筋萎縮性側索硬化症患者由来疾患モデル細胞を用いた病態解明と治療法開発

文献情報

文献番号
201027084A
報告書区分
総括
研究課題名
筋萎縮性側索硬化症患者由来疾患モデル細胞を用いた病態解明と治療法開発
課題番号
H21-こころ・一般-015
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 良輔(京都大学 大学院医学研究科・臨床神経学)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 治久(京都大学 iPS細胞研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経変性疾患では、特定の神経系が脆弱性を有し、選択的神経変性を生じる。最近の研究において、グリア細胞がその神経変性に寄与していることが明らかになりつつある。変異SOD1を有する遺伝性筋萎縮性側策硬化症(amyotrophic lateral sclerosis: ALS)においては、変異SOD1を有するアストロサイトが運動ニューロン変性を加速すると考えられている。また、アストロサイトのSOD1タンパク質量を減少させることが治療効果を有する可能性がある。本研究では、アストロサイトのSOD1タンパク質量を減少させる可能性のある低分子化合物・既存薬候補を同定し、最終的に、ALS治療薬を発見することを目的としている。
研究方法
ヒトSOD1のゲノムを用いて、SOD1のpromoter制御下に分泌型ルシフエラーゼを発現するベクターを構築する。これまでの研究で、ヒトアストロサイト細胞株にそのベクターを導入し、恒常的に分泌型ルシフエラーゼを発現するクローンを樹立する。上清のルシフエラーゼを測定し、SOD1転写活性を抑える低分子化合物および既存薬を同定している。
同定した低分子化合物については、SOD1の転写因子の1つであるNrf2との関連について解析した。
さらに、同定した既存薬については、変異SOD1マウスに4週間経口投与した後、脊髄におけるSOD1mRNA量を定量化した。
結果と考察
約10,000種類の低分子化合物のうち、濃度依存性にSOD1の発現量を減少させる177種類の化合物といくつかの既存薬を一次スクリーニングで同定した(Z’-factorは0.5~1.0)。WST-1アッセイでその効果が細胞毒性によるものであることを除外し、ELISAでSOD1タンパク質量の実際の発現低下を177のヒットの内10化合物で確認した。
その化合物の中で、化合物052C9がSOD1転写を制御する機序として、SOD1の転写因子の一つNrf2のリン酸化を052C9が抑制することを見いだした。
さらに、最も効果の高い2つの化合物に構造式類似の既存薬を変異SOD1マウスに4週間経口投与したことろ、脊髄においてSOd1のmRNA量が約70%に低下(p<0.05)することを見いだした。
結論
ALSモデルマウスにおいて、SOD1転写活性を低下させる既存薬を同定した。

公開日・更新日

公開日
2011-05-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027084Z