重症型のレンサ球菌・肺炎球菌感染症に対するサーベイランスの構築と病因解析,その診断・治療に関する研究

文献情報

文献番号
201028045A
報告書区分
総括
研究課題名
重症型のレンサ球菌・肺炎球菌感染症に対するサーベイランスの構築と病因解析,その診断・治療に関する研究
課題番号
H22-新興・一般-013
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
生方 公子(北里大学大学院感染制御科学府&北里生命科学研究所 病原微生物分子疫学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 渡辺 治雄(国立感染症研究所)
  • 阿戸 学(国立感染症研究所 免疫部第二室)
  • 池辺 忠義(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 高橋 孝(北里大学大学院感染制御科学府&北里生命科学研究所 感染症学研究室 )
  • 大石 和徳(大阪大学微生物病研究所 感染症国際研究センター)
  • 藤島 清太郎(慶應義塾大学 医学部 救急医学)
  • 坂田 宏(JA北海道厚生連旭川厚生病院 小児科)
  • 秋山 徹(独立行政法人国立国際医療センター 感染症制御研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
27,768,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国において再び増加しつつあるβ溶血性レンサ球菌および肺炎球菌による侵襲性重症感染症の実態を明らかにするため,i)原因菌の正確な分子疫学解析,ii)発症例の宿主側リスクファクターの解析,iii)病原性発揮に関わる菌側の因子解明,iv)市中型重症感染症として重要なこれら病原細菌に対する啓発活動の実行を目的とした。
研究方法
上記の目的に沿い,i)全国規模で収集された1,000株以上の肺炎球菌と溶血性レンサ球菌の疫学解析,ii)同時に発症時の患者背景因子のアンケート調査,iii)重篤化,劇症化に関わる因子について,ゲノム解析と動物モデルを用いた解析,iv)肺炎球菌および溶血性レンサ球菌について確立を試みている迅速診断法の臨床応用,v)websiteの構築を行なうこととした。
結果と考察
疫学:(1)サーベイランスシステムを構築し,233医療機関から1,000株以上の分与を受け,肺炎球菌は莢膜型と薬剤耐性遺伝子解析の解析を行い,小児・成人に対するワクチンカバー率,ならびに耐性菌の割合を明らかにした。(2)レンサ球菌はMタンパクと莢膜型(GBS)解析を行い,小児と成人の違い,欧米の菌株との違いを明らかにした。(3)肺炎球菌とレンサ球菌に対して確立できたと思われる迅速診断法の臨床応用を試みた。(4)啓発活動のためのwebsiteを構築・公開した。(5) 日本救急医学会において敗血症登録システムを完成させた。
基礎:(1)ヒトCD46発現トランスジェニックマウスへの溶血性レンサ球菌の接種実験により,ヒト類似疾患の病態を解析,(2)糖尿病モデルマウスでは溶血性レンサ球菌に対する感受性が高進し,強い炎症性応答の発現が関与している可能性を明らかにした。(3)病原因子の発現調節遺伝子であるcsrSとrgg遺伝子の好中球機能に及ぼす影響と感染モデルマウスにおける病態を解析,csrS遺伝子変異が劇症型感染により一層影響の大きいことを明らかにした。
臨床:特に,成人の肺炎球菌あるいは溶血レンサ球菌性侵襲性感染症について,発症例の背景因子について解析,そのリスクファクターを明らかにした。
結論
高齢化社会の到来とともに,一度は制圧できたかにみえた肺炎球菌やレンサ球菌感染症は,基礎疾患を有する壮年期以上において致命的となり得る感染症である。これらの感染症をコントロールするには,幅広い啓発活動を行なうことにより,予防知識の普及が何よりも重要であると結論される。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201028045Z