新型インフルエンザH1N1の病態把握と重症化の要因の解明に関する研究

文献情報

文献番号
201028034A
報告書区分
総括
研究課題名
新型インフルエンザH1N1の病態把握と重症化の要因の解明に関する研究
課題番号
H22-新興・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
小林 信之(独立行政法人 国立国際医療研究センター 呼吸器科)
研究分担者(所属機関)
  • 工藤 宏一郎(独立行政法人 国立国際医療研究センター 国際疾病センター)
  • 泉 信有(独立行政法人 国立国際医療研究センター 国際疾病センター)
  • 齋藤 玲子(新潟大学大学院医歯学総合研究科 国際感染医学講座公衆衛生学分野)
  • 河合 直樹(日本臨床内科医会 内科学(河合内科医院))
  • 浮村 聡(大阪医科大学医学部 内科学総合診療科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新型インフルエンザ重症例の病態把握、重症化要因の解明とともに、ウイルス遺伝子解析および薬剤耐性、抗ウイルス薬の有効性のモニタリングによる最新情報に基づいた新型インフルエンザの予防・治療・管理方法を確立する。
研究方法
1) メキシコ国立呼吸器疾患センターにおけるインフルエンザ肺炎の重症化因子を解析し、死亡例の剖検肺について病理学的に検討した。
2) 新型インフルエンザ小児患者における喘息症状の合併について検討した。
3) 2010/2011年に分離・収集されたインフルエンザウイルスの遺伝子解析を行い、型・亜型、薬剤耐性について検討した。
4) 2009/2010年における抗インフルエンザ薬の有用性、H275Y変異、薬剤投与後のウイルス残存率を検討した。2010/2011年については4薬剤の臨床的効果をリアルタイムに解析した。
5) 2009/2010シーズンの新型インフルエンザ心筋炎の後ろ向き全国調査を実施した。
結果と考察
1) 新型インフルエンザ肺炎では肺浸潤影、意識障害など7つの因子が重症化に関与する因子として検出された。重症肺病変の典型的な病理像はDiffuse Alveolar Damage (DAD) および気管支炎/細気管支炎であった。
2) 新型インフルエンザ小児例の60%が喘息症状を合併し、その半数以上は初発の発作であり、何らかのアレルギー歴を有していた。
3) 2010/2011年はA型が97.2%を占めたが、地域により亜型の差がみられた。H1N1pdmは昨年流行したClade 2のウイルスであり、初診時株ではNA遺伝子H275Y変異のオセルタミビル耐性株はみられなかった(2011年3月までの結果)。
4) 2009/2010年のH1N1pdmではオセルタミビル投与後、解熱は速やかにみられたが、小児ではウイルス残存率が高く、H275Y変異は2.2%にみられた。2010/2011年では、A型に対する解熱時間は4薬剤とも30時間前後以下で有効性は高かった。
5) 新型インフルエンザ心筋炎は全国から16例が報告され、劇症型10例のうち体外補助循環により8例が救命された。
結論
新型インフルエンザ重症肺病変の病理像はDADおよび気管支炎/細気管支炎であり、ウイルス感染は重篤な心筋炎の合併、喘息の発症に関与する。2010/2011年のH1N1pdmはClade 2のウイルスで、初診時株ではオセルタミビル耐性株はみられず、4薬剤の有効性は高い。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201028034Z