海外からの侵入が危惧される野生鳥獣媒介性感染症の疫学、診断・予防法等に関する研究

文献情報

文献番号
201028041A
報告書区分
総括
研究課題名
海外からの侵入が危惧される野生鳥獣媒介性感染症の疫学、診断・予防法等に関する研究
課題番号
H22-新興・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
苅和 宏明(北海道大学 大学院獣医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 好井健太朗(北海道大学 大学院獣医学研究科)
  • 有川二郎(北海道大学 大学院医学研究科)
  • 西條政幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 井上智(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 伊藤直人(岐阜大学 応用生物科学部)
  • 丸山総一(日本大学 生物資源科学部)
  • 林谷秀樹(農学研究院 動物生命科学部門)
  • 川端寛樹(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 永田典代(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 早坂大輔(長崎大学 熱帯医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
25,446,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国では野生鳥獣によって媒介される重篤な人獣共通感染症の発生は幸い稀である。しかし、隣国であるロシア、韓国、中国などのユーラシア大陸東部の国々をはじめ、世界各国で重篤な人獣共通感染症が多発している。現代社会は物流や人の動きが活発であることから、他国で発生した感染症がわが国に侵入する危険性は年々増大していると考えられる。本研究では細菌やウイルスが病原体となる危険度の高い野生鳥獣媒介性の人獣共通感染症について、ユーラシア大陸を中心に流行状況に関する情報を収集し、疫学調査を実施する。また、新規に診断法を開発して疫学調査に応用すると同時に、輸入動物の検査にも応用しようとするものである。
研究方法
本研究で対象とする感染症はダニ媒介性脳炎、ハンタウイルス感染症、狂犬病、クリミア・コンゴ出血熱、バルトネラ感染症、エルシニア感染症、サルモネラ感染症、およびライム病である。これらの感染症はわが国に存在するものもあるが、むしろ海外で発生して大きな問題となっている。まず、これらの感染症に対して信頼性の高い抗体検出法や病原体の遺伝子検出法を開発し、これらを野生鳥獣や輸入動物の疫学調査に応用する。次に、海外の研究協力者と共同してこれらの感染症の患者発生動向などに関する情報の収集に努める。また、現地に赴いて疫学調査を実施し、流行様式を解明する。
結果と考察
 北海道の北斗市上磯地区のアカネズミから2008年に分離されたダニ媒介性脳炎ウイルスについて塩基配列の解析を行ったところ、1995年の上磯分離株であるOshima株と遺伝子性状が非常に近縁であり、10年以上にわたって同地区でウイルスが安定して維持されている事が示された。狂犬病ウイルスの遺伝子解析により、モンゴル、ロシアおよび中国では、野生動物等の移動により、国境を越えて狂犬病ウイルスが往来している可能性が示唆された。ライム病病原体であるボレリア・ガリニについて分子疫学的解析を行ったところ、モスクワ近郊で浸潤しているボレリア・ガリニ株は神経ボレリア症が報告されている国・地域で見出される欧州型ボレリア・ガリニ株と同じ遺伝子型が高頻度で見出された。南米のげっ歯類におけるハンタウイルス感染を診断するための抗血清を作製した。
結論
 本研究で得られた各種感染症の国内および海外における疫学的知見は人獣共通感染症の予防のための基礎的情報となる。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201028041Z