我が国における一類感染症の患者発生時の臨床的対応に関する研究

文献情報

文献番号
201028001A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国における一類感染症の患者発生時の臨床的対応に関する研究
課題番号
H20-新興・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 宏一郎(独立行政法人 国立国際医療研究センター 国際疾病センター)
研究分担者(所属機関)
  • 立川 夏夫(横浜市立市民病院 感染症内科)
  • 西條 政幸(国立感染症研究所 ウイルス第1部)
  • 泉 信有(独立行政法人 国立国際医療研究センター 国際疾病センター )
  • 高崎 仁(独立行政法人 国立国際医療研究センター 国際疾病センター )
  • 近藤 久禎(独立行政法人国立病院機構災害医療センターDMAT事務局)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
11,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
一類感染症は、これまでほとんど国内で発生しておらず、診療経験は皆無に等しい。しかしグローバル化に伴い、国内持ち込み、発生も予想され、効率の良い備えは必要である。その為の研究である。
研究方法
対応する第1種感染症指定機関(第1種指定機関)を対象として、1.診療体制の国際比較研究 2.ガイドラインの作成 3.患者(疑い例)発生時の診断および病態把握のための検査マニュアルの作成 4.第1種指定機関の情報共有システムの開発 5.患者発生時の地域連携モデルの構築 6.患者(疑い)発生時の患者搬送法に関する検討 7.患者臨床所見及び検査データ等の収集を分担テーマとする。
結果と考察
EUの一類感染症の診療体制の調査及び一類感染症患者の国内診療体制についての調査検討より『一類感染症に対する院内感染対策ガイドライン』、『クリミア・コンゴ出血熱(CCHF)診断・治療アルゴリズム』を作成した。ガイドラインでは、エリア分類(zoning)という方法で対応した。色で示したエリア分類は、病院内のスタッフが全員、すべき感染対策の内容を明確化することを可能とした。これまでの成果に専門家、関係機関の方々の意見を取り入れ、「一類感染症発生時の臨床的対応」検討会を実施、現場での問題点、検討事項を洗い出し将来に向けた。ネットワーク強化として、特定感染症指定医療機関と日本の三大国際空港(成田、東京、関西)と特定感染症指定医療機関を結ぶネットワークを完成させた。患者の搬送については、搬送車両の整備、搬送介護者の確保、県境をまたがる場合の問題、保健所や感染症指定医療機関との連携体制の確保、補償など、今後の課題が明らかとなった。一類感染症発生地域・国での長期滞在邦人への危機管理体制として情報を収集した。
結論
我が国の現状に即した効率の良い一類感染症に対する診療体制作りの有効性が確認され、これまでの研究で行った検討を我が国の一類感染症の診療体制についての提言とすると共に、作成したマニュアル、アルゴリズムなどを利用し、今後一類感染症指定医療機関及び地域機関病院が共通して運用出来る一類感染症診療ガイドラインの作成に結びつけることの重要性を確認した。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201028001B
報告書区分
総合
研究課題名
我が国における一類感染症の患者発生時の臨床的対応に関する研究
課題番号
H20-新興・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 宏一郎(独立行政法人 国立国際医療研究センター 国際疾病センター)
研究分担者(所属機関)
  • 立川 夏夫(横浜市立市民病院 感染症内科・感染症部)
  • 西條 政幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 玉置 俊治(りんくう総合医療センター市立泉佐野病院)
  • 泉 信有(独立行政法人 国立国際医療研究センター 国際疾病センター)
  • 野口 博史(成田赤十字病院 感染症科)
  • 水野 泰孝(東京医科大学病院 感染制御部・渡航者医療センター)
  • 高崎 仁(独立行政法人 国立国際医療研究センター 国際疾病センター)
  • 近藤 久禎(国立病院機構災害医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
一類感染症は、これまでほとんど国内で発生例がなく、診療経験は皆無に等しい。今後の事態を想定し、効率の良い備えをしておかなければならない。
研究方法
1)国際比較を加味した我が国の臨床的対応の検討。2)院内感染対策ガイドラインの作成。2)患者(疑い例)発生時の診断・病態把握の検査マニュアルの作成。3)特定感染症指定医療機関と検疫所間の情報交換システム。4)これまでのウイルス性出血熱患者(疑い例)発生時の臨床対応に関する情報収集。5)本邦都道府県の実態調査に基づいた行政(保健所、消防署、警察など)と医療機関(地域・中核・医師会)の患者発生時の広域連携モデルの検討。6)患者搬送体制の検討。
結果と考察
初年度は、独、伊の医療機関を訪問しEUの一類感染症の診療体制の調査を行った。それを基に本邦診療体制と、診断・治療アルゴリズム、院内感染対策ガイドライン、国内ネットワーク、地域医療連携モデルを検討した。
2年度は前年度の成果を受け、国内の一類感染症医療機関の問題点を調査し、感染症指定医療機関と地域中核病院で使用可能な、『一類感染症に対する院内感染対策ガイドライン』、『クリミア・コンゴ出血熱診断・治療アルゴリズム』を作成。ガイドラインでは、エリア分類(zoning)の概念を導入し、病院内スタッフのとるべき感染対策を明確にした。
3年度は、更に、班員・協力者以外の専門家、関係機関の意見を取り入れるべく、「一類感染症発生時の臨床的対応検討会」を実施、マニュアル作成するものとし、研究班からの提言とした。
ネットワーク強化として、TV会議システムで全国3つの特定感染症指定医療機関と、日本の三大空港(成田、羽田、関西)をネットワーク化した。
一類感染症診療対応は主に各自治体主導である現状を踏まえ、災害時等の患者搬送を行っているDMATとの検討を行い、搬送車両の整備、介護者の確保、県境を越えの問題、保健所や感染症指定医療機関との連携体制、補償などの課題が明らかとなった。
患者発生国での長期滞在邦人対応として、発生国・地域の情報収集とその体制整備について、ラッサ熱を中心に英国の情報を収集した。
結論
我が国の現状に即した効率の良い一類感染症に対する診療体制作りを検討し、我が国の一類感染症の診療体制を提言した。マニュアル、アルゴリズムなどを利用した、一類感染症指定医療機関及び地域機関病院が運用に結びつけた。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201028001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
一類感染症はこれまでほとんど国内で発生しておらず、国内での診療経験は皆無に等しい上に、多くは重症化し、致死率も高い。実際に診療の経験のある欧州の現状、患者の臨床情報を収集することは、国内体制を検討する上で、専門的意義は高い。
臨床的観点からの成果
一類感染症の発生地域での疫学、臨床像を実際に診療や検疫に携わるであろう医療従事者らへの情報提供およびガイドラインを開発し、普及させることは、国内診療体制の整備・強化につながる。
ガイドライン等の開発
一類感染症対策マニュアル、ウイルス性出血熱の診療アルゴリズムを開発、作成した。
その他行政的観点からの成果
我が国の現状に即した効率の良い一類感染症に対する診療体制つくりの方向性が確認され、一類感染症および新興・再興感染症に対して、専門機関のみならず一般病院でも適応できる効率の良い体制作りの基盤を作った。
その他のインパクト
これまでの研究成果を基盤として、研究班員・協力者、国内専門家、関係機関の方々を招集し、「一類感染症発生時の臨床対応検討会」を実施し、問題点の整理と課題についての共通の認識を持つことができた。

発表件数

原著論文(和文)
2件
西條政幸:アレナウイルス、日本臨床 68(増刊号):431-434, 2010 西條政幸:南米出血熱の診断法の概要.日本医事新報 4495: 83-84, 2010
原著論文(英文等)
2件
Saijyo, et al. Future Virology 2010、Nakamura, et al. Clinical and Vaccine Immunology 2010
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
西條政幸ら.第58回日本ウイルス学会学術集会、徳島(2010.11)
学会発表(国際学会等)
2件
Saijo, et al. US-Japan Cooperative Medical Science Saijo. World Congress of Virus and Infections
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
ウイルス性出血熱の診療アルゴリズムを作成配布した

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201028001Z