孤発性ALSの分子異常を標的とした治療技術の確立

文献情報

文献番号
201027086A
報告書区分
総括
研究課題名
孤発性ALSの分子異常を標的とした治療技術の確立
課題番号
H21-こころ・一般-017
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
郭 伸(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 相澤 仁志(独立行政法人 国立病院機構 東京病院)
  • 村松 慎一(自治医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
孤発性ALS運動ニューロンでは、グルタミン酸受容体サブタイプであるAMPA受容体のGluR2 サブユニットQ/R 部位でRNA編集が低下しており,これは,同部位の特異的RNA編集酵素であるadenosine deaminase acting on RNA 2 (ADAR2)の活性低下に依ると考えられる.この分子異常は孤発性ALSに疾患特異的分子異常であり,運動ニューロン死の直接原因であることを,ADAR2のコンディショナルノックアウトマウスの解析から明らかにした.本研究では,ADAR2活性の正常化が孤発性ALSの治療につながると考えられるので、ADAR2活性賦活によるALS治療の基盤技術の確立を目的とする.
研究方法
我々が開発したTetHeLaG2m細胞を様々な化学物質に暴露し,ADAR2活性を賦活する物質を市販薬およびUS Drug Collectionから探索した。このスクリーニングにより得られた候補物質を野生型マウスに全身投与し,運動ニューロンにおけるADAR2活性賦活作用を検討した.また,ADAR2 遺伝子治療のためのベクターを開発し、野生型マウスへの経静脈的全身投与によるADAR2 活性賦活作用を検討した。
結果と考察
TetHeLaG2m細胞を用いてADAR2活性賦活する物質を20種類以上得た。これらの作用メカニズムは、ADAR2 mRNA発現量の増加によるもの、ADAR2 mRNA/GluR2 pre-mRNA比の増加によるものの他、これらのADAR2 活性に関連しうる分子には影響を与えないものがあり、異なる分子メカニズムに依ることが明らかになった.一部の薬剤を野生型マウスに投与し、脳・脊髄におけるADAR2 活性を賦活することを確認した。また、ヒトADAR2aをカプシド蛋白及びゲノム配列を修飾したAAVベクターに組み込み、野生型マウス及びモデルマウスへの全身投与により脊髄運動ニューロンへ送達されること、ADAR2遺伝子発現による酵素活性が上昇することを確認した.今後モデル動物を用いた神経細胞死抑制作用を検討し、ADAR2活性賦活による治療技術基盤を確立する。
結論
1)ADAR2活性賦活物質のスクリーニングを進めin vivoでも作用を持つ物質を複数得た.
2)遺伝子治療のための、血管経由により神経細胞へADAR2遺伝子導入可能なベクターの開発を進め、運動ニューロンにおけるADAR2活性の賦活を確認した.

公開日・更新日

公開日
2011-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027086Z