スポーツ・運動の統合失調症の認知機能・高次脳機能障害に対する効果に関する研究

文献情報

文献番号
201027115A
報告書区分
総括
研究課題名
スポーツ・運動の統合失調症の認知機能・高次脳機能障害に対する効果に関する研究
課題番号
H20-こころ・若手-025
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 英彦(独立行政法人 放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 分子神経イメージング研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 大久保 善朗(日本医科大学 精神神経科)
  • 加藤 元一郎(慶應義塾大学 精神神経科)
  • 松浦 雅人(東京医科歯科大学 保健衛生学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
21年度は、統合失調症患者対象に医師・臨床心理士・作業療法士らによる3カ月にわたる運動プログラムを実施し、特にバスケットボールを参加することが、スポーツ関連動作を見ている際の脳活動にどのような影響を与えるか検討した。本年度はそのプログラム(あるいはそれによってもたらされた脳活動の変化)の認知機能や精神症状への効果を検討した。
研究方法
統合失調症患者13名を対象に3カ月の縦断的研究を行った。患者はすべて抗精神病薬を服用しており、この間は処方は一定とした。患者に対して医師・臨床心理士・作業療法士らによる3カ月にわたる運動プログラムを実施した。プログラムは週三回の身体測定、ストレッチから汗ばむ程度の軽度な運動で構成され、特にスポーツとしては普段なじみの薄いバスケットボールを用いた。プログラムの前後でfMRIの撮像はGE社製1.5テスラMRI装置を用いて、バスケットボール関連動作を見ている最中の脳活動を測定した。fプログラムの認知機能および精神症状への効果も検討する目的でプログラムの前後で一般的な神経心理テストとPANSSによる症状評価を行った。
結果と考察
3ヶ月間の運動プログラムの結果、運動プログラム前と比べて参加後にはスポーツ関連動作を見ている際のextrastriate body area(EBA)の活動の程度が増大した。3ヶ月間の運動プログラムに参加した後にPANSSの一般精神病理尺度の改善(減少)とtrail making test Bの完遂時間が短縮した。EBAの活動の増大の程度とPANSSの一般精神病理尺度の改善(減少)に相関が認められたが、一般神経心理検査の変化とは相関は認められなかった。EBAの活動の程度が増大したことは、対人的なスキルや社会認知の改善につながり、PANSSの一般精神病理尺度の改善という形で症状の改善にもつながったとも考えられた。
結論
昨年度までのわれわれの、統合失調症患者においてEBAの活動が低い患者ほど陰性症状などが重症であるという結果を踏まえるとEBAの活動の程度が増大したことは、対人的なスキルや社会認知の改善につながり、PANSSの一般精神病理尺度の改善という形で症状の改善にもつながるとも考えられる。一方、一般的な認知機能の改善とEBAの活動増大とは相関がないことから、EBAを介したメカニズムが認知機能全般の改善に関与しているわけではないことも示唆された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201027115B
報告書区分
総合
研究課題名
スポーツ・運動の統合失調症の認知機能・高次脳機能障害に対する効果に関する研究
課題番号
H20-こころ・若手-025
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 英彦(独立行政法人 放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 分子神経イメージング研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 大久保 善朗(日本医科大学 精神神経科)
  • 加藤 元一郎(慶應義塾大学 精神神経科)
  • 松浦 雅人(東京医科歯科大学 保健衛生学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
20年度は統合失調症のスポーツ関連動作を認知している時の脳活動をfMRIにて測定し、患者において、ミラーニューロンシステムに関連する、superior temporal sulcus (STS; 上側頭溝)や体の部分に反応するextrastriate body area(EBA)の活動を検討した。21年度は統合失調症患者対象に3カ月にわたる運動プログラムを実施し、特にバスケットボールを参加することが、スポーツ関連動作を見ている際の脳活動にどのような影響を与えるか検討した。22年度はそのプログラムの認知機能や精神症状への効果を検討した。
研究方法
統合失調症患者13名を対象に3カ月の縦断的研究を行った。患者はすべて抗精神病薬を服用しており、この間は処方は一定とした。患者に対して医師・臨床心理士・作業療法士らによる3カ月にわたる運動プログラムを実施した。プログラムは週三回の身体測定、ストレッチから汗ばむ程度の軽度な運動で構成され、特にスポーツとしてはバスケットボールを用いた。プログラムの前後でfMRIの撮像は1.5テスラMRI装置を用いて、バスケットボール関連動作見ている最中の脳活動を測定した。プログラムの認知機能および精神症状への効果も検討する目的でプログラムの前後で一般的な神経心理テストとPANSSによる症状評価を行った。
結果と考察
運動プログラムの結果、運動プログラム前と比べて参加後にはスポーツ関連動作を見ている際のEBAの活動の程度が増大した。3ヶ月間の運動プログラムに参加した後にPANSSの一般精神病理尺度の改善とtrail making test Bの完遂時間が短縮した。EBAの活動の増大の程度とPANSSの一般精神病理尺度の改善(減少)に相関が認められたが、一般神経心理検査の変化とは相関は認められなかった。EBAの活動の程度が増大したことは、対人的なスキルや社会認知の改善につながり、PANSSの一般精神病理尺度の改善という形で症状の改善にもつながったとも考えられた。
結論
EBAの活動の程度が増大したことは、対人的なスキルや社会認知の改善につながり、PANSSの一般精神病理尺度の改善という形で症状の改善にもつながるとも考えられる。一方、一般的な認知機能の改善とEBAの活動増大とは相関がないことから、EBAを介したメカニズムが認知機能全般の改善に関与しているわけではないことも示唆された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201027115C

成果

専門的・学術的観点からの成果
スポーツ関連動作を認知している時の脳活動をfMRIにて測定し、健常者と比較して、統合失調症患者では、体に反応するextrastriate body area(EBA)の活動低下を認めた。さらに患者におけるEBAの活動の程度とPANSSの陰性症状点、一般的精神病理点との間に負の相関を認めた。3カ月にわたる運動プログラムを実施したところ、運動プログラム前と比べて参加後にはスポーツ関連動作を見ている際のEBAの活動の程度が増大した。EBAの活動の程度が増大は精神症状の改善と相関が認められた。
臨床的観点からの成果
スポーツの統合失調症患者における認知機能や脳機能へ与える機構を明らかにすることで、統合失調症患者への合理的な運動プログラムを提供することが可能となり、生活習慣病の予防と対人的なスキルを含めた認知機能の改善をもたらし、統合失調症患者の就労・社会参加など生産性の向上にもつながるものと考えられる。
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
特記事項なし
その他のインパクト
特記事項なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takahashi H, Kato M, Sassa T,et al.
Functional deficits in the extrastriate body area during observation of sports-related actions in schizophrenia
Schizophr Bull , 36 , 65-71  (2010)
原著論文2
Takahashi H, Shibuya T, Kato M, et al
Enhanced activation in the extrastriate body area by goal-directed actions
Psychiatry Clin Neurosci , 62 , 214-219  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027115Z