顧みられない病気に関する研究

文献情報

文献番号
201028016A
報告書区分
総括
研究課題名
顧みられない病気に関する研究
課題番号
H20-新興・一般-016
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
野崎 智義(国立感染症研究所 寄生動物部)
研究分担者(所属機関)
  • 濱野 真二郎(長崎大学 熱帯医学研究所)
  • 三田村 俊秀(国立国際医療センター 研究所)
  • 永宗 喜三郎(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 津久井 久美子(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 丸山 治彦(宮崎大学 医学部)
  • 北 潔(東京大学 大学院医学研究科)
  • 中西 憲司(兵庫医科大学)
  • 井上 幸次(鳥取大学 医学部)
  • 八木田 健司(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 大前 比呂思(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 朝日 博子(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 山崎 浩(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 杉山 広(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 森嶋 康之(国立感染症研究所 寄生動物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
45,720,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
顧みられない寄生原虫・蠕虫症のコントロールには、診断法・サーベイランスの確立、薬剤・ワクチン等予防・治療法の開発、感染症対策マニュアルの策定が重要である。更にそのためには、起因生物の生物学・病因学的理解が不可欠である。本研究では研究班を目的に従い、3つに分け、顧みられない寄生虫症対策に資する研究を展開した。
研究方法
第1グループでは、国内のアカントアメーバ角膜炎のサーベイランス・分子疫学を展開した。第2グループでは寄生虫症に係る基盤的研究を行った。原虫症としては、赤痢アメーバ、トキソプラズマ、マラリア原虫を、蠕虫症としては、糞線虫、エキノコックス等の病因学・感染防御機構の解明等を行った。第3のグループでは、診断法・鑑別法の開発を行い、原虫症としてジアルジア症の、蠕虫症として、住血吸虫・肺吸虫等の吸虫症、トキソカラ症、アニサキス症など線虫症、条虫症等の診断法の確立を目指した。
結果と考察
最終年度は3つの研究分野いずれでも、各分担研究分野において成果を挙げた。第1グループは、アカントアメーバ分離株の遺伝子タイピングによりT4, T11が確認された。第2グループでは、赤痢アメーバの細胞分化に関与する因子が特定され、遺伝学的技術が開発された。また、赤痢アメーバの感染防御に関わるPAMPsの種間相違が明らかにされ、薬剤耐性に関与する遺伝子が特定された。マラリア原虫の脂肪酸脱飽和酵素がスポロゾイトの感染に重要であること、トキソプラズマの感染において宿主GPIアンカーの役割が阻害的に機能することを明らかにした。糞線虫のトランスクリプトーム解析によりステージ特異的遺伝子を同定した。糞線虫の感染排除における好塩基球の役割を明らかにした。多包条虫の呼吸鎖複合体IIの全サブユニットを同定した。第3グループでは、ジアルジアの単クローン抗体の特異性を示した。住血吸虫症患者の尿中抗体のB細胞エピトープを決定し、人工抗原の評価を行った。トキソカラ症の改良型ICTキットの評価を行い、優位性を示した。マンソン狐症診断抗原の至適化・評価を行った。アニサキス・腸管寄生吸虫の種鑑別法を確立し、肺吸虫の免疫診断キットの作成を終えた。
結論
顧みられない寄生虫症の病因・感染防御の解明、検査診断法・サーベイランス体制の構築に重要な貢献を果した。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-01
更新日
-

文献情報

文献番号
201028016B
報告書区分
総合
研究課題名
顧みられない病気に関する研究
課題番号
H20-新興・一般-016
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
野崎 智義(国立感染症研究所 寄生動物部)
研究分担者(所属機関)
  • 濱野 真二郎(長崎大学 熱帯医学研究所)
  • 小林 正規(慶應義塾大学 医学部)
  • 三田村 秀俊(国際医療研究センター 研究所)
  • 永宗 喜三郎(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 井上 幸次(鳥取大学 医学部)
  • 八木田 健司(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 津久井久美子(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 丸山 治彦(宮崎大学 医学部)
  • 北 潔(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 中西 憲司(兵庫県立医科大学)
  • 大前 比呂思(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 千種 雄一(獨協医科大学)
  • 朝日 博子(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 山崎 浩(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 杉山 広(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 森嶋 康之(国立感染症研究所 寄生動物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
顧みられない寄生虫症のコントロールには、診断法・サーベイランスの確立が重要である。同時に、薬剤・ワクチン等の予防・治療法の開発と診断等の標準化が重要である。更に、感染症の原因生物に関する生物学、病理学、病因学の解明と理解が重要である。本研究では3つのグループにより国内で問題となるNTDへの対策に資する研究を総合的に展開した。
研究方法
疫学・分子疫学グループでは、腸管原虫症やアカントアメーバ角膜炎のサーベイランス・分子疫学を展開した。病原機構・感染機構基盤解析グループでは、原虫症としては、赤痢アメーバ、トキソプラズマ、マラリア原虫の病原機構、感染防御機構、薬剤耐性機構の解明を、蠕虫症としては、糞線虫、エキノコックス等の病原性・分化・代謝機構の解明を行った。診断法開発グループでは、原虫症・蠕虫症の診断法と遺伝子型別法の確立を行った。
結果と考察
疫学・分子疫学グループでは、アカントアメーバ角膜炎の感染実態を明らかにし、分離株の遺伝子型別により遺伝型を特定した。また、知的障害者施設における追跡調査により、長期間にわたる赤痢アメーバ症の感染浸淫を示した。基盤解析グループでは、赤痢アメーバの病原性規定因子、細胞分化に関与する因子を特定した。赤痢アメーバの感染防御機構と防御に関与する分子パターン、薬剤耐性に関与する遺伝子を特定した。マラリア原虫の脂肪酸脱飽和酵素の生活環における役割を解明した。トキソプラズマの感染における宿主GPIアンカーの役割を明らかにした。糞線虫のゲノム・トランスクリプトーム解析により分化や病原性に関与する遺伝子を特定し、免疫診断への応用を可能とした。糞線虫の感染排除における好塩基球の役割を解明した。多包条虫の呼吸鎖の特質を明らかにし、リード化合物を同定した。診断法開発グループでは、ジアルジアの単クローン抗体を作成し、性状を解析した。住血吸虫症患者の尿中・血清抗体を検出するキットを作成する抗原を評価、決定した。腸管寄生性線虫や吸虫の種の鑑別法を確立した。また、肺吸虫の免疫診断キットの作成と評価を終えた。トキソカラ症・マンソン狐症の免疫診断キットを作成・評価した。
結論
いずれの研究項目においても、主任・分担研究者が各々の分野において優れた成果を挙た。一連の研究成果は、NTDの病原機構・感染防御機構・薬剤耐性の解明、並びに、検査診断法・サーベイランス体制の構築などに、顕著な貢献を果した。

公開日・更新日

公開日
2011-09-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201028016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
NTDの克服のために不可欠な原虫・蠕虫症での発生動向調査、そのために不可欠な原虫・蠕虫の遺伝子鑑別法、寄生虫症の簡易血清診断キットを実現するためには、原因寄生虫症の病原・寄生・感染防御機構の解明等基盤的研究が不可欠であることはいうまでもない。本研究はNature Med., Nature Immunol., Proc. Natl. Acad. Sci. USA.等の欧文雑誌に掲載される研究成果を始めとして、多くの重要な基盤的研究成果を挙げた。
臨床的観点からの成果
顧みられない寄生虫症の診断・鑑別はしばしば国内に対応できる検査施設等が存在せず、臨床上の大きな問題点となっている。本研究では、これらの検査法の存在しないか、不完全な寄生虫症、特に蠕虫症に関して、診断法を確立するとともに、簡易キットを作成することに成功し、臨床検査上のボトルネックの解消に貢献した。
ガイドライン等の開発
寄生性蠕虫症の診断キット等を用いて、臨床現場で診断を確定するためのプロトコルを確立し、今後のガイドラインの策定に向けて、十分な準備を行った。また、アカントアメーバ性角膜炎のサーベイランスに関しても、関連学会等と連携して、検査システムを構築し、今後の感染動向調査の基盤を確立した。
その他行政的観点からの成果
上記の基盤的研究業績は広く新聞記事や一流誌のResearch highlights等で紹介された。
その他のインパクト
(1) 顧みられない原虫症・寄生虫症の検査診断キットの開発・普及・供給体制の構築;(2) 検査・診断基準のガイドラインの作成;(3) 腸管寄生虫症、アカントアメーバ角膜炎、蠕虫症などの寄生虫症の発生動向の把握;(4) 寄生虫症の感染・寄生機構、免疫に関する幅広い知的基盤の整備;(5) 国内の寄生虫研究グループ・研究者の育成;(6) 国内外の研究グループとの連携の確立など、本研究班の当初の目的を達成すると期待される。

発表件数

原著論文(和文)
45件
原著論文(英文等)
118件
その他論文(和文)
36件
その他論文(英文等)
6件
学会発表(国内学会)
179件
学会発表(国際学会等)
94件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hamano, S., Becker, S., Asgharpour, A., et al.
Gender and genetic control of resistance to intestinal amebiasis in inbred mice.
Genes Immun. , 9 , 452-461  (2008)
原著論文2
Nagamune, K., Xiong, L., Chini, E.N., et al.
Plant, endosymbiontsand parasites, Abscisic acid and calcium signaling.
Comm. Integ. Biol. , 1 , 62-65  (2008)
原著論文3
Kosaka,H., Yoshimoto,T.,Fujimoto,J., et al. Nakanishi,K.
Interferon-g is a therapeutic target molecule for prevention of postoperative adhesion formation.
Nat. Med , 14 , 437-441  (2008)
原著論文4
Matsumoto J., Sakamoto K., Shinjyo N., Kido Y., Yamamoto N.,
Anaerobic NADH-Fumarate Reductase System Is Predominant in the Respiratory Chain of Echinococcus multilocularis, Providing a Novel Target for the Chemotherapy of Alveolar Echinococcosis.
Antimicrob. Agents. Chemother , 52 , 164-170  (2008)
原著論文5
Sugiyama H, Morishima Y, Binchai S,et al.
Molecular discrimination between individual metacercariae of Paragonimus heterotremus and two forms of P. westermani occurring in Thailand.
Southeast Asian J Trop Med Public Health , 39 , 32-36  (2008)
原著論文6
Nakada-Tsukui, K., Okada, H., Mitra, B. N., et al
Phosphatidylinositol-phosphates mediate cytoskeletal reorganization during phagocytosis via a unique modular protein consisting of RhoGEF/DH and FYVE domains in the parasitic protozoon Entamoeba histolytica.
Cell. Microbiol. , 11 , 1471-1491  (2009)
原著論文7
Mi-ichi, F., Yousuf, M. A., Nakada-Tsukui, K., and Nozaki, T.
Mitosomes in Entamoeba histolytica contain a sulfate activation pathway.
Proc. Natl. Acad. Sci. USA. , 106 , 21731-21736  (2009)
原著論文8
Morales, J., Mogi, T., Mineki, S., et al
Novel Mitochondrial Complex II Isolated from Trypanosoma cruzi is Composed of Twelve Peptides Including a Heterodimeric Ip Subunit
J. Biol. Chem. , 284 , 7255-7263  (2009)
原著論文9
Yoshimoto T, Yasuda K, Tanaka H, Nakahira M, Imai Y, Fujimori Y, Nakanishi K.
Basophils contribute to TH2-IgE responses in vivo via IL-4 production and presentation of peptide-MHC class II complexes to CD4+ T cells.
Nat Immunol. , 10 , 706-712  (2009)
原著論文10
Kobayashi S., Suzuki J. and Takeuchi T.
Establishment of a continuous system for Entamoeba muris and analysis of the small subunit rRNA gene.
Parasite , 16 , 135-139  (2009)
原著論文11
Kato-Hayashi N, Kirinoki M, Iwamura Y, Kanazawa T, Kitikoon V, et al
dentification and Identification and differentiation of human schistosomes by polymerase chain reaction
Experimental Parasitology , 124 , 325-329  (2010)
原著論文12
Yamasaki H, Kuramochi T.
A case of Diphyllobothrium nihonkaiense infection possibly linked to salmon consumption in New Zealand
Parasitology Research , 105 , 583-586  (2010)
原著論文13
Sugiyama, H., Umehara, A., Morishima, Y., Yamasaki, H., et al.
Detection of Paragonimus metacercariae in Japanese freshwater crabs, Geothelphusa dehaani, bought at retail fish markets in Japan.
Japanese Journal of Infectious Diseases , 62 , 324-325  (2009)
原著論文14
Nakanishi K
Basophils as APC in Th2 response in allergic inflammation and parasite infection.
Curr. Opin. Immunol. , 22 , 814-820  (2010)
原著論文15
Asahi, H., Izumiyama, S., Tolba, M.E.M., and Kwamsa-Bentum, B.
Plasmodium falciparum: Differing effects of non-esterified fatty acids and phospholipids on intraerythrocytic growth in serum-free medium.
Exp. Parasitol. , 127 , 708-713  (2011)
原著論文16
Afzal Husain, Dan Sato, Ghulam Jeelani,et al.
Metabolome analysis revealed increase in S-methylcysteine and phosphatidylisopropanolamine synthesis upon L-cysteine deprivation in the anaerobic protozoan parasite Entamoeba histolytica
J. Biol. Chem. , 285 , 39160-39170  (2010)
原著論文17
Ghulam Jeelani, Afzal Husain, Dan Sato, et al.
Two atypical L-cysteine-regulated NADPH-dependent oxidoreductases involved in redox maintenance, L-cystine and iron reduction, and metronidazole activation in the enteric protozoan Entamoeba histolytic
J. Biol. Chem. , 285 , 26889-26899  (2010)
原著論文18
永宗喜三郎
トキソプラズマが産生する植物ホルモン
感染症・炎症・免疫 , 40 , 181-183  (2010)
原著論文19
井上幸次
コンタクトレンズ関連角膜感染症の診断と治療
日本の眼科 , 80 , 687-691  (2009)
原著論文20
Yoshida A, Nagayasu E, Nishimaki A, et al.
Transcripts analysis of infective larvae of an intestinal nematode, Strongyloides venezuelensis Prasitol
Parasitoll. Int. , 60 , 75-83  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201028016Z