinoma and correlates with ATP-binding cassette transporter B1 (ABCB1) expression.
Cancer Science , 101 (3) , 666-672  (2010)
原著論文5
Y Tamura,Y Aoyagi et al.
Fucosylated fraction of alpha-fetoprotein as a predictor of prognosis in patients with hepatocellular carcinoma after curative treatment.
Dig Dis Sci. , 55 (7) , 2095-2101  (2010)
原著論文6
Y Tamura,Y Aoyagi et al.
Clinical Advantage of Highly Sensitive On-Chip Immunoassay for Fucosylated Fraction of Alpha-Fetoprotein in Patients with Hepatocellular Carcinoma.
Dig Dis Sci. , 55 (12) , 3576-3583  (2010)
原著論文7
M Kurosaki,N Izumi et al.
Hepatic steatosis in chronic hepatitis C is a significant risk factor for developing hepatocellular carcinoma independent of age, sex, obesity, fibrosis stage and response to interferon therapy.
Hepatol Res , 40 (9) , 870-877  (2010)
原著論文8
N Izumi
Diagnosis and treatment algorithm of the Japanese society of Hepatology: a consensus-based practice guideline.
Oncology , 78 (1) , 78-86  (2010)
原著論文9
T Mamiya,M Sakamoto et al.
Reduced transforming growth factor-beta receptor II expression in hepatocellular carcinoma correlates with intrahepatic metastasis.
Lab Invest. , 90 (9) , 1339-1345  (2010)
原著論文10
O Pugacheva,O Matsui,T Gabata et al.
Detection of small hypervascular hepatocellular carcinomas by EASL criteria: Comparison with double-phase CT during hepatic arteriography.
Eur J Radiol.  (2010)

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
201030001Z